十五夜クライシス 第9話










視界が暗い。


どれほどの時間が経ったのだろう。


川のせせらぎのような音が聞こえる。


水の冷たさが身体に伝わってくる。


どうやらまだ生きているようだ。


五感が機能している。


その感覚が徐々にはっきりとしてきた。


そして重いまぶたがゆっくりと開いた。


ハヤト「.....ここ...は。」


意識を失っていたようだ。


どれくらい時間が経ったんだ?


川の岸に倒れ込む形でハヤトは目を覚ました。


体の下半分は水に浸っている。


意識を失う前の最後の記憶...。


目の前でコウタに殺されたトモの姿。


その光景に怒り狂った自分。


直後に襲った激しい揺れ。


...思い出した。


ハヤト「落ちた...のか。」


吊り橋から谷底へ落下したようだ。


だが谷底を流れていた川に落ち、なんとか命拾いした。


意識を失い、そのまま岸へ流れ着いたみたいだ。


ハヤト「痛ぇな...。」


全身に痛みが走る。


川に落ちたとはいえ、当然無傷では済まない。


普通の人間なら死んでいたであろう。


ハヤトは周りを見渡す。


上へ登る方法を考えなければならない。


ハヤト「あれは...。」


ハヤトは何かに気づく。


その視線の先...崖の側面に大人1人がギリギリ通れそうな狭い道があった。


その道は上へと続いている。


ハヤト「あそこから....行くしかねえな...。」


痛む身体を無理矢理動かす。


まずは谷底から地上へ出るため、一歩ずつ歩き始めた。






その頃地上では崩れた建物のガレキが散乱していた。


コウタ「う...ぐ..。」


積み重なったガレキ


そのガレキの中にできたわずかな隙間にコウタがいた。


体は動きそうだ。


どうにかガレキを抜け出し、立ち上がった。


辺りを見渡す。


コウタ「ひどいな...。」


散らばった大量のガレキや倒れた木々が地震の強さを物語っている。


生きているのが奇跡だ。


コウタ「ハヤトは...どうなった?」


谷底をゆっくりとのぞく。


ここからでは生死は確認できない。


コウタ「これから...どうする...。」


突然発生したゼノン隊員たちの暴走。


広大な範囲で同じことが起きているだろう。


コウタ「このタイミングで暴走が起きるとは...。」


コウタは知っていた。


いずれゼノン隊員たちが暴徒化することを。


知りたくなかった真実。


胸に秘めていた出来事が鮮明に蘇る。


忘れもしない15年前の記憶が頭の中を駆け巡っていた。







ー 15年前 ー





コウタ「本当に開くとは...!」


フェンリルタワーの扉が開いた。


先日見た妙な映像。


頭の中に流れてきた映像に映った文字列はタワーの認証パスワードを示すものだった。


唖然とするコウタ。


その光景を後方の物影から見る何者かの姿があった。


高身長に長い銀髪を生やす青年の見た目。


クロム「ほぅ...あれがあの建物のパスワードか。」


そう呟き、クロムは不敵な笑みを浮かべながらその場を去った。


コウタはゆっくりとタワー内部へ足を進めた。


この先は未知の領域だ。


最大限の警戒をしつつ、しばらく進んでいくと。


コウタ「誰だ!」


前方に人影が見えた。


コウタは武器を構えた。


「落ち着いて。」


薄暗い部屋から声が聞こえる。


コウタは警戒しつつ、その声の持ち主に近づいてゆく。


パチッ。


すると室内に明かりがついた。


ヴェインと似たような近未来な空間。


そこにはいくつかのコンピューターが置かれていた。


そしてその空間の中央に、不思議な雰囲気を持つ1人の少女がいた。


コウタ「子供...だと?」


どう考えても不自然な状況だ。


入れないはずのタワー内部に立つ少女。


コウタはその少女が普通の人間ではないと直感で感じた。


コウタ「何者だ?」


武器を握る力が強まる。


「私の名前は...リル。」


コウタ「名前などどうでもいい!お前はどのような生き物で、何の目的でここにいる?」


コウタの口調が荒くなる。


いつでも戦えるように警戒を解かない。


