はかた伝統工芸館の妖怪展を、今年も鑑賞。
展示だけでなく販売もあり。
旧家の立派な床の間に、これら妖怪が飾ってあるところが見たい…特にこの白い脇毛妖怪。
#妖怪
文豪怪談傑作選 昭和篇。
親しみのない人ばっかりだけど当たりあるかな~
などという呑気さも吹っ飛ぶ衝撃。
読後数日間動揺が収まりませんでした。
そんな衝撃の一品…
永井荷風『来訪者』
荷風ってすごい量の日記書いた人だよね~?くらいの認識。
有名な墨東なんたらは手に取ったはずなんだけど、たぶんほぼ読まずに挫折したはず。
やっぱベースにホラーかミステリ、SFがないと…
しかし今回は怪談・短編・かつ信頼の東雅夫チョイス!
というわけで読む前から期待も高まります。
戦前、初老を迎えた荷風が、目を懸けていた二人の青年に裏切られる…という流れ。
この二人が、荷風の偽書を作成して詐欺を働いていたという事件です。
この二人の青年のうち、メインとなって描写される白井青年が!素晴らしく萌えキャラ!!
蒼白な細面に和服、行儀よく物静か。
下町育ち特有の語調で声は低く、自分のことはほぼ語らず、しかし陰険なところは少しもない。
ほれぼれするほどの能書家(和洋どちらも!)で、英文学のみならず江戸文学にも堪能…
いやこれは引っかかるわ~~わかるぜ荷風!!と荷風と握手を交わしたくなります。
しかしその後、やっぱ文豪の考えることってわからんわ~…となるんですが、
発端が偽書作成しやがってってとこからなんで、
当然実はこの白井がどんなにひどいやつだったか、卑しいやつだったかを書くと思うじゃないですか。
なんでか、白井と訳アリ未亡人との色恋沙汰が、見てきたように延々とつづられる…
という、何がしたいんだろ荷風って流れになります。
そりゃもう、二人の出会いから駆け落ちまで、「見てたんかい」つーくらいみっしり書かれる。
二人の服装から胸の内まで。市原悦子…?
この部分は探偵の報告書をもとにした、明らかな荷風の想像(つーか妄想)なんだろうけど、
白井はなんつーかこう・・・昭和の文士って感じの退廃的な雰囲気のまま。
訳アリ未亡人は、身も世もなく白井に入れあげた挙句に命まで亡くすという…
えっ、「俺の見る目がなかったんじゃなくて、白井が凄腕のタラシなんだよ」という言い訳かな~~。
終盤にも、白井の近況を聞いて「さすがにいい趣味してる」と嬉しくなったり、
小芝居まで打ってタバコ屋のおばちゃんから白井の情報を聞き出したりと、
全体的に荷風が未練たらしい印象でした。
が、
まあ文豪が想像力を駆使して描く昼メロ!!って感じで、小説としては好みではない。
荷風の他作品にも食指は動かない。
文学史に疎い私は、解説を読んで初めて衝撃を受けたのです…
作品は好みじゃないけど白井青年はすごい好みだわ~~、モデル誰だろ?
と解説を読むと、
「おおむね作中のとおりの贋作騒動」
「首謀者とされる青年文士が若き日の平井呈一」とあり、
おお~この萌えキャラ実在してたんだ!
平井呈一…見たことある名前…?
と、ほんの一枚ページをさかのぼると、「翻訳者・平井呈一」の文字が。
そうそう、東さんや荒俣さんのお話でちょいちょい出てくる、元祖怪奇愛好家みたいな人の名前も平井呈一…
えっ?えっ?!同一人物?!
平井呈一…
ホラー周辺を漂っていると、意識してなくてもよく目にするお名前、しかも荒俣さんのお師匠格。
今よりもホラーが蔑視軽視されていた時代に、我関せずで怪奇ものを紹介し続け、現代の怪奇マニアを育てる土壌を提供し続けたという…
特に知らんけど多分、主食が紙魚レベルの奇人でいらっしゃるんだろーなーくらいの印象だったんですが…
贋作作って小銭を稼ぐような、浮世のバイタリティもあったのか…って感心するとこじゃないけど…
いやそれよりなにより…
そんな艶っぽい優男やったん?!
私の心の中に漠然とある「怪奇マニア」のマップが、水木しげるタッチから木原敏江タッチに描きかえられるほどの驚きでした…
他の作品の印象がふっとんだ
…んですが、今まで敬遠してた久生十蘭がめっちゃ良かったことは記憶しておきたいと思います。