チタキヨ第4回公演「わたしはミシン」★★★★★ | 元玉拾い(もと、たまひろい)のスポーツとか草花とか

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チタキヨ 第4回公演「わたしはミシン」

 

舞台観劇される方は、人によって好みがあると思います。

コメディー、ミュージカル、ヒューマンドラマ・・・

 

この作品が、僕の好みだった、ということはあるかもしれません。

ただ、どんなジャンルの舞台でも、共通して必要だと思ってることがあって。

非常にシンプル。脚本と演技力です。

 

「わたしはミシン」は、この両方ともが、とにかく素晴らしいものでした。

この作品が上演された期間は、ちょうどガソリーナ(じんのひろあきさん)「櫻の園2」と完全にバッティングしてて、2回しか観られませんでした。もっと観たい、再演して欲しいし、チタキヨの次の公演も絶対に観る!

 

出演者は5人。3人の女性陣(全員、チタキヨのメンバー)は映画「嘘をついて」

男性陣のうち、おひとりはTBSドラマ「闇金ウシジマくんseason3」

映像でだけ、観たことがあるけれど、生のお芝居を観るのは全員初めてでした。

 

 

舞台は、地方にある縫製工場のオートクチュール部門

 

セットに「ミシン」はなくて、休憩室のワンシチュエーション。

 

テーブル、椅子、冷蔵庫、故障中の電子レンジ、ロッカー、ソファー

 

所長は、かつてはオーダーメイドの紳士服店で職人をしていた、斉藤直(名倉右喬

 

腰が低くて、にこーっと笑いながら、女性の部下たちに「ごめんねぇ」というのが口癖

 

 

 

採用面接にやってきたのが、服飾の専門学校卒業後、かつてはバリバリにミシンを使いこなして仕事をしていた、持田春海(中村貴子・1枚目の写真、右)

 

明らかに、訳あり。片目に眼帯、手には包帯。

 

そこに、短い休憩たのめにやってきたのが、このオートクチュール部門のエースで、仕事の段取りを決めるチーフのような存在の相楽鈴枝(高橋恭子・1枚目の写真・左)と、オートクチュール部門のベテラン、農家の嫁であり、農繁期には休むことも多いけれど、仕事が速いうえに腕も確かな岡村歌子(田中千佳子)。

 

 

 

 

冷蔵庫から、自分の飲み物と、鈴枝は大好物のきゅうりを取り出し、飲みながら、鈴枝が「歌子さん、〇〇、15分で出来ます?」「うん、出来る」みたいに鈴枝が早口で指示を出し、歌子も、それに応えるように、文句も言わずに、受け入れていきます。

 

この導入シーンだけで、各自の性格、仕事内容、関係性がスッと頭に入り、それが全然、説明してます、的な感じがしないし、性格に関してはしゃべり方や表情で分かりました。

 

始まって数分で、これは、面白いぞって、確信持てました。

 

その後、主に独白の形で、実は皆、それぞれが抱えている悩みを吐き出していくんだけど、観てて、感情移入が半端なかったです。

 

歌子さんは、おおらかで、おしゃべりで、すぐに初対面の新人を「春ちゃん!」って呼ぶようになり、

鈴枝さんは、春ちゃんに、この人、仕事出来んのか?って不安

 

契約書にサインすることになった春ちゃん、所長から直接ボールペンを受け取ることも出来ないほどの男性恐怖症。だけど、そこを重たくせずに、笑いに持って行ってました。ふたりは距離を保ちつつ、

 

「あの、ボールペン、投げてください。大丈夫ですから。いつもそうされてたから」

 

春ちゃんは、結婚の条件として、「仕事を辞める」ってことで結婚。大好きだった仕事を辞めたのに、「あぁ、これで、お金の心配しないですむ」って思っちゃっていた自分もいたりして。

 

最初は、ほんと、些細なことだったんです。揚げ物にはソースなんだけど、アジフライだけはお醤油って言われてたのに、間違ってソースを出しちゃったんですよ。

 

そうししたら、味噌汁が飛んできて。

なんか、わかめが口に入っちゃって、美味しいって思っちゃったりして。

なんか、笑っちゃったんですよ。

そこからは、坂道を転がるように・・

 

そして、殴った後は必ずセックス。殴ってはセックス、殴ってはセックス。

あれ?これってよく聞くやつだ。

 

そうして、子供が出来ました。夫だった人も、喜んでくれて、「もう二度と殴らない」って言ったんですけど、

 

やっぱり、ダメでした。

 

区役所に母子手帳もらいに行ったら「おめでとうございます」って言われたんです。えっ?だって、こんな(あざだらけ、包帯だらけ)なのに「おめでとうございます」って。

 

それで、もうダメだって。離婚届を書いて、出てきちゃいました。東京にいるのは怖くて、昔のつてを頼りに、ここへやってきたんです。

 

DV夫の子供を身籠っている。

夫だった人の子が、きのう、初めて動いたんですよ。でも、ちっとも嬉しくなくて。

所長、お子さん、可愛いですか?

