緑ヶ丘ビーズ荘 -29ページ目

緑ヶ丘ビーズ荘

読書とビーズ。

菊池秀行。異形選出。




















★★☆

剣に生きる下級武士たちのそれぞれの生き様を描く。

剣に魅せられ、剣に導かれるように巡り会う怪異・悲劇…

冴えわたる剣技と悲哀が光る、傑作時代小説!





安定安心の菊池秀行さん。注意事項は、うっかりシリーズ物に手を出すと果てがないことくらいか。

そんなわけで、時代小説・短編集・しかもホラー要素あり、というこちらに手を出しました。

これもシリーズ化されてるけど、一話完結式なので問題なしです。


期待通り面白かった!んですが、収録順はこれで良かったのか。

冒頭のほんのり心温まる「影女房」、

実話怪談ぽいオチがないのにひんやりさせる小話「茂助にかかわる談合」…ときて、

「這いずり」のへヴィさ救われなさよ…。


「這いずり」以降救われない話が続きまして、

冒頭で「人情系不思議物語か~、いいね」って感じの読書態勢になってたので、ダメージでかい。

面白いので、すぐにこちらの読む気も立て直せるんですが。


しかしほんと、へヴィなんだけど「這いずり」良かったです。

敗者側の「戦いはこれからだ!」って感じの、

決意というか開き直りというか諦念というか…グッときたよ。

バイオレンス描写・ホラー描写ともに派手!で、短編でも豪華ですな~~~。

シリーズ続刊も読みたいと思います。

井上ひさし。ベスト選出。




















★★☆

手紙だけでつづられる、女性たちの人生。

それぞれの人生が織りなす笑いと悲しみ…そして思いがけず交差する運命。

井上ひさしが描く、連作短編集。





井上ひさしって、大御所イメージは強烈…なんだけど、

それと同じくらい「女性や小動物に暴力を振るう」ってイメージも強烈なんですよ。

で、作品と人格が比例するとは全く思わないんですが、

「純文畑でメインは戯曲」って…クズであることを乗り越えてまで触れ合いたいジャンルじゃないよね~、ってことで読んだことなかったです。

(クズであることを乗り越えてでも作品に触れたい例:アンディ・マッコイなど)


でもまあ、あらすじ面白そうだし…と手を出してみたら、

お~~~やっぱ大御所だけあって面白いんだな~~~と。


何分時代背景が異なりますので、そ、そんなご丁寧な手紙を書いてたのか女子は!!

というカルチャーギャップから入りますが、

すぐに気にならなくなります。

短編なのでどの話も、とにかくスピーディに展開。手紙のみで綴るという設定が活きています。

状況説明もなんもないですからな。


愚かだったり悲しかったり逞しかったり…というそれぞれが印象的に描かれていて、読みやすいは先が気になるは、

ラストの全員集合のサービスぶりと言い、面白かった!


いくらなんでも愚かすぎるだろ…って修道女、

そこまでやったら洒落にならん、よく離婚されなかったなと思う画家の奥様が特に印象的。

でも一番好きなのは、大作家を可愛くだます国文科の女生徒です。

利発で積極的でユーモアがある、という、好ましい女性が目に浮かびますなあ。


つーか昔太宰治読んだ時も思ったんですが…

身近にいたらイライラしそうなおっさんが女子学生を描くと、

えらい好ましく可愛いな!!って女子像ができるのは何の作用なんでしょうね。



小池真理子。ベスト選出。オチばれネタばれあり。




















★★☆

恋人を殺した妹をかばい、凶器を捨てるため山梨方面へ向かった世良。

しかし事故を起こしてしまい、通りすがりの女性に助けられペンションに宿泊することになった。

ペンションを経営する親子には暗い過去が…世良は二人の狂気に否応なく巻き込まれていく…





スリルとサスペンス!若干今では懐かし風味となったサイコ物!

雪に閉じ込められる、という寒くて息苦しい舞台設定と相まって、ラストまでハラハラさせてくれます。

いや~選んどいてなんですけど、前回痛い目に遭ったので

「小池さん…またお会いしてしまいましたね…」って感じだったのですが、全然大丈夫でした!


サイコがほんとムカつく奴でした。インテリぶったアル中…サイコでなくても刺したくなるだろ。

お嬢さんよく耐えたね~(ノ_-。)お嬢さんの恋愛遍歴もどーかとは思うんですけどね。


突ついてはいけないサイコを刺激する仕掛けが次々に展開され、飽きさせません。

また狂気発作描写が、いちいち鼻につくため、

結構序盤から「…刺していいよ!今だ!」という意味でも手に汗握ります。


全体的に小池氏らしく、『大人の!色恋沙汰!!』がベースにあってのストーリーなので、

登場人物に魅かれないという難点はありますが、ハラハラドキドキでカバーしてくれます。

でもまあ、妹がウザいわー。あと、嫌な女であることだけの役割だった女優もいらんわー。


大人の色恋沙汰が引き起こす狂気…をテーマにしつつ、

死人は脚本家(誤射)・サイコ(自滅)のみという、殺人件数に訴えない姿勢に好感が持てました。