緑ヶ丘ビーズ荘 -13ページ目

緑ヶ丘ビーズ荘

読書とビーズ。

ファンタスティック時間SF傑作選。中村融編。





シリーズものだったらしいので、ロマンティックに続いて。

しかし私が正統派の硬派SF苦手なので、

結局印象に残るのはロマンチック作品であった。








『緑のベルベットの外套を買った日』 ミルドレッド・クリンガーマン


古き良き少女漫画。(褒めてる)

自分に自信のない女性が、

タイムワープしてきた青年にときめいて自尊心を取り戻す。

そして青年の孫(見た目も身分も性格も良い)と巡り会う…


えっ、血筋ってだけでそんなすぐ恋に落ちます?

ウダウダしてて婚約までしたけど、運命の人にあったんで別れよう!って結構相手にひどくね?

等々の疑問・ツッコミを蹴散らすほどのロマンチック。

緑のベルベットですよ!

許す許す。もういくらでも恋に落ちたらいいよ!








『真鍮の都』 ロバート・F・ヤング


異星人・未来の人類・歴史上の人物の複製博物館…

と、前回に引き続きSF感満載。

そしてすさまじくロマンチックかつハッピーエンド!

と安心して楽しめる作風。

サービス精神に満ち溢れていて好感が持てます。


歴史上重大な人物でなければ、過去から現代に引っ越しちゃってもOK!

って、すごいザックリした世界観だよな~。

蝶を踏んだだけで、終末戦争が始まりそう…みたいな話もあるというのに。

硬派SFファンからの評判がどうだったのか、心配になるほどだ。


しかし、ハッピーエンドのためには細かいことは気にしていられません。

ロマンとハッピーは譲れん、あともちろんSFも。

という強い決意が感じられます。

SF読んで元気になってね!という作者の声が聞こえてきそう…

好みだな~。

 










哲学風・社会派風と、色んな傾向の作品が揃ってて面白かったです。

結局ロマンチック独り勝ちなんですけどね…。



柳花叢書。東雅夫編。





文豪妖怪のあとがきで心魅かれて、まんまと手に入れました。

宣伝上手め…。



文豪妖怪で、ちょっと芥川龍之介も良かったんですよね。

可愛い小話感が意外で。

私、教科書に載ってた芥川作品が全然だめだったので…

濡れた段ボールを咀嚼するような、味わいのない作品だね!

ってイメージ。(すいません、個人的な感想です…)


鏡花と袖振り合うイメージもないんだけどな~、

けどそういえば、鏡花→芥川の弔辞すごかったもんな。

どこの楊貴妃がお亡くなりに…って麗々しさで。


まあまあ、鏡花+柳田國男で元は採れるだろ。

と、芥川さんに失礼にもほどがある気分だったのですが…





予想をはるかに上回って鏡花は大ヒット。

予想をはるかに下回って芥川がアウト。

國男さんはまあ、論文なんでソコソコって感じで。

期待してなかった座談が面白かったんで、全体としてはプラス。

だが鏡花のプラスぶりがすさまじいので、大満足ではある。


なるほど、やはり私の好みでは芥川は無理だな~~~!

と再認識する結果となりました。


短いのは、まあいいよ。

特にひどかったのが、「kappaと発音してね」と注釈のある方の『河童』。

河童を通して人間社会を風刺しているんだろうと思うんですが、


ごめん、まず河童を通す意味が分からん。

あと別に河童を通すことによって、

「上手いこと言ったな!」みたいな効果の出てるシーンもないし…。

おお~~~やっぱ濡れた段ボールの味わい…

こーまで好み外の意味で印象に残ると、逆に感心するわい。


でも座談会では、やっぱなんかちょっと可愛いんですよね…

お前、漠然と死ぬなよ~~~。



で、すっごいヒットだったのが鏡花の『河伯令嬢』!!!

初めて読みました。

『貝の穴に~』『瓜の涙』と、それぞれ良くて、

ああ~やっぱ好みだわ~とホクホクしてたんですが、

ぶっちぎりで良かった!!!

冒頭の「心中見た見た、並木の下で  しかも皓歯と前髪で」ってのは一体何の一節なの?

