衝撃
Ⅰ-3
翌朝。ふっと溜息をついてエイジは目を覚ました。ベッドの横で
ゆうこは呑気そうにまだ眠っていた。
洗面台に行って鏡にうつった自分の顔色に驚いた。
「ひどい顔色だな。こりゃ。」
顔を洗って髭を剃り、歯磨きをすませるとすこし引き締まった気分になった。
もう一度ベッドに横たわっているゆうこに目をやった。
昨日のことが脳裏によぎった。
「多額の金がおまえの奥さんの口座に送金されてるぞ。」
ヒロトの言葉が何度もループしている。
はっと我にかえってパソコンと書類を鞄につめこむとエイジは外に飛び出した。
「おはようっす。先輩はやいっすね!」
大江戸線に乗って日経を読んでいると後輩の水谷が声をかけてきた。
「おう。おまえも気合はいってんな。」
「いや、俺はただラッシュが大嫌いで座りたいだけっすよ。」
「まあ俺も似たようなもんだな。」そういって新聞を折りたたんでエイジは
鞄を床に置いた。
「どうだ?最近、おまえ新規開拓営業だろ?飛び込み大変じゃないの?」
「全然っすよ。まったく契約とれないっすね」水谷はニコニコしながら言う。
本当にこいつは問題と認識してるのかと疑問を抱くほどの笑顔だ。
「そうなのか?とかいって実は今年の新人賞ねらってるんじゃないの?」
「絶対無理っすよ。うちの部署にはあの神野君がいますもん。」
「ジンノねえー。確かにあいつはできるな。噂はこっちの部署にもきてるよ。
できる新人がはいったてね。」
「俺も神野君みたいにできる男になりたいっす。じゃあ先輩俺こっちなんで。」
そういって水谷は新人らしく爽やかに立ち去って行った。
「さてと。」ガランとした職場に入るとだれ一人いなかった。
どうやら一番乗りのようだ。
続く