人は年を追うごとに
変化していく。

特に女性は
周りの環境
今置かれている状況
関わりのある近しい人の
影響など、その時の心の変化が
顔や身体に現れる。

鬼束ちひろという人は
劇的に変化していった
ミュージシャンだ。

彼女は九州、宮崎の出身。
宮崎の女性といえば
九州の中でも
温かく明るいし
人柄の良さでも
お嫁さんにすると
旦那さんは幸せと
言われる。

鬼束ちひろは
小柄で色が白く
色素の薄そうな
茶色い眼をしている。
 

最初見たときは
はかなげな
ちょっと繊細で
傷つきやすそうな
女性だなと思った。
妖精みたいとも。

でも、ひとたび
歌を歌うと
その力強さ
魂の叫びみたいな
真に迫った
姿が印象的で
秘めた情熱が
一気に噴出したかのようだった。

裸足で歌っている姿も
特にインパクトが強い。

彼女の作る楽曲の
その詩の世界が
独特だ。

眩暈
作詞・作曲:鬼束ちひろ

何かに怯えてた夜を 
思い出すのが非道く怖い
ねぇ私は上手に笑えてる?

今は貴方のひざにもたれ
悪魔が来ない事を祈ってる
ねぇ「大丈夫だ」って言って

嘘みたいに私を 
強く強く信じているから

貴方の腕が声が背中がここに在って
私の乾いた地面を雨が打つ
逃げる事など出来ない
貴方は何処までも追って来るって
泣きたい位に分かるから
分かるから・・・


男女間の心模様を
彼女の切羽詰ったような
個性的な言い回しで
聴く者にも
ねぇ、ねぇ わかってよと
でも言わんばかりに
迫ってくるような寂寥感がある。

あなたがそばにいるのに
自分と言うものの
本質を出せないし
また出すことを許されないような
堂々巡りの
独り相撲をしているような
孤独感を
この歌に感じる。

この気持ちを愛する人にも
わかってもらえず
大きく吐露することも
出来ない。
なので、歌にして
全身全霊で伝えたいみたいな。

ものすごく繊細な人なのだろうか。
傷つきやすく
その上に自己愛も
強いのかもしれない。

彼女の歌には
悪魔とか神様とか
目に見えない存在が
よく出てくるので
宗教性が強いとも
言われるが
そういう意味では
精神世界にぐぐっと
埋没するタイプなのかも。

2000年にデビューして
この眩暈はシングル4曲目。
そしてこの作品で
彼女はレコード大賞作詞賞を
受賞している。

2003年頃、一旦活動を停止して
そして数ヵ月後に復帰。
その後また体調を崩したり
事務所とゴタゴタして
2007年頃から活動再開。

その間に
いい日旅立ち、西へ」という
山口百恵の名曲のカヴァーも
している。
これは素晴らしい歌唱力と
彼女のためのオリジナルの歌詞も
非常に美しい言葉が並んで
カヴァーというより
持ち歌のように歌い切っている

とても情緒的で
歌そのものも
童話とか寓話みたいな雰囲気も持つ。

2007年以降の
パンキッシュで
派手な化粧のいでたちは
おおよそ多くのファンの
度肝を抜いたと
思うけれど
繊細さゆえの
感情の触れ幅を
外見を変えて
楽曲の雰囲気も変えて
自分を鼓舞するとか
どうにか演出しようと
していたのかな~と。

その迷走している当時
トーク番組に
出ているのをチラッと
見たときは
まったく格好良いとか
いい女風とか
尖っていると言うより
むしろ奇天烈で田舎臭い
ダサいオネエチャン丸出しだなと
思ってしまった。

根底にロックが
あるのかもしれないけれど。

彼女の声質には
バラード系のほうが
似合う気がする。

バラードで
その気骨を活かした方が
良くない?と
思うけどね。

眩暈は、19歳のときに
英語で作った歌だそうだ。

そう、彼女は英語の
発音も結構良いと思うし
実は努力家なのかなとも。

最近はどぎついお化粧もやめて
少しずつ以前のナチュラルな姿に
戻ってきたようだ。
そちらの方が良いよ。
だって、もともととても美人だし
トランジスタグラマー(古っ!)
素材で十分勝負できるのだから
いらぬ装飾は抜きで
やっていって欲しいなと。

眩暈月光流星群などを
聴いていると
こんなに心の叫びを
ストレートに歌に出来て
しかも聴く人たちの
心を震わせることが出来るのだから
どうか
本来の自分に合った
音楽というものを
もう一度追求して欲しいなと
期待している。

彼女なら
また名曲を作り上げるだろう。


やっぱり音楽が好きってことで。