第3話










ディアウスピター「ギャゥゥゥ!!」


作戦エリアにディアウスピターのうめき声が響く。


突如現れた謎の神機使い、サバタの奇襲で戦況は大きく傾いていた。


シエル「か、彼は一体!?」


シエル達はなんとか立ち上がりながら戦闘を見つめる。


サバタはピターの返り血を面倒くさそうにぬぐいながらシエル達の方をむく。


サバタ「お前らは大人しくしとけ。死にたくなければな。」


サバタはそう言うと再びピターに向きなおる。


サバタ「ったく、あと1体か。さっさと片付けるか・・」


ピター『グォオオオオ』


フラン『アラガミ、活性化!』


ピターは巨大な刀翼を広げ、サバタに突進を仕掛ける。


ナナ「う、速い!」


一瞬でサバタに間合いを詰め、サバタに切りかかった。



ザシュッ!!



刀身が体を貫くような鋭い音


その音から数秒の間を置いて倒れたのは・・・ピターだった。


ギル「・・・な!?」


ナナ「何が起こったの!?」


シエル「た、太刀筋が・・全く見えませんでした。」


ロミオ「」


サバタの神機はピターの目に突き刺さり、脳天を完全に貫いていた。


サバタ「ふっ。あっけねえな。」


サバタはブラッドに背を向けたまま呟いた。


フラン『ア、アラガミ沈黙!救護班がそちらに向かってます!もう少しの辛抱を!』


シエル「はぁ・・はぁ・・体が重い」


そのときサバタの後方から一機のヘリが現れた。


サバタ「・・チッ」


そのヘリはサバタの横に着陸し、中から若い女性が出てきた。


その女性はブラッドに近づいた。


「初めまして。あなた達、フェンリル極東支部の神機使いね?」


しかしブラッド隊たちの異変に気付いた。


「ん?なんだか苦しそうね?・・・まさか!」


女性は何かに気付き、サバタの方を向く。


「サバタ!」


サバタ「・・・あ?」


「あなた、破滅を使ったわね?」


サバタは神機を肩に担いだまま何も言わない。


「あなたなら破滅を使わなくても問題なく倒せたはずよ。
この子たちまで巻き添えくらってるじゃない。」


サバタは背を向けたまま答える。


サバタ「こうしときゃ誰も俺には近づかねえだろ。」


そう言うとサバタは煙草に火をつけ、ヘリに乗っていった。


女性はため息をつき、再びブラッドの方に向き直った。


「迷惑をかけてごめんなさい。あなた達はこのヘリで極東支部まで送るわ。」


女性は申し訳なさそうに言う。


シエル「い、いえこちらのヘリも間もなく到着するので」


シエルがそう言うと同時に極東支部のヘリが見えてきた。


「来たみたいね。今日は本当にごめんなさい。あの子にもしっかり言っておくから。」


シエル達はその意味が分からずにいたが、女性はすぐヘリに乗り込んだ。


「じゃあ、またあとで。」


女性はそう言うとヘリは飛びたっていった。


シエル「あの方たちは一体・・」


ギル「それよりも・・早く救護を受けようぜ。」


ヘリが着陸し、隊員たちは救護隊の肩を借りながらヘリに乗っていった。



一時間後



サカキ「なんとか落ち着いてきたようだね。」


アナグラの医務室でブラッドたちは治療を受けていた。


身体も回復してきたようだ。


そこには別任務を終えたスズもいた。


スズ「ごめんねみんな。もっと早く終わらせてそっちに合流できてれば。」


スズはみんなを気遣う。


シエル「いえ隊長。私こそ不甲斐なくて申し訳ありません。」


ナナ「そういえばあの女の人最後変なこと言ってなかった?」


ギル「ああ、またあとで、みたいなこと言ってたな。」


そこで病室のドアがノックされる。


入ってきたのはフランだった。


フラン「サカキ博士。カタストロフィの方々が到着したようです。」


サカキ「おお、そうかい。では支部長室まで案内しておいてくれ。後ほど向かう。」


サカキはブラッドの方に向き直る。


サカキ「みんなにも先日話したよね?灰域の件で別の組織と協力することになるって。」


スズ「はい。」


サカキ「いよいよご対面というわけだ。この後支部長室でみんなに紹介させてもらうよ。」


サカキはそう言うと病室を出て行った。


ギル「よし、俺たちも行くか。」


スズ「大丈夫?まだ横になってた方が・・」


シエル「いえ、もう回復したんで平気です。心遣い感謝します。」


ナナ「心配しすぎだよ~。」


ロミオ「もうばっちりだぜ!」


隊員たちの元気な姿にスズも安堵する


スズ「そっか。よし、なら行こう!」


ブラッドは支部長室へ向かった。


支部長室にはアナグラの神機使い全員が集まっていた。


エリナ「あ、先輩たち大丈・・」

エミール「ブラッドよ無事だったか!!」


エリナ「エミールうるさい!」


バキッ!


