0時53分
どこにでもある、チェーン店の居酒屋に女性と二人で酒を飲んでいた。
バーを出てから、どこに向かうともなく歩いている時にたまたま目に付いた居酒屋だった。
普段の自分であれば、初めてのデートなどはよく格好をつけ、オシャレで敷居も値段も高そうな店に連れ立って行ったものだが、突然の女性からの誘いと、酔いと、疑いで正直どうでもよくなり、何にも考えていなかった。
だが、店に入った後で気付いたことだったが、健全そうで安全そうな居酒屋に入れて少し安心している自分がいた。
いざ席に案内されると、狭い個室に2人で座らされ、目の前に座った女性を明るいライトの下で見たときに少し驚いた。
格別にと言うほどではないが、自分好みの割と美人なタイプであったからだ。
そして、そんな容姿とドラマのような展開のせいで、普段は営業トークを駆使して、物怖じしない性格の自分なのだが、かなり緊張していた。
実際、ようやく口を開いた言葉が「なぜ?」の一言だった。
だが、期待した答えどころか、「なんとなく」の一言で会話は止まり、お互い次の言葉が出てこなかった。
しばらくして、その店で頼んだ一杯のアルコールが飲み終わりそうになる頃、彼女は独り言のように呟いた。
「わたし、帰るとこないの・・」
その言葉が聞き間違いではないかと思った。
言葉の意味もそうだが、彼女の持ち物が小さいブランドバッグ一つだけだったからだ。
そして、なんて応えるのが正解なのか、はたまた何か言葉を掛けるべきなのか迷った。
自宅まで徒歩5分程度の店だったこともあるが、このまま居ても何をどうするべきか判断がつかなかったこともあり、自分はそろそろ帰るつもりだと言った。
どう言葉の意味を捉えてもらっても構わないつもりで。
それから約1時間後、自宅でシャワーを浴びていた。