掴みからすごすぎ…!

語り手の彫金師がしっとり語る昔話、そして彫金師自身の激烈な過去、ラストの一文…


このテンションで美意識保ったまま、一作描くか~~~!

…薬やってたとか聞いたことないよね…?と改めて泉鏡花をググるほどでした。


前世ナメクジだったのかな~、

という疑いが消えないほどカエルが苦手な身としては、

長い髪を引いて泳ぐカエル…というイメージだけでも、

強烈すぎるほど強烈。よくそんなこと考えつくね?!

口の中に酸っぱい唾がわくほど怖い!!!

しかも美しい!!!

あまりの美しさにうっかり見過ごしそうですが、

後半は輪姦→発狂→焼身自殺と、

戦前の作品とは思えないほど、展開もぶっ飛んでバイオレンス。

(性犯罪者皆殺しの祟りもある…

が、ここはバイオレンスっつーか、女神を褒めたたえるトコだよね?)


そしてラストの美しさも美しさ。

鏡花のドヤ顔が見える…が、もうそのドヤ顔にすら惚れる。


コレは手元にないと困る(何が?)レベルでしたよ!




あと、座談会でも鏡花の喋りが異常に洒落てるんですよね~。

「ここで喋っちゃ恐縮だが、湯どので、男女が裸体なら、ほぼ話し合いは尽きましょうさ。」

とかって口調なんですが、あんた別に江戸っ子じゃ無かったよね?

洒落た言葉しか口にしたくない!

という意志によって江戸っ子を憑依させてたのか…?


もうともかく鏡花がイカス!!!って一冊でした。

 

解説で、芥川さんがお亡くなりになった時の鏡花の取り乱し振り(新聞の見出しになるほどかよ…)を読むにつけ、

全然好みじゃないけど、芥川さん漠然と死ぬなよ感を強くしました…。

鏡花…洒落てる上にいい奴…!

新青年傑作選。中島河太郎編。

今更ですが推理ものでオチばれありです。






あっ、中島さん奇遇~~!

と、親しくはないが好ましい紳士をお見掛けした時のような心持になるのは、

横溝の文庫の解説が、ほぼパーフェクトにこの人だったからだな。

実際何してらした人なのか知らんのやけど。


古き良きモダン趣味を代表し、その後否応なく時代に呑まれて滅びていった伝説の!

という評判も名高い『新青年』。

意外と癖がなく読みやすい作品がそろってました。





横溝正史からは『蔵の中』。


別格。

横溝が、私の好みの文章の基準となっているため、問答無用です。

もちろん金田一でハマったクチですが、それ以外もいいよな~~~。


豪勢な千代紙を紙吹雪にするような、目がチカチカするほどの絢爛さ。

ああ~~~杉本さんの表紙かつ中島さんの解説もそのままで、文庫全作復刻してくれんかな~。





『変化する陳述』 石浜金作


ペンネームとタイトルのセンスがひどい。

と思って読み飛ばし気味だったんですが、結構なんというか…

パワーあるな!って話でした。

女優に殺された美青年は、作家(おっさん)の愛人でもあった!

けどまあソレはいいとして、事件の真相やいかに。

って感じなんですが、ソレはいいんかい。

主要登場人物が、二人とも発狂するラストの強烈さよ。





『彼が殺したか』 浜尾四朗


タイトルの「悪魔に売りつけよ」がこの作品から採られております。

激烈かつロマンチックな遺書が印象的。

(全く余談なんですが、大和屋竺の『悪魔に委ねよ』ってタイトルの書籍があって、

このタイトルセンスは中々お目にかかれないほどいいと思う…文庫化されないかな~)


不倫・SM趣味・美少年趣味と盛り沢山ですが、文章がスマート。

叩きつけるように盛り上がる、遺書に書かれた呪いの言葉との対比が印象的です。

法を逆手にとって呪いを完成させる、という、現代的なテーマでかっこよかったです。










つーか、上記の作品以外も…こう…

BL萌えとも同性愛とも異なる、『稚児趣味』って感じを推しだした作品が多いんですが…

当時のミステリ界では流行ってたのか?

まあ大乱歩がアレですしな~。