その子がお腹にいた時から、可愛いかったですか?

 

可愛いよ、春ちゃんの子供だって可愛い。保障する!

 

鈴ちゃんの場合。

 

鈴ちゃんは、最初、春ちゃんが何度もトイレに行くので、仕事が進まないといら立ってました。

歌ちゃんは、春ちゃんが妊娠してることに気付いてたんだけど、鈴ちゃんは気付いてなかったんです。

 

とにかく、今度来た仕事は、毎年、この時期にオーダーが入る、ベテランデザイナーの作品に取り掛かるのに、懸命です。

 

そんな鈴ちゃん、物心ついた時から、お洋服が大好きでした。でも、小学校6年生になっても、リカちゃんハウスで遊んでいる自分を心配した母親に、リカちゃんハウスを捨てられました。親に理解されない絶望感と孤独。そんな中、出会ったのが「セーラームーン」自分と同年代の子たちが、あんなにキラキラしてる。

 

セーラームーンの衣装を創るようになり、最初は下手くそだったけど、何度も何度も創るうちに腕を上げて、今では、オートクチュール部門のチーフ的存在。

 

今でも、ストレスが溜まって、どうしようもない時は、スマホでセーラームーンの動画を観て、気持ちを落ち着かせているのでした。仕事に対して厳しい表情とは別人。自分が好きなことを母親に否定されたことがトラウマになっているんだろうなぁ。

 

 

お昼ご飯はいつも、きゅうり。お金を節約するためなんじゃないかな、。

 

春ちゃんに「なんで、いつも、お昼、きゅうりなんですか?」と聞かれても、

「美味しいから」としか答えなかったけど。

 

鈴枝は後に春ちゃんのこと、認めるようになり、お昼ご飯の時「きゅうり食べる?あげる」ぶっきら棒に。あと、ある特殊な作業は、以前やってた春ちゃんが一番得意で、「今度、教えて」って、これまたぶっきら棒に頼んでたな。

 

とにかく、最初のうちは、「歌子さん、スミマセン、糸が絡まって、なんか、地獄みたいに凄いことになってて」「なんで言ってくれなかったの!」と、温厚な歌ちゃんにも軽く怒られ、鈴ちゃんには「春ちゃん、無理だと思います」と所長に進言される有り様だったんだけれど、徐々に春ちゃんも仕事に慣れてきて、昔取った杵柄ってやつで、忙しいながらも楽しく仕事してました。

 

ところが、今回のクライアントの担当者が、まぁ、細かいことまでいちいちと指示してくる、面倒な男で。それが、小谷伊織(小笠原佳秀

 

あなたたちは、こちらの指示通りにやればいいんだ。しかも、時間的に無理なことも、どんどんと命令していきます。

 

実は、伊織くんは、10年前に、主人がなくなった、オーダーメイド紳士服店の息子さんで、そこで働いていた、腕の良い職人さんの斉藤さんのことを尊敬してました。

伊織くんが社長では、ここは、もう無理だ。自分には妻も生まれて間もない子供もいる。生活のためだ。と、伊織くんの「ここにいてください」という懇願を振り切って、逃げたんです。

 

所長に対してもタメ口だし、いつも笑顔でハードな仕事をこなす歌ちゃん。

農家の嫁です。子供が生まれて、まだ間もないのに、農作業に出なくてはなりませんでした。キラリって名前の由来知らないんですよ。わたしがまだ病院にいる間に姑が勝手に出生届けを出しちゃったんです。

 

キラリの世話は、姑とばあちゃんがして、もうすっかり哺乳瓶に慣れちゃって、わたしのおっぱい飲んでくれないんです。

 農業だけで、家族6人生活するのは厳しくて、わたしは、農作業だけじゃなく、ここで働くようになりました。

世間では「いいお姑さんよねぇ、仕事をさせてくれて」って言われます。

冗談じゃないってぇの。あのババァの姿、見せたいよ!

