~前回の続き~
LDR(分娩室)に辿り着き、
意味なくソファーに乗ったり下りたりしながら、
四つん這いの体勢で、数分置きに襲ってくる例の痛みと戦う。
ほどなくして、夫Kと子供たちが到着。
少しニヤケている男性陣と、心配そうなわっさん。
わたし 「おういらっしゃい!」(早口)
ここからの私は、陣痛と陣痛の間にだけ
急いで質問に答えたり要望を訴えたりすることになるので、早口になった。
ナースコールを高橋名人ばりに連打して
「もうけっこう本格的に痛いです!」(早口)
分娩台に移動。
なんか色々話しかけられた気がしたが、それどころではなく、
窓際のソファーに並んでやいやい座ってるギャラリーに、
背を向ける形で横向きになった。
お腹から腰にかけて、内側から鈍器で思いっきりブン殴られてるような痛みは、
仰向けになったって横向いたって身をよじったって、動いても止まってもどうしたって痛い。
たまに「あまり痛くなかった」という人が居るが、
尋常じゃない。次元が違いすぎる。たとえ4回目でも私は凡人。
痛みをも愛だと信じ込もうと、マインドコントロールしようとしたとしても、
何がどう転んでも痛いものは痛い。
ここで内診するため、夫Kと子供たちには一旦病室の外に出てもらうことに。
結果、意外とまだ4センチのままだった。
あぁ、このまま一生陣痛のままだったらどうしよう・・
エンドルフィン(脳内麻薬)が出てフワフワと白目の最中、絶望。
なんで無痛分娩にしなかったんだろう?なんでこの痛みのこと、
また忘れちゃってたんだろう?アホか。そうよ私は懲りない女。
もうやだ。逃げたい。。
朦朧と絶望の淵を彷徨っていると、パシャ!となんかが出た。
もう声にもならず、たまたま部屋に入ってきた助産師さんに
すがるように手を伸ばして、「破水しましたっ!!(超早口)」
何人かがかりで、内診の準備・急いで点滴を装着される。
もの凄いチームワークと手際の良さ。
助産師さん 「もう(子宮口)全開です!」「さっきの4センチからすぐ!早い!」
「いいな!羨ましい!」「後藤さんすごい!」
〈何が羨ましいんだ、羨ましがることではない、(心の中でツッコミ)〉
助産師さん 「旦那さんとお子さんたち入ってもらってもいいですか!?」
わたし 「静かにしてくれるんならっ!!〈もうどうだっていい〉」(超早口)
わたし 「もういきんでもいいですか~!?」
助産師さん 「いいですけど、ゆっくり、息を吐いて!」
わたし 「あーーーもおームリーーーーーーーーー!!!!!!あーーー!!!!!!!」
(この世のものとは思えない絶叫のち、西川きよし顔)
・・バシャッ、ブシャデロデロデロンッ・・・ふぎゃぁ、ふぎゃぁ、ふぎゃぁ、、
毎回、「やっと会えたね☆涙」とかでは決してなく、
出る瞬間は、その直前までの地獄の痛みから一転、他に例えようの無い快感で、
出切ったあとは、矢吹丈が灰のように真っ白に燃え尽きたような感じ。
こうして、今回も我流の「西川きよし絶叫法」でお産を終えることが出来た。
実際に他人のお産を見たことが無いので、人と比べたらどうなのかはわからないが、
私はとにかく人目をはばからず無心で叫ばないことには、あの痛みには耐えられない。
今回の絶叫もそれはそれは凄かったようで、
撮られていた動画の音声を聞くと、平常時には決して再現する事の出来ない、
人間の声というよりも、犬の遠吠えやサカリのついた動物の鳴き声のほうに近い、
獣のようなそれだった。
夫Kの携帯で撮られた、出産の瞬間までの赤裸々なその動画は、
まだ私が見る前に、義両親・義姉・子供たちの前で再生されて
盛り上がったらしい。
勝手にせい。
Kは、あの時の私の絶叫の様子を思い出すと
夜中でも笑いが止まらなくなるらしく、それを聞いて「鬼め」と思ったものの、
「もし逆の立場で俺がああだったら?」と聞かれると、
想像しようとするだけで腹の底から笑いがこみ上げてくる感覚あり、
人間なんて所詮そんなものなのね、と、究極の場面に悟る。
それにしても、子宮口全開からの、
助産師さん達と医師との命のかかった仕事っぷりは、
ここぞという時の正義のヒーローのようにカッコいい。しびれる。
いつの時代も凄い仕事だと思う。
何はともあれ、今回は家族全員の立ち会いのもと
無事に出産出来た事をありがたく幸せに思う、36歳の秋です。





☆
完☆