アメリカの商業不動産(オフィス・ホテル・商業施設・複合開発)では「グラウンドリース(Ground Lease)」という仕組みが頻繁に使われています。

しかしこの構造は、
✔ 正しく理解すれば“強力な武器”
✔ 理解不足だと“致命的なリスク”
にもなり得ます。

今回は、グラウンドリースの基本と注意点、そして実際に資産価値が75%下落した実例を紹介します。

🧱 グラウンドリースとは?

土地を買わずに、長期間借りる契約です。

・土地は地主が所有したまま
・建物はデベロッパー/投資家が建設・運営
・期間は通常 50〜99年
・地代(Ground Rent)を毎年支払う

👉 契約満了時、土地と建物は原則として地主に戻る
(※延長・買い取りオプションがある場合も)

🎯 なぜこの仕組みが使われるのか?

【地主側のメリット】

・一等地を売らずに保有し続けられる
・長期で安定した賃料収入
・将来的な土地価値の上昇を享受

【投資家・デベロッパー側のメリット】

・土地購入費が不要 → 初期投資を抑えられる
・本来買えない一等地に参入できる
・条件次第では自己資本利回りが向上

⚠️ 実はとても複雑な契約構造

グラウンドリースは物件の収益性だけでなく「契約条文」そのものが価値を左右します。

特に重要なのは:

・地代の上昇ルール(固定 or 市場連動)
・契約延長の条件
・契約満了時の扱い

👉 同じ立地・同じ建物でも契約内容次第で“安全資産”にも“危険資産”にもなるのが特徴です。

🚨 最大のリスク:残存期間が短くなると…

残り 10〜20年 を切ると、急激に問題が表面化します。

主なリスク:
地代リセットリスク(市場価格で急上昇)
評価額の急落(将来の不確実性を嫌う)
融資リスク(地代はローンより優先順位が高い)

📉 実例:ニューヨーク「1407 Broadway」

マンハッタンのオフィスビル1407 Broadway は、グラウンドリースが原因で
資産価値が約75%下落しました。

・2019年評価額:約 5.1億ドル
・現在評価額:1.2〜1.36億ドル

理由は、

・グラウンドリースが 2030年まで
・延長後の 2048年以降の地代が不透明
・将来、年間1,000万〜2,000万ドルの地代増加リスク

👉 銀行・投資家が将来キャッシュフローを評価できず
👉 ローンは特別管理(Special Servicing)へ

✅ 投資判断で必ず確認すべき3つの質問

グラウンドリース物件では、必ず次を確認してください。

1️⃣ 土地の所有者は誰か?
2️⃣ 残りの契約期間は何年か?
3️⃣ 契約更新・満了時に何が起きるのか?

これを見誤ると、ローンが残っていても価値が消える可能性があります。

🟢 すべてが悪いわけではない

誤解されがちですが、グラウンドリース自体は悪ではありません。

・期間が十分に長い
・地代上昇が緩やか
・延長条件が明確

こうした契約では、一等地開発を可能にする非常に優れた仕組みです。

📌 まとめ

✔ グラウンドリースは「契約=価値」
✔ 残存期間が短い物件は要注意
✔ 表面利回りより「契約満了後」を見る
✔ ニューヨーク・シカゴなど都市部では特に重要