怪奇探偵小説傑作選。日下三蔵編。
結構いいので欲しいな~と迷っていたこのシリーズ。
妖美さんから教えていただいたように、すでに絶版扱いでした…残念(ノ_-。)
電子書籍ならあるけど…いやそもそも電子書籍なら、青空文庫で読めるのが結構あるからな~。
とりあえず図書館にあるのは読も。
というわけで、今回はシリーズ出発点の岡本綺堂です。
『青蛙堂鬼談』より二点。
・利根の渡し
寒さ・孤独・執念…地味ながらギリギリと締め上げるような、冷え冷えとした完成度。
平助の、気が弱いながらも善良な人柄が良いアクセントになっており、日本昔話のような不思議な後味の良さもあり。
ただ身も蓋もないことを言ってしまうと、「六年以前から眼病にかかって」という記述から、
「必殺目つぶし術なんか磨いてないで、さっさと死んで祟ったら早かったのでは…」とは思う。
・清水の井
月明かりの下、こんこんと湧き出る井戸の水面に移る公達の姿…
ただ見とれ慕うだけの姉妹の淡い恋心といい、初々しく清らかな導入から一転。
オチの酒池肉林て感じの意外性がいい!
壇ノ浦から三年、どんな心の変遷を経て破局に至ったのか…
ご想像にお任せします、というよりも、黙って感じろ!!と言わんばかりの力技。
ホントに意外なオチなんで、おススメ。
『水鬼』
故郷で馬車に乗り合わせた兄妹。
馬車のアクシデントから、その身の上を聞いていた僕は、幼なじみとその芸妓の姿を見てふと不安に駆られた…
芸妓のセリフが本当にいい。
「だって、あなた。人間ひとりを殺して平気でもいられますまい。」
「飛んだ者と道連れになって、さだめしご迷惑でございましょうが、実は警察がどの辺にあるか存じませんので、あなたに御案内を願いたいのでございます。」
と、いう美しい言語によって綴られる、地元に伝わる幽霊話・幼いながらも思い詰める一途な恋心・そして激しい殺人模様…
幽霊の影響もあったかもしれんが…
何というか、それに呼応して自らの運命を決した、って感じの激しさがヒシヒシと感じられます。
他の話でも思ったんですが、誰にも相談せず胸に秘めて、一気呵成に決するって話多くない?
明治人気質なのか、綺堂の好みなのか…
あ、私わりと好みです!
『鰻に呪われた男』
知人の見舞いに行った私は、一尺はあろうかという鰻を生きたまま喰べる異様な男を目撃する。
思いがけずその男との縁談が持ち上がり、人柄に魅かれた私は、生きた鰻を貪り食っていたことが気がかりではあったが、結婚を決めた…
特に好みの話ではないんですが…最も印象に残ってしまった…。
だってさ~~~…
気がかりポイントがでかすぎない???
人柄が良くてもさ~~~友人知人ならともかく、結婚だよ?
夕食とか外食とかどうする?
ちなみに近代的な説明がついており、
なおかつ「予知夢に関しても納得のいく説明を見つけてみせるわ」という、
老婦人のガッツあふれる気概が感じられる作品です。
綺堂…全体的に女性強し。
あ、あと、『慈悲心鳥』ってさ…なんか懐かしい手触り…と思ってたんですが、
横溝の『本陣殺人事件』の創作日記部分ってコレモチーフ?