エミール「ごふぅ!!」


ナナ「あ、エリナちゃん。うん、もう大丈夫だよ。」


ギル「しかし一体なぜ急にあんなにバイタルが下がったんだろうな。」


シエル「ええ。サカキ博士も後ほど解析するとおっしゃっていましたが・・」


ブラッドは不安の色を隠せないようだ。


そこでサカキが支部長室に入ってきた。


サカキ「やあみんな待たせたね。今日から君たちの仲間となる方々を紹介させてもらうよ。」


神機使いたちはサカキの方を見る。


するとサカキに続いて男女が2名入ってきた。


ナナ「あ・・!」


そこには、先ほど作戦エリアで遭遇した神機使いサバタと女性がいた。


サカキ「紹介しよう。カタストロフィのサバタ君、そしてイルダさんだ。」


サカキが紹介すると、イルダと呼ばれる女性の方が一歩前へ出た。


イルダ「初めまして。私はカタストロフィの責任者、イルダ・エンリケスよ。そして・・」


イルダは腕を組んで壁にもたれかかっているサバタの方を見た。


イルダ「こちらがサバタ。カタストロフィの神機使いよ。よろしくね。」


ギル「おいおい、さっきの奴らじゃねえか。」


ブラッド隊員は驚きの顔を浮かべる。


サカキ「ところでイルダさん、他の神機使いの方は?」


サカキが怪訝な顔で尋ねる。


イルダ「連れてきた神機使いはサバタだけですが?」


イルダのその返答に室内がざわつき始める。


サカキ「えっ?一人だけ?」


サカキの戸惑う姿を見てイルダは自信満々に答える。


イルダ「ご心配いりませんサカキ博士。サバタはカタストロフィの唯一にして最強の戦力。
ご期待通りの成果をあげれるかと。」


サカキは渋い表情を浮かべながらも頷いた。


サカキ「そうですか。ではこれからよろしくお願いします。」


イルダ「ええ、こちらこそ。」


二人は握手をした。


サカキ「では部屋に案内しますよ。」


サカキに続いてイルダ、少し遅れてサバタが続いた。


スズの横を通り過ぎようとしたとき、これまでうつむき加減だったサバタがふと顔を上げ、スズをじっと見つめた。


スズ「・・・?」


サバタ「・・・ふん。」


再びサバタは歩き出し、部屋を出ていった。


ギル「なんだ?」


スズ「さあ、どうしたんだろうね?」


スズはサバタの最後の態度が気になった。


ナナ「でもびっくりしたね。さっき会った人がカタストロフィの人だったなんて。」


ロミオ「本当だよな!びっくりだぜ!」


ギル「お前戦闘不能になってたから知らないだろ。」


ロミオ「う、うるせぇよ。」


スズ「とりあえずラウンジに行こうか。」


ナナ「さんせ〜い!」


ブラッドはラウンジへ向かった。


ラウンジで晩飯を食いながらスズは今日の任務で起こった出来事を隊員から聞いていた。


やはり突如バイタルが下がった件が気になるようだ。


スズ「とりあえずこの後サカキ博士のところへ行ってみよう。何か分かったかもしれないし。」


シエル「ええ、行ってみましょう。」


ブラッドは晩飯を食いおえ、サカキの研究室に向かった。


研究室に入ると、サカキはモニターを食い入るように見つめていた。


サカキ「や、やあ君たち。どうかしたのかい?」


ナナ「今日の任務中の件のことだよー。何か分かった?」


サカキは苦笑いしながら答える。


サカキ「い、いやあそのことなんだけどねぇ。」


サカキの様子が何かおかしい。


シエル「どうしたのでしょうか?」


シエルが尋ねる。


サカキ「実はね・・」


サバタ「俺の仕業だ。」


突然の声に一同が振り向くと、そこにはサバタの姿があった。


ナナ「え?どういうこと?」