 

ささやかな抵抗に、ばあちゃんが趣味で作ってるきゅうりをぱくってきて、鈴ちゃんにあげました。

 

 

独白は続きます。お昼ご飯の、五穀米おにぎりを食べながらの独白。

 

学校では10歳の時、2分の1成人式っていうのをやるんですよ。これまで、どんなことがあって、誰に感謝しているかを言うっていう。

そこには、私の写真は全然ありません。姑とばあちゃんの写真ばっかり。「わたしは、おばあちゃんとひいばあちゃんのおかげで、ここまで大きくなれました」

 

冗談じゃない、子供を返せ!子供を取り返したい。

 

みな、それぞれが、いろいろと抱えながら、生きていました。

 

春ちゃんのお腹がだいぶ大きくなり、最初は計画よりも時間が押してた作業も順調に進み、8割がた完成にこぎつけました。

 

3人の表情が明るい。対照的に、高圧的だった、伊織くんがおかしい。

 

会社からの命令で「引き上げることになりました」

「引き上げるって?」

「もう、この仕事は辞めるということです」

 

「そんな、大変だったけど、ここの服、好きだし、思い入れもあって、一生懸命やってきたのに。訳を聞かせてください」

 

「すいません、かん口令が敷かれているので」

「あやまってください」

 

スーツのまま土下座しようとする伊織。すると温厚な所長が「伊織、その(所長が、まだ伊織くんのお父さんの元で働いていた時に作った背広だったんです)スーツで土下座なんかするんじゃない!」

 

なぜ、直前になって中止になったのか。

デザイナーは70代のおばあちゃん。もはや、新しいアイデアが浮かばずに、

専門学校の生徒の作品を盗作していたんです。

 

感情論だけでなく、お金も問題が発生しました。

材料費は出します。人件費は、たぶん、出ないと思います」

 

えーっ、困る、毎年、この時期は臨時手当が出るから、それあてにして、セーラームーンの全公演、チケット買っちゃった

 

子供と一緒にディズニーランド行って、そのまま、そこのホテルに泊まって、思いっきり甘えさせて、子供を取り戻そうとしたのに!

 

えっ、わたし、子供、産めません!

 

すると、春ちゃんが突然、ぶち切れました。会社に掛け合って、人件費、獲ってこい!

伝書バトじゃないんだろう?!

 

 

最初、農家のおばさんがバイトでやってるなんて、ナンボのもんじゃい、って思ってました。ですが、皆さん、素晴らしい。優秀なミシンでした。

 

 

伊織くん、そそくさと出ていきました

 

それを観て、春ちゃん、「たぶん、人件費、出ないですよ。鈴枝さん、原画ありますか?」

「あるけど」

 

今の作品をリメイクして、こちらから持ち込むってどうでしょうか?!

 

セーラームーン・・制服?

 

制服って、束縛の象徴じゃないですか。その抑圧から解放され、変身する途中のような

 

変身する途中は・・裸だよ・・

 

序盤は、キツい鈴ちゃん、可愛いとこ、あるじゃん

 

 

なぁんて、一瞬は盛り上がったものの

 

無理だよ

 

歌子さんも、あきらめ気味で、テンションが低い

 

 

もうダメだ。

 

 

歌子さんと鈴ちゃんは春ちゃんに背中を向けると、ロッカーから荷物を取り出して、帰ろうとします

 

あの!これから、凄く恥ずかしいこと言いますけど、

 

 

 

わたし、見てました。

 

 

 

 

 

歌子さん、あそこの糸のサイズ、細い糸に、変えてましたよね?

 

 

その方が仕上がりが綺麗だから

 

 

鈴枝さん、工程表に書いてないことまでやっていましたよね

 

 

その方が、効率的だから

 

 

わたし、おふたりのこと、尊敬してます!

 

 

 

ふと振り返る、歌子さんと鈴枝さん。

 

このシーンが、特に好きです。涙腺、崩壊です。

 

この提案に、煮え切らない、伊織くん

 

すると、またも温厚な斉藤さんが

 

「しっかりしろ、伊織!」 

 

斉藤さん(所長)も、伊織くんも一緒にミシン踏んで、なんとか完成させました

 

 

「斉藤さん、腕、落ちましたね」

 

「ん、あぁ、そうだね」

 

「視力が落ちてるじゃないですか?」

 

「・・うん」

 

「糖尿病でしょう?!ちゃんと病院行ってください」

 

「だいじょうぶだよ」

 

「父も、同じこと言ってて、でも、死にました。血栓が心臓をふさいで、一発です。斉藤さん、2度も僕の前からいなくならないでください」

 

 

序盤はひたすらやな奴