緑ヶ丘ビーズ荘 -30ページ目

緑ヶ丘ビーズ荘

読書とビーズ。

安土さん目当てで借りた『秘神界 現代編』。

アンソロなんで3選すると、安土さん以外になってしまいました。安土さんも結構良かったんだけど…。

オチばれネタばれあります。あとグロ注意。




















平山夢明『ある彼岸の接近』


生理的に嫌悪感を感じさせるグロで印象的な方ですが、今回はグロは抑えめ。

丁寧な口調で、ささやかな日常を守ろうとする夫婦と、そこに否応なく訪れる亀裂が語られます。

ヒシヒシと高まる不安、映像化したらさぞかしと思われる異形。

絶対平山氏なら殺すだろ~~~というこちらの予想を裏切って、最後の一線がぎりぎり守られ、

代わりに悲しくも優しいラスト。

夢幻紳士の『老夫婦』の質感と似た、悲しいけど読んだ甲斐のある短編でした。





妹尾ゆふ子『夢見る神の都』


都市伝説・民俗学・そしてもちろんクトゥルー神話。

と、ギュッと諸々詰め込みつつ、スマートにまとまっておりしかも怖い。上手い!

野川さんの若々しい感じの良さと、ナナミの子供らしくない湿っぽさが対称的で、

主人公は湿っぽい方にいくんだろうな~~~と分かっていつつも、

男の友情を感じさせるラストでウルっと来ました。





友成純一『インサイド・アウト』


はあ???!!!という驚愕で顎が落ちそうだった作品。

主人公が裏返ります。こう、腕を口と肛門から突っ込んで、中からグリっと。

その裏返った姿を見て正気を失った人々が、殺しあったり食べあったりします。

はあ???!!!

え、ピンちゃんいらんくなかった?この食人中、主人公はずっと裏返ってウゴウゴしてただけ?

シャーマンが表返したの?破れたとこ縫ったの?日本に帰ってきてからも裏返ったの?

シャーマンいないのに表返れたの?

クトゥルー部外者が言うのもアレですが、これクトゥルー関係あったの?クトゥルーってこんな感じ?

ラストの記者の一言も、上手いこと言ってなくて寒い。

など、疑問は尽きませんが、『主人公が裏返った』ということを思うと、考えるだけ無駄感がすごい。

「グロで生きるものが、必然性があったら裏返るみたいな、軟弱なことではいかん!!」という気迫は受け取った。インパクトで圧勝。









異形選出…になるのか。

安土萌さんの単品作がなかったので、参加のアンソロに手を出した感じです。

安土さんは現代編に参加してます。


クトゥルーってあんまり親しくないんですよね。

有名なわりにちゃんと読んだことない。ちょいちょい袖振り合うんですけど。

漠然と、「ぐじゅぐじゅした呪文を唱えつつ、何らかの海産物らしきものを拝む。その海産物が凶悪」

というイメージはあるんですが。

そんなにストライクゾーンではないなーと思って。


アンソロだし扉絵豪華だし(高橋葉介とかJETとか)、歴史・現代どっちも手を出してみたんですが、

これがなかなか!

意外とグッとくる作品が多くて、嬉しい収穫でした。

元ネタ(って言うのか?)のラブクラフト、ちゃんと読んでみるかね~。


アンソロですので3選。



















立原透耶『苦思楽西遊博』(旧字のハクが出てこん…)

中島敦だったか、えらい文学青年な沙悟浄物語があったと思うんですが、

水棲生物ってなんとなく哲学的に見えるんですかね。

まあ体力(猿)・食欲(豚)ときたら、残る一人に知性を担ってもらうしかないですもんね。

そんな、物憂く物悲しい沙悟浄の物語。

見せ場もグロも惜しみなく、シリーズ化しても良いんじゃないのって話を惜しげもなく締めくくるという、

贅沢な仕上がり。

西遊記もちゃんと読んだことないんだけど、そんなにスペクタクルなら読むべきかな~。






田中啓文『邪宗門伝来秘史(序)』


……たっ、田中さん!と、絶句してしまいそうなストーリーでした。

法螺を吹くならじゃんじゃん吹けってことか。

キリスト教伝来でやってきたのは、キリスト教徒は全く異なる邪教だったのだー!

柳生一族も活躍するよ!というノリが、山田忍法帳を思わせて素晴らしい。

限られたページ数でも、クトゥルーである限り、

グロ描写と海産物描写に手は抜きませんという愛情もひしひしと感じられます。

ぜひとも大長編でもやってほしいです。






芦辺拓『五瓶劇場 戯場国邪神封陣』


本を燃やしたら怪物が消えるよ!怪物が消えたら被害に遭った人たちも元通り!

という、昔の仮面ライダー方式。

じゃあさっさと燃やしとけ、というオチはともかく、面白かったです。

芦辺氏って、豊富な知識のせいかどーも賑々しい・詰め込みすぎでうるさいイメージだったんですが、

江戸で化け物が大暴れって話だと、そこが魅力になるんだな~。

綺羅星のごとく時代の才人たちが現れて、短編では惜しい感たっぷりです。

シリーズ物なら手を出したいな~。




















冲方丁。異形選出。




















★☆☆

記憶を失った少年と出会った、秘められた過去を持つヤクザ。

世界から疎外された少女と出会った、呪われた絵を追い続ける少年。

運命が結ばれた時、世界が変貌する……!!!





20年前の作品かつデビュー作。にもかかわらず、の完成度なんだろうけど、ダメでした。


何だろう~~~主要人物をヤクザにしたため、ハードボイルドとファンタジーの2輪建てだからか。

どっちのジャンルも苦手だもんな~。

設定もキャラも詰め込みすぎで賑々しいんですよ…。

赤目で白髪の女・オッドアイの男・龍の刺青のある美貌の姉弟…って現代日本を舞台にするなら、

どれか一人でも腹八分目くらいじゃないか。

以下次号、の予定だったかもしれんけど、全員何か背負ってるらしいのに、とくに詳しく説明ないし…。

登場人物全員に、因縁に満ちた過去はいらんかったろ。

戦闘シーンの幻覚は迫力あって良かったです。


しかし元々、作者が十代のころに十代の若者向けのジャンルとして描いた作品なので、

コレはこれで正しいのか。

賑やかで腹いっぱいになりたい人には、ちょうどいい塩梅なのかもしれません。


つーか解説でびっくりしたんだけど、『天地明察』の人だったんですね。

読んだことないんだけど、渋い時代小説で話題になった作品だよね?

おお…。今回読んだ印象とも、異形選出のまあこからも、全く想像できんわ~。

時代小説ならわりと好みのジャンルなので、そちらにいつかチャレンジしてみたい。