23時45分
昼間の彼と仕事帰りに落ち合い、キャバクラに来ていた。
女の手掛かりを探す目的で会ったわけだが、彼は黙ってついて来いと言わんばかりにカオルを引き連れてその店に入った。
その店には彼に連れられて来たことが過去に2~3回あった。
最初はただ飲みながら話の続きをするだけなのかと思ったが、そうではなかった。
「初めて言うけど、この店、俺の店なんだ」
正直、ものすごく驚いた。
彼は自分と同じ普通のサラリーマンだと思っていたのに、副業をしていたのだ。
正確には、自分と友人ふたりの3人で共同出資した店らしく、実際の経営はその友人ふたりが管理して、自分は金の動きしか見ていないということだった。
確かに昼も夜も掛け持ちで働くことは、ものすごく大変なことだと容易に想像できる。
出資のみで経営を人に任せてしまえば、そこまで負担にはならないだろう。
だが、それも今回の離婚の原因の一つではないのかと頭によぎったが、自分と彼の両脇にドレスを着たキャバ嬢が座っていたので、言わないでおいた。
混乱している自分を察して、彼は説明した。
「こういう水商売の店っていうのは、色んな客も来れば、色んなキャストも働いている。見た目じゃ分からない、それぞれ事情ってやつを抱えている。そして、その裏の事情をかなり把握している人間がこの店にはいるんだ。」
ますます意味が分からなくなってしまったが、黙って続きを期待していると、彼に向かって優雅に歩いてくる一人の女性がいた。
その女性はスーツを着こなし、他のキャバ嬢と明らかに違う雰囲気を醸し出していた。
挨拶をした後、そのスーツの女性が我々の向かい側に座ると、両脇にいたキャバ嬢は店のボーイに呼ばれ、他の席についていった。
「お話しは聞きました。その女性を探していらっしゃるんですね。」
どこまで話が通っているのかは分からないが、彼女が“裏”を把握している人物、ということだけは分かった。