リル「...いずれ分かる。今あなたが知るべきこと...それはそのコンピューターに記されている。」


リル「その高い感応能力で...果たすべき使命を...この世界を...いつか。」


コウタ「どういう意味だ!」


訳が分からず、問い詰める。


しかし、そこにいたはずのリルの姿は消えていた。


まるで煙のようにいつの間にか消えていた。


コウタ「何なんだ...一体。」


コウタは困惑する。


少女の姿をした正体不明の存在。


敵か味方かも分からない。


だが、リルの言葉に妙な説得力を感じた。


コンピューターに記された、知るべきこととは何なんだ?


コウタは目についたコンピューターのスイッチを入れた。


重量のある起動音が鳴る。


コンピューターにはいくつかのファイルがあった。


コウタ「これは...人類に関する記録?」


人類が地上を離れる前後の活動の記録が記されていた。


ミュータントに対抗すべく、ゼノン軍を創設したこと。


それ以外の人類は地下シェルターで生き延びることを決めたこと。


その他の内容もコウタが知っていることばかりだった。


コンピューターの操作をしばらく続けていると、ある項目に目が止まった。


その文字は一際大きな存在感を放っていた。


『最重要機密事項』


コウタの顔に汗が流れる。


このファイルに何が書かれているんだ?


高鳴る鼓動を感じながら、それを開いた。


『ゼノン軍創設に関して、民衆から反対の意見が多数ある。我々人類上層部もそれは危惧している。予定では適合者の体内に機械型のコアを埋め込み、身体能力を飛躍的に上昇させるつもりだ。だが、そういう改造された人間たちを危険視する声が多い。ミュータントを全滅させた後、一緒に地上で生活することに不安が大きいようだ。』


このファイルの日付は機密事項の中では一番古い。


1つずつ新しい日付のものを開いていく。


『科学者たちによって、コアにある弱点を作ることが出来た。今後の実験でそれを検証する。』


まるで日記のように状況が更新されてゆく。


『実験は成功だ。コアには電磁パルスへの脆弱性があることが証明された。しかしこれを民衆に公開するかは議論の余地がありそうだ。』


不穏な文章が並べられている。


コウタは今パンドラの箱を開けていることに気づいていた。


これ以上見てはならないものを見る前に、ヴェインに帰還した方がいい。


頭では分かっていた。


だが、自身の衝動を抑えることが出来ない。


もう後戻りは出来なかった。


『コアの脆弱性に関しては、やはり人類上層部と開発に携わった科学者のみの機密として扱うこととなった。ミュータントを全滅させるまで人類は地下シェルターで子孫を残し、未来へ種を繋いでゆくだろう。この先も人類上層部の座に着いた者たちにのみ、この機密を引き継いでゆく。ゼノン計画の裏に隠された真実が明るみになることはない。』


さらに次のファイルを開く。


『フェンリルタワーの頂上から強力な電磁パルスを発射するシステムが完成した。試作機として電磁パルス銃も複数開発。
...我々は当初から危惧されていたゼノン軍の危険性を無視出来ないという結論に達した。
ゼノン計画とは...ミュータントを殲滅し、地上を奪還する計画。しかしそれは世間に公表する建前に過ぎない。』


そして最後のファイルを開いた。


『本当の計画...それはゼノン軍がミュータントを殲滅後、すみやかにフェンリルタワーから電磁パルス攻撃を発射。暴走までの時間に個人差はあるだろうが、いずれ暴走は多くの隊員に感染していき...やがてゼノン軍は全滅する。ミュータントとゼノン軍...2つの危険因子が去った地上で人類が再び文明を築いてゆくのが本当の目的だ。』


機密ファイルを読んでいた時間は数分間のことだった。


だが、コウタはその時間がとても長く感じた。


目の前に突きつけられた現実は到底受け入れられないほど残酷なものだった。


コウタ「これが...ゼノン計画の..全貌だと...!」


体の震えが止まらない。


ミュータントから地上を奪還し、再び平和な世界を取り戻すために戦ってきた。


しかし、ヒーローであるはずのゼノン軍が人類から危険視されていた。


自分たちはただの捨て駒でしかなかった。


ゼノン計画の完遂=ゼノン軍の滅亡。


一体何のために戦ってきたんだ?