サバタ「どうもこうもない。俺があんたらのバイタルを低下させた。」


一同は状況が飲み込めず、サカキの方に向き直す。


サカキ「うむ・・。理解しがたいだろうがサバタ君の言う通りだよ。」


サカキは説明を続ける。


サカキ「君たちのバイタルが低下する直前、あのエリアで感応現象みたいな反応が検知された。まるで血の力のようなね。」


シエル「まさかそれって・・。」


サバタ「俺は周りのアラガミや神機使いから生命力を奪い、自分の能力を上げる力を持っている。だからあんたらのバイタルが著しく下がった。」


ブラッドは驚きの表情を浮かべる。


サカキ「うむ。まさにその通りだね。」


一同が唖然としていると、スズがサバタに詰め寄った。


スズ「じゃあ君は私の仲間を死の危険に晒したってこと?」


スズは険しい顔でサバタを見る。


サバタ「俺と一緒にいたらいかに危険か分からせるためだ。」


スズ「だからって仲間に危害を加えるのは許さないよ。」


サバタ「ふん、だったら俺には近づかねえことだ。」


そう言うとサバタは部屋から去って行った。


部屋に沈黙が走る。


サカキ「こりゃなかなか厄介な力だね。明日からの合同任務に支障が出なきゃいいが。」


ロミオ「てかなんだよあいつ!あの態度!人を戦闘不能にしといて謝りも無しかよ!」


ロミオが感情的になる。


無理もない。
だってこいつだけ戦闘不能になったし笑


ナナ「こりゃ先が思いやられるねぇ。」


サカキ「うむ。こちらでも何かできないか考えておくよ。今日はみんなも疲れているだろう。ゆっくり休んでくれ。」


ブラッドたちはそれぞれの部屋に戻っていった。





次の日


ブラッドたちはその日の任務を終え、エントランスに戻ると何やら言い争う声が聞こえた。


エミール「やい君!待ちたまえ!!」


エミールが怒っている。


エミールが叫んでる方を見ると、サバタが居た。


スズ「どうしたのエリナ?」


スズが駆け寄る。


エリナ「あ、先輩。今日は第一部隊とサバタさんで合同任務だったんだけど、サバタさんが単独行動ばかりして。」


エミール「やい!君の騎士道はそんなものか!そんなものでポラーシュターンになれると思っているのか!!」


エリナは怒っているエミールを横目に続ける。


エリナ「それで今私から注意したら無視されて、エミールがそれを見て怒ってるわけ。」


サバタは怒っているエミールを気にも止めずにエレベーターに乗ろうとする。


そこへロミオが割って入る。


ロミオ「おいお前さあ、少しはチームのことを考えたらどうなの?迷惑かけてるの分かんない?・・・っておい、待てよ!」


サバタはロミオを無視してエレベーターに乗って行った。


ロミオ「くー!!マジであいつ腹立つ!!」


エミール「ぐぬぬ!なんたる根性!」


スズは不安の表情を浮かべる。


当然だ。


あんな奴と上手く連携なんて取れるはずがない。


そして、スズの不安通り次の日もサバタは他の部隊員と揉めていた。


揉めると言ってもサバタは一方的に無視してるだけだが。


「んだよ、あいつ。性格悪すぎだろ。」


「そのくせムチャクチャ強えのがまた腹立つぜ」


「あんな奴とやれるかよ。」


「あんな奴と協力なんて・・サカキは一体何考えてんだ。」


早くもそんな声が飛ぶ中、いよいよブラッドとの合同任務の日が来た。





次の日


スズ「今日の討伐対象はスサノオ、ハンニバルそれぞれ2体。いずれも異常進化の個体。特に第一種接触禁忌種のスサノオには要注意、以上!」


出撃前のブリーフィングのスズの言葉を頭に入れ、ブラッドとサバタは作戦エリアに向かっていた。


ロミオ「てかお前、今日は絶対勝手な行動はすんなよな!」


