ニューヨーク市の予算不足(約5億ドルの税収確保)を補うため、州議会が「ピエ・ア・テール税(Pied-a-Terre Tax:非主居住用のセカンドハウスに対する課税)」を可決しました。

この新税は、ニューヨーク市にセカンドハウス(別荘や投資用コンドミニアム)を持つ世界中の富裕層の固定資産税を、2倍以上に跳ね上げるインパクトを持っています。その複雑な仕組みと、実際にどれほどの税金がかかるのかを解説します。

■ 2段階で引き上げられる新税の仕組み

このセカンドハウス税は、市の財務局によって「100万ドル(約1億5000万円)以上」と評価された非主居住用のコンドミニアムやコープ(協同組合住宅)に適用され、以下の「2つのフェーズ」で導入されます。

【第1フェーズ】(2026-2027年 および 2027-2028年)

最初の2年間は、現在の評価システムに基づいて以下の追加税率が課されます。

  • 100万ドル〜300万ドル: 4%

  • 300万ドル〜500万ドル: 5.25%

  • 500万ドル以上: 6.5%

実は現在、ニューヨーク市の不動産評価システムは実際の市場価格の「10%以下」に低く見積もられているケースが多く、これまでは富裕層にとって有利な状況でした。

【第2フェーズ】(2028-2029年以降)

ここからが本番です。2028年からは、評価額が「実際の市場の売買価格(実勢価格)」ベースへと大幅に引き上げられます。評価額が急騰するため、税率自体は以下のように調整されます。

  • 500万ドル〜1500万ドル: 0.8%

  • 1500万ドル〜2500万ドル: 1.05%

  • 2500万ドル以上: 1.3%

■ ターゲットにされた大富豪:ケン・グリフィン氏の事例

この新税の「顔」として大きな話題になっているのが、ヘッジファンド『シタデル』のCEOであり大富豪のケン・グリフィン氏です。

ニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長が、新税導入をアピールする動画をわざわざグリフィン氏のペントハウスの前で撮影してSNSに投稿したため、グリフィン氏が「将来的にニューヨークからビジネスと雇用を撤退させる」と猛反発する事態に発展しています。

グリフィン氏はフロリダ州の税務居住者ですが、彼がニューヨークに所有する物件の税金はどう変わるのでしょうか?具体的な試算は以下の通りです。

【物件1:220 セントラル・パーク・サウスのペントハウス】

  • 2019年に2億3800万ドル(全米最高額)で購入。

  • しかし現在の市の評価額はわずか1550万ドル

  • 現在の固定資産税:約85万8,332ドル

  • 第1フェーズの税額:187万ドル(現在の2倍以上)

  • 第2フェーズの税額:約400万ドル(実勢価格評価になる2028年以降)

【物件2:740 パーク・アベニューの2部屋】

  • 総額8300万ドルで購入。

  • 2028年以降、こちらの税額も110万ドルに。

結果として、グリフィン氏のマンハッタンにおける不動産税の総額は、2028年以降年間500万ドル(約7億5000万円)以上に膨れ上がることになります。

■ まとめ:不動産市場への影響は?

ニューヨーク市の政治家たちは「富裕層には十分支払う余裕がある」と主張していますが、現地の不動産ブローカーや税務弁護士は、この急激な増税による「ステッカー・ショック(請求書を見た時の衝撃)」は極めて大きいと見ています。

不動産税務弁護士のロバート・ポラック氏は、「いくら裕福であろうと、この数字のインパクトは大きい。私のクライアントは皆、すでに税金を払いすぎていると感じている」と指摘しています。

こうした税制の変更は、富裕層の資金がニューヨークからフロリダやテキサスなど「税制に有利な州」へさらに流出する(資本の逃避)きっかけになる可能性があります。

Axis Globalでは、こうした全米各都市の税制変更や法規制の動向を正確なデータに基づいて分析し、投資家の皆様のポートフォリオ戦略に役立つ情報をお届けしてまいります。

アメリカ不動産の市場動向について詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。