緑ヶ丘ビーズ荘 -22ページ目

緑ヶ丘ビーズ荘

読書とビーズ。

『江戸の悪霊祓い師』と同時に借りてきた『永遠の伝奇小説BEST1000』。

1000もあると結局何読んだらいいかわからんのよね~~と思いつつ、

須永朝彦や東雅夫という安心安定のお名前が見えるので、隙間時間の暇つぶしにいいか…

と借りてきたら、思いがけず高田衛さんも参加していらっしゃる。

どうでもいいところに威力を発揮するシンクロニティ。嬉しい。


高田さんの担当は、当然ながら大江戸伝奇。50選。

ブックガイドで、○冊じゃ足りない・選びきれない~~ってのは社交辞令っつーか定型文ではありますが…

悪霊祓い読後だったので説得力が半端ない。

「ざっとリストにしたら145点…もう思いつくままに50冊ならべるわ」などと冷静に語っていますが、

泣きながら50冊まで削ったのではないかと心配になるよ…。


つーかなー、この歳にして

勧善懲悪の!大長編の!古典!に挑戦するのキツイな~~と思うんやけど、

八犬伝が一推しぽいので、チャレンジするか迷うわ…。



高田衛。

『江戸幻想文学誌』にて、学者の萌えポイントって面白いわ~~と、

突然の評論ブームをもたらしてくれたお方です。

高田衛第2弾!!って感じに読む前から盛り上がりますが、期待以上だった!!



冒頭から、江戸にそんなグロエピソードがあったとは…と度肝を抜かれるようなスプラッタを淡々と披露

…しておいて、「憑りつかれた人が霊の言葉を話すって、興味深いですね」と、

例によって「ソコ?!」と戸惑う萌えポイント。

そこから本題の、累が淵伝承探索へと流れていきます。



江戸三大幽霊にも名前の挙がる累さんですが、私ストーリー全く知らんかったわ。

「悪い男に毒を飲まされる」「家宝の皿を割った」など、

漠然とストーリーの肝を存じ上げている四谷怪談・皿屋敷に比べると、知名度低い気がします。

が、がっつり紹介されて納得したわ。一言で説明しづらい、入り組んだ話になっています。



つーか完成度高いな!

パンチのある霊現象!一難去ったと思わせて実は!また来たと思わせて実は!その真相は!!

と、現代のホラーものでも通用しそうなプロットに、

組織の一員である立場と、優れた霊能者としての立場のはざまで揺れる主人公・祐天上人。

信仰をかけて諸神諸仏に啖呵を切るシーン、めちゃめちゃカッコいい。

映画化狙ってんのかってくらいだ。

庶民への仏教布教が目的らしいですが、目的を超えて練りに練られており、本気度が忍ばれます。



ストーリーを追いつつ、高田氏がその豊富な知識で分かりやすく解説してくれるため、

途中でいったん休憩入れるのも惜しいくらい面白かったですよ~~~。

つーかこんなに面白いのは、やはり愛があってのことだろうなあ…。

高田氏の盛り上がりにひきずられて、読んでるこっちも盛り上がる感じ。

祐天上人の生涯をたどる章では、「…私たちを思いがけぬ、実像透視の楽しみに引き込むかもしれないことを、あらかじめおことわりしておかなくてはならない。」などと仰っており、

紹介するお前がウッキウキじゃねーか、ちょっと落ち着け!と突っ込みたくなるほどの愛情です。

全編に満ち溢れる、江戸文学好きすぎてたまらん風情が、

紹介されてる江戸文学の面白そうさを超えて面白いわ。


赤坂憲雄。

文学作品としてではなく、民俗資料として『遠野物語』を問い直し、再構築を試みる。





『遠野物語』があんまりロマンチックで文章も優れていたために、

「柳田作品」として確立されてしまっているが、民俗学ってそうじゃないだろ。

それを一資料として、実際の東北一地方を捉えなおすべきだろ。

というのは、部外者が聞いても全く頷けます。

なぜなら私も『遠野物語』を民俗資料としては読まなかったから。

星新一みたいなノリで読んだわ。




遠野に柳田世界を求めるのはやめて、一地方の民俗をきちんと検討しよう!という真摯な作品です。

真摯なだけに部外者にはやや読みづらい…

柳田の文学的価値の呪縛を離れていこう!って方に文章を突っ込むのは野暮かとは思うんですが、

結構言い回しやなんかで、ガツッと目が止まっちゃう部分が多いです。

特に、「生きられた」ってのはなんかポリシーがあっての拘り?

「生きられた伝承世界」「生きられた伝承群」

…頻繁に出てくるんだけど「生きていた」「生きた」とかじゃダメかい?なんか語呂が悪いんだよ~~。



とは言え、中身はものすごく丁寧かつ親切。

興味深い事象を懇切丁寧に解説し、ご自身の見解を披露、今後の展望についての期待を語る

…愛があるんだな~~~学者の萌えポイントほんと面白いな、と読み進めさせてくれます。

(学者の世界も大変そうっすね、という気配がそこここに感じられるのもまた面白いですw)



第四章の「色彩考」がほんと好き。

私は横溝ファンなので、文章に色がある・作品どころかワンシーンごとにテーマカラーが浮かぶというのが

重要なポイントなので、色についての考察ってとても興味深かったです。

また、白・黒を抑えて、オカルト境地の+-(ご利益があるとか祟りがあるとか)問わず、

赤が大活躍って、言われてみれば納得やな~。

お目出度いことに「紅白」は欠かせないですが、一方で赤って恐ろし気な色でもありますもんね。

朱塗りの鳥居がずらっと並んでる光景を見た時の、

「綺麗で怖い」「怖くて綺麗」な感覚は遠野地方に限らずあるのでは。

全国的な色彩考があったら読んでみたい。


ところで、文学から出ようよ~って言ってるとこ申し訳ないんですが、

「白い鹿を打ったら、それは白い巨石であった」ってエピソードの完成度すごいですよね…

神聖さを表現するのに、一切の無駄を省いたらこうなりました、って感じ。

文学作品として読み返したくなったわ…。