ジェイムズ・エルロイ。田村義進訳。
アメリカ文学界の河惣益巳…もとい狂犬エルロイ短編集。
実在人物をちりばめながら、古き悪しきアメリカの影と光を、暴力で描き出す―
という基本姿勢はロス4部作と変わらず。
4部作最中に書かれているので、ブランチャードの日常(狙われたり殺したりですが)もあったりで
お得な気分です。
悪は死なない、滅びないということをひしひしと感じながら読む長編と異なり、
結構陽気な雰囲気が漂っています。
やっぱエルロイかなり好きなんだよね~…USAに手を出すべきか…。
7作だったんで特に好きな2編を。
『ディック・コンティーノ・ブルース』
実在のアコーディオン奏者を主役に据え、50年代のアメリカ芸能史の裏側を描く―
もちろんフィクションです。
これ本人からOKもらってると、前書き風のエッセイ『過去から』で触れられてるんですが、
良くOKしたな~~~ディックさん…
犯罪に手を染めてるとかはまあ、フィクションだしいいよねって思うんですが、
すっげー「ワルでタフでモテモテかつニヒル」に描かれてるじゃん。
布団にもぐってジタバタしたくなりませんか…
いやイタリア人だから「まだまだこんなもんじゃなかったよ~」くらいに思ってたのかも。
前書きでエルロイが言っているように、テーマは「恐怖、勇気、そして大幅に妥協した贖い」。
どこか軽薄で明るく、みるみる回転していくストーリーで引っ張り切ります。
ラストのセンチメンタルな感慨が真骨頂。
過酷というにも酷すぎる幼少期のトラウマ、若き日の荒んだ生活、アメリカ白人男性―
この要素のどこで少女漫画成分(褒め言葉として)が育まれたのか、ホント気になるわ…
『甘い汁』
巨万の富を相続した犬のお守りに雇われたクライン。
犬のセレブぶりに驚愕しつつも、心を通わせていく―
だがその裏では卑劣な陰謀が進行していた…。
そもそも人のこと卑劣とか卑怯とか言えない(言わない)前科者が主人公。
セレブ暮らしの犬という、設定からして呑気さ漂ってます。
話は呑気どころか急展開なんだけどね。
犬好きで憎めない主人公なんで、ハッピーエンドで良かった~~~。
他の作品も基本的に、「下衆だが憎めない」登場人物ばかりでした。
短編いいな!