ロミオはサバタに言うがサバタは窓の外をぼんやり眺め、気にも止めていない。


ロミオ「て、てめえ無視かよ!」


スズ「ロミオ!もう着くから落ち着いて!」


スズはロミオをなだめ、サバタの方を向く。


言いたいことは山ほどあるが、ここはぐっとこらえた。


そして作戦エリアに到着し、各員辺りを見渡す。


すると、サバタがスズに近づいてきた。


サバタ「あんたは俺の昔のダチに似てる。他の奴とは明らかにレベルが違うな。」


スズ「・・?」


スズは首を傾げる。


ナナ「あそこあそこに2体いるよ。」


ナナの指す方向を見ると、ハンニバル2体がそれぞれ別の場所で建物を捕食しているのが見えた。


スズ「2体ともこちらに気づいていない。二手に分断して乱戦を避け・・」


ハンニバル『グォォォォ!!』


しかし急にハンニバルの怒号が響いた。


ハンニバルの元には、単独で攻撃を仕掛けるサバタがいた。


するとまだ気づいていないもう一方のハンニバルにもサバタは攻撃を仕掛けた。


これで2体ともこちらに気づいてしまった。


ギル「く・・!あの野郎何してやがる!」


サバタ「分断なんて面倒くせえ。こっちの方が手っ取り早いぜ。」


スズ「もう!行くよみんな!」


スズたちも加勢に向かう。


サバタはハンニバル2体の攻撃を難なくかわす。


サバタ「皆殺しだぜ!」


高く飛び上がり、ハンニバルの背中に高速の太刀をくらわせる。


ハンニバル『ギャオオオ!』


フラン『ハンニバル、結合崩壊』


ロミオ「ておい、逆鱗破壊しちゃってんじゃん!」


フラン『ハンニバル、2体とも活性化!』


フラン『・・!交戦外のスサノオが戦闘音を探知!そちらに向かっています!』


フラン『スサノオの位置情報、送ります!』


スズ「く・・どうする!」


サバタ「おもしれえ!」


ハンニバル2体はサバタに集中攻撃を仕掛ける。


しかしサバタに攻撃は当たらない。


スズ「ここはサバタ一人でも大丈夫そうだ。」


スズは仲間に指示を出す。


スズ「シエル、ナナ、ギル、あとロミオは4人で片方のスサノオの所へ向かって!」


「「了解!!」」


スズはもう片方のスサノオの方へ一人で向かった。


ハンニバルはサバタに火炎攻撃を放つが、サバタはそれを回避し、一瞬で間合いを詰め、顔面に刀身を突き立てる。


サバタ「隙だらけなんだよ!」


フラン『結合崩壊確認、トドメを!』


サバタがハンニバルにトドメを刺そうとしたとき、後ろからもう片方のハンニバルが遠距離攻撃を放った。


サバタ「・・ふっ」


しかしサバタはジャンプでかわし、その攻撃はそのまま弱っていたハンニバルに当たった。


ハンニバル『グォォォォン・・』


サバタ「バカめ。」


サバタは着地すると、ゆっくりもう片方のハンニバルの方を向いた。



同じ頃、スズはスサノオと対峙していた。


スサノオはスズに巨大な剣の様な部位を突き立て、連続攻撃を仕掛けた。


スズ「おっと!」


しかしそれを難なく避け最後の一撃を盾で受け止め、そのままカウンターで斬り上げ攻撃を行った。


スズ「パリングアッパー!」


ズドン!


スサノオはたまらずよろめく


フラン『スサノオ、活性化!』


スサノオは尻尾で回転斬り、剣による連続攻撃、そしてオラクルによる遠距離攻撃を立て続けに放った。


しかしスズは全て避けると同時にスサノオの懐に入った。


そして神機に力を込める。


スサノオはスズを見失っているようだ。


スズ「くらえ〜!」


スサノオが懐にいるスズに気づいたときにはもう遅かった。


スズ「チャージクラーッシュ!!」


スドドン!!