自分たちの存在意義は何なんだ?


強制的に戦士として改造され、用が済めば処分される。


これからどうすればいい。


悲壮感と絶望感に打たれながら、コウタはしばらく放心状態が続き、頭が真っ白のままヴェインに帰還した。


その夜。


ー 地下シェルター 人類上層部 ー


「機密ファイルへのアクセス履歴...どういうことだ?」


背広を着た男数人がコンピューターのモニターを見ている。


「虹彩認証(こうさいにんしき)を使おう...一体何者だ?」


タワー内部の監視映像から、コウタ目の高解像度の画像が切り抜かれる。


個人を特定するための解析が進む。


しばらく沈黙が続いた後。


『解析完了』の文字がモニターに出る。


「ゼノンID S138...コウタという隊員のようだ。」


「一体どうやってタワーへ侵入したんだ?」


「分からない...だが機密を知られてしまったからには消す必要がある。例のレジスタンスメンバーへ連絡しろ。」


地上に数多くあるレジスタンス。


その1つに人類上層部と密に連絡を取りあっているレジスタンスがあった。


背広を着た男の1人が通信を始めた。


「こちら人類上層部。君たちへ臨時の任務を頼みたい。内容は、コウタというゼノン隊員を始末してほしい。ああ、当然相応の報酬は支払う。
彼の顔写真と通信機の識別番号も後ほど送る。これで位置情報は分かるだろう。最優先でこの任務を遂行してくれ。任せたぞ。」