力強い一撃と共にスサノオを葬り去った。


そしてスズはすぐにサバタの元へ向かった。


一方サバタはハンニバルを追い詰めていた。


サバタ「極東のアラガミは世界でもトップクラスに強力と聞いていたが、こんなものかよ。」


追い詰められたハンニバルは最後の力を振り絞って波状攻撃を繰り出す。


辺り一面に高熱のオラクル攻撃を放ち出した。


サバタ「ふん、悪あがきが。」


そこへスサノオを倒したブラッド隊が近づいてきた。


シエル「あれは!」


ギル「すごい熱だぜ!」


 サバタもブラッド隊に気づいた。


サバタ「ふん、無事だったか。さて、こっちも終わらせるか。」


サバタはハンニバルの波状攻撃を避けながら間合いを詰める。


そして走りながら神機を特殊な構えに持ち替えた。


スズ「あの構えは!?」


近づいてくるサバタをハンニバルは殴り飛ばそうとしたが、サバタは難なくかわす。


そしてハンニバルを真下から見据えた。


サバタ「終わりだ」





秘剣・昇り飛竜




ズバーン!!



激しい衝撃音と共にハンニバルは完全に動きを止めた。


フラン『作戦、完了です。』


任務を終え、一同はヘリを待つ。


ロミオ「おい、隊長。さっきあいつが使っていた技ってブラッドアーツに似てなかったか?」


スズ「うん、かなり似ていた。それもロングブレードの中でもトップクラスのブラッドアーツに。」


ロミオ「うわ、マジかよ。・・てかよ、お前あんだけ言ったのにまた勝手な行動しやがったな!」


ロミオはサバタに詰め寄るが、サバタは反応しない。


ロミオ「おかげで余計な手間が増えたじゃねえか!
おい、聞いてんのか!」


サバタ「雑魚は大人しくしてろ。」


ロミオ「ああ!?なんだと!?
大体お前と同行したらこっちがいつ死ぬか分かんねえよ!」


ロミオがどんどんヒートアップする。


ナナ「ちょっと二人とも・・」


ロミオは構わず続ける。


ロミオ「もしかしたらあんたのせいで死んだ神機使いいっぱいいるんじゃねぇの!?」


サバタ「!!」


それまで何を言われても意に返さなかったサバタが急変した。


ボコッ!


ロミオ「ぐはぁ!」


ロミオを殴り飛ばし、ロミオに詰め寄る。


サバタ「黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって。好き放題言えねえ身体にしてやるよ!」


ロミオ「ひ、ひい〜!!」


バシィ!


サバタ「!?」


スズ「言ったよね!?仲間に危害を加えるのは絶対に許さないって!」


そこにはサバタの拳を受け止めるスズの姿があった。


サバタ「・・ふん、まあいい。命拾いしたなお前。」


サバタはロミオにそう言った。


ロミオ「ち、ちくしょう」


スズ「ロミオも言っていいことと悪いことを考えないと!」


そのとき、フランから突然通信が入った。


フラン『み、みなさんすぐに戻ってきてください!
・・ちょ、何するんですか!あなた達は誰ですか!』



フランの様子がおかしい。


スズ「ど、どうしたの!?」


すると通信機から聞きなれない男の声がした。


『今すぐ戻ってこい犬共。勝手な行動しやがって。』


ギル「な、誰だお前!」


『いいから戻ってこい!命令だ命令!!』


スズ「く!事態は分からないけどとりあえず戻ろう!」


ブラッドたちは至急アナグラへ戻った。


アナグラへ戻ると、いかにも上層部の様な男とその護衛が数人エントランスにいた。


そしてスズたちを見て、話し始めた。


「ふん、これで全員か。私の名は犬飼。フェンリル本部所属の科学者だ。」


サカキ「そ、それで話というのは」


犬飼「単刀直入に言おう。貴様らが集めている異常進化したアラガミのコア、それを私に全部よこせ!」


スズ「え!?」


シエル「そんな!」


アナグラがざわつく。


サカキ「そ、それは一体なぜ!」


犬飼「サカキ博士。あなたは灰域などというくだらん妄言を吐き、貴重なコアを独占しようとしてるそうだな。」


サカキ「い、いえそんなつもりでは・・」


犬飼「言い訳はいい!とにかくこのコアは全て私の研究に使わせてもらうとしよう。
ああ、それとここにある珍しい食料品ももらっていくとするよ。」


犬飼はラウンジの方へ向かう。


ギル「てめえふざけんな!!」


ギルは犬飼に飛びかかろうとする。


しかしスズがそれを制止する。


スズ「ダメ!今は抑えて!」


ギル「でもスズ!」


スズ「お願い!」


スズはギルに必死で訴えかける。


ギル「・・分かったよ。」


犬飼「ふん、部下の躾はしっかりしろよ」


ギル「く・・・!」


サバタはその様子を壁にもたれかかって静観していた。


犬飼はコア、そしてラウンジの珍しい食料品を持って帰っていった。


エリナ「ひ、ひどすぎるよ!」


ロミオ「ちくしょう!みんなで苦労して集めたコアを!」


その夜、みんなはラウンジで悲観していた。


ナナ「うう、おでんパンの材料も取られちゃったよ。」


シエル「あのクソ害児が!!」


サカキ「く・・欲にまみれた連中め!」


スズは黙ってうつむいていた。


そこへ、イルダがやってきた。


イルダ「話は聞いたわ。フェンリル本部の犬飼・・汚い男ね。」


イルダはあたりを見渡した。


イルダ「あら、サバタはここにはいないのかしら?」


スズ「いえ、見てませんけど。」


イルダ「あら、変ねえ。部屋にもいなかったのに・・・」


イルダは怪訝な顔をした。






犬飼「はっはっは!貴重なコアがに手に入ったぞ!これで私の懐も潤う!」


その夜、犬飼は護衛の神機使いを連れて迎えのヘリまで歩いていた。


犬飼「おいお前たち、ヘリポートまでもう少し歩く。警戒を怠るなよ!」


護衛「はい!」


犬飼はコアが入ったアタッシュケースを手に意気揚々と歩いていく。



「随分と楽しそうだなあ。」



そのとき、暗闇から何者かの声が聞こえた。


犬飼「だ、誰だ!照らせ!」


護衛が声のする方へライトを照らすと、そこには神機を持ったサバタがいた。


犬飼「な、なんだ貴様は!」


サバタ「そのアタッシュケース、随分大事に持ち歩いてるなあ。それをこっちに渡せば命だけは助けてやるよ。」


護衛「は、博士!こいつ先ほど極東支部にいました!」


護衛の一人がサバタの顔を覚えていたようだ。


犬飼「極東支部の神機使いか!取り返しに来たわけだな?だが手洗い真似をすればすぐ本部に連絡するぞ!?」


サバタ「ほぅ?やってみろよ」


犬飼「く・・!おい、こいつを捕まえろ!アラガミのエサにしてしまえ!」


護衛は一斉にサバタに飛びかかった!


しかしサバタは護衛の一人を一撃で気絶させ、他の護衛たちの通信端末を一瞬で奪い取り、破壊した。


護衛「ひい!」


サバタ「死ね」


サバタは護衛たちを全力で蹴り飛ばし、護衛の身体は砕け散った。


犬飼「あ・・ああ・・」


そして犬飼の方へ向き直った。


そして物音を聞いてオウガテイルが集まってきたようだ。


サバタ「待たせたなおっさん。そいつを渡しな?」


犬飼はたまらずアタッシュケースを差し出す。


犬飼「い、命だけはぁ!」


サバタは無表情で答える。


サバタ「アラガミのエサになるのはお前の方だ。」


ゴキィ!!


サバタは犬飼の両脚を全力で踏みつけ、潰した。


犬飼「があああ!!」


サバタ「これで逃げれねえな。」


そう言うと、犬飼を担ぎ上げ、オウガテイルの方へ投げ飛ばした。


意識はあるが、動けない犬飼にオウガテイルが近づく。


犬飼「あ・・あ、助けて・・ああー!!」


犬飼は意識が無くなるまでアラガミに喰われる苦痛を味わい続けた。


サバタ「さてと、」


サバタはアタッシュケースを拾い上げた。


サバタ「今日の任務では見苦しい所を見せちまったからな。・・これで貸し借り無しだぜ。」


サバタはスズに受け止められた拳を見つめ、そう呟いた。





第3話 完