そう言い、短い通信を終えた。


「本当にそのレジスタンスグループは信用できるのか?」


「問題ない。彼らは報酬のためなら何でもする。余計な詮索もしてこないから、駒としては優秀だよ。利用価値が高い。」


人類上層部からすれば、彼らもいずれは用済みとなるのだろう。


時刻は深夜を迎え、各地の隊員は寝静まっていた。


そして、あの日がやってきた。


朝日が海上を照らす。


ヴェインではコウタがハヤトの部屋にいた。


コウタ「今日任務が終わったら話したいことがあるんだ。時間空けといてくれるか?」


ハヤト「なんだよ。話したいことって。今じゃダメなのか?」


タワー内部に侵入したことや、そこで見たもののことを打ち明けようと考えていた。


だが、一晩経った今もコウタは動揺している。


1日身体を動かして落ち着いてから話そうと決めた。


コウタ「俺はこれから軽く任務を済ませてくるし、夜の方がゆっくり話せそうだから。」


ハヤト「そうか...。詳細が気になるが、お前のタイミングに合わせるよ。」


コウタ「悪いな。それじゃあ、行ってくるわ。お前もダラダラしすぎるなよ。」


ハヤト「へいへーい。」


呑気な返事に呆れつつ、少し心が楽になった気がした。


飛行ビーグルへ乗り込み、適当な場所へ向かう。


少しでも気晴らしになればと思い、青空の下で武器を振り回すことを心が求めている。


コウタは廃ビルが並んだ地帯に機体を降ろした。


とりあえず体を動かしたい。


そう思い、当てもなく探索を始めた。




その頃、ハヤトはようやく朝食を摂っていた。


お盆の上にはパンやサラダ、ヨーグルトが並んでいる。


それらを無造作に口に運ぶ。


ハヤト「コウタの奴、話したいことって何だろうな。」


思い当たることを考える。


ハヤト「まあいいや。夜になったらゆっくり聞いてやるか。」


黙々と朝食を食べ終えた。


ようやく目が覚めてきたようだ。


とりあえず食後の一服をしたい。


ポケットにタバコとライターがあるのを確認し、ハヤトは喫煙所へ向かった。




ー 廃ビル地帯 ー


コウタは気の向くままに武器を振り回していた。


遭遇したミュータントを次々と片付ける。


周りにはその死体が転がっていた。


ミュ『ピギャァ...!』


最後の1匹が断末魔を上げ、地面に倒れる。


コウタ「朝の運動にはちょうどいいか。」


強敵というほどではないが、とりあえずは満足という様子だ。


戦闘を終え、周囲を見渡す。


風が心地よい。


ミュータントが現れる前はこの辺りもたくさんの人間がいたのだろう。


そのようなことを考えていると。


コウタ「...ん?」


前方から複数の人影が近づいてくる。


それらは間違いなくコウタに向かって歩いてきていた。


武器を持っているのが分かる。


どこかのレジスタンスのゼノン隊員だろう。


お互いの顔が認識出来るまで近づいたとき。


「あんたがコウタか?」


その集団の1人が口を開いた。


かなり横暴な態度だ。


コウタ「そうだが、あんたらは?」


その集団は互いに顔を見合わせた。


何かを企んでいるように見える。


「悪いが、終わりだ。」


1人の男がそう言い、コウタに突然斬りかかってきた。


コウタ「...っ!!」


ギンッ!


コウタはギリギリの所で受け止めた。


そして慌てて距離を取った。


コウタ「いきなり何をしやがる!一体何者だお前らは!!」


そう怒鳴るが、相手は構わずコウタに襲いかかる。


息の合った攻撃。


コウタ「くそ...こいつら!」


ガッ!


キンッ!


どうにか剣で受け止め続けるが、押されている状態だ。


これでは多勢に無勢。


やられるのも時間の問題だ。


いずれは体力も尽きてしまう。


スパッ!


コウタ「うぐっ!」


相手の剣がコウタの顔をかすめた。


その傷から血が流れる。


その血を拭い、コウタは敵を睨みつける。


コウタ「お前ら...なぜ同胞にここまでする!一体何が目的だ!!」


傷がズキズキと痛み、血が止まらない。


「まあいい。どのみち君はここで死ぬんだ。最期に教えてやろう。」


1人の男が口を開いた。


「俺たちは人類上層部からの依頼で君を始末しに来た。君には何の恨みもないが、俺たちは報酬のためなら何でもやる。従って君にはここで死んでもらう。」


コウタ「なん...だと!?」


人類上層部の差金だった。


なぜだ?


なぜ命を狙われなければならない。


コウタ「まさか...。」


その答えはすぐに分かった。


コウタ「俺は...知りすぎたのか。」


昨日フェンリルタワーに侵入し、機密情報を見てしまった。


確かにあれがゼノン軍に広まれば、人類上層部にとって不都合だろう。


それで邪魔な存在を消そうとしている。


やはり昨日見た機密情報は本物だったということだ。


コウタ「そういう...ことかよ。」


人類上層部はゼノン軍を捨て駒としか見ていない。


人権も無く、救いもない。


都合よく利用されるだけの存在。


こんな連中のために今まで戦ってきたのか。


今目の前にいる集団もそうだ。


見返りのためなら同胞を殺すことをためらわない。


そんな奴らの思い通りにさせていいのか?


このままやられっぱなしでいいのか?


コウタ「いいわけがない!!」


コウタは武器を構えた。


激しい怒り、そして悲しみが心を支配する。


ゴゴゴゴ....


「なんだ?こいつ、明らかに雰囲気が変わったぞ!」


「何をする気だ?」


コウタの様子を見て男たちは警戒する。


空気がピリつく。


コウタの武器が禍々しいオーラに包まれた。






ゼノンアーツ  


破滅のネメシス





バシュンッ!


コウタが一瞬にして姿を消した。


「な...!どこに行きやがった!」


「どうなってる!!」


男たちはうろたえる。


「あ、あそこだ!」


1人の男が上を指差す。


そこには、一瞬にして飛び上がったコウタの姿があった。


オーラに包まれた武器を頭上に構える。


そして、地面に勢いよく落下する。


コウタ「うおおおお!!」


その勢いのまま、武器で地面を激しく叩きつけた。


ズガーン!!


地面の所々にヒビが入る。


その亀裂から多数の光の柱が飛び出してきた。


「ぐはあ!!」


「ぎゃああ!!」


その光は男たちの体を容赦なく貫いた。


飛び散る大量の血液。


コウタは手を休めることなく、男たちに追撃を仕掛ける。


ズバッ!


ザンッ!


一瞬にして形勢は逆転した。


少数の者にしか使えない切り札、ゼノンアーツ。


それを同胞に向けて放つ日が来るとは思わなかった。


コウタの心は冷静さを失っていた。


無理もないだろう。


残酷な機密を知ってしまい、理不尽に命を奪われる寸前だったのだから。


コウタの一方的な攻撃はしばらく続いた。


体力を消耗し、ようやく我に帰ったとき。


周りには動かなくなった男たちが倒れていた。


コウタ「はあ...はあ...。」


至るところに血が飛び散っている。


自分の武器にミュータント以外の血液が着くのは初めてだった。


剣先からポタポタと垂れる....人間の血。


その光景を見てコウタは自分がしたことの重大さを理解した。


コウタ「う、うわああああ!!」


それと同時に怖くなった。


今すぐにこの場から逃げ出したい。


ゼノン軍に見つかれば相応の処罰を受けるだろう。


コウタは通信端末を破壊し、走ってこの場を後にした。


怖かった。


地面に倒れた同胞たち....残酷な光景が頭から離れない。


恐怖から逃げるように、アテもなく、ただひたすら走った。


事情をヴェインに正直に話せば、もしかしたら分かってくれたかもしれない。


だが、そんなことを考える余裕はコウタには無かった。


人を何人も殺してしまった....その事実が深く心に刻みこまれた。


この先自分は行方を追われ続けることになるのだろう。


仲間を大量に手にかけた....殺人犯として。


その夜、コウタは森の中の小さな小屋に身を隠した。


そこで初めて泣いた。


とても怖かった。


だが、それだけではない。


ハヤトやトモ、ユキオやリョウ...その他ヴェインの仲間たちの顔が頭に浮かぶ。


もう二度と一緒に楽しい時間を過ごすことは出来ないと感じた。


ハヤトと任務後にあの海岸へ行くこともない。


寂しさ、悲しさ、色んな感情が爆発する。


涙が枯れるまで泣いた。


ヴェインにはもう戻れない。


身を隠しながら自給自足で生きていくしかない。


その後、コウタは目的もなくただ生き続けた。


それは孤独で...,とても長い15年だった。







ー 現在 ー



ハヤトは痛む身体を無理やり動かしながら、地上を歩いていた。


ひとまず体を休めたい。


谷底から抜け出して、だいぶ歩いた。


体力と気力はもう限界だ。


ユキオはEMP攻撃の犠牲となり、トモは目の前でコウタに殺された。


今日一日で嫌というほど地獄を見た。


休める場所を求め、ひたすら彷徨っていると。


気づけば一つの建物の前まで来ていた。


ハヤト「フェンリルタワー...。」


その扉は開いていた。


警戒しつつ、ゆっくりと中へ入る。


中は薄暗く、足音だけが響く。


不気味な静けさに包まれた空間だ。


その中をしばらく進んでゆくと。


「ようこそ。あわれなゼノン隊員。」


前方から声が聞こえた。


ハヤト「この声は...!」


聞き覚えのある声だった。


ハヤトは声のした方向へ向かう。


通路を真っ直ぐ進んでゆくと、広い空間にたどり着いた。






無機質であり、それでいて異様な場所だ。


その空間の真ん中...そこには、冷徹な笑みを浮かべて立つクロムの姿があった。







十五夜クライシス 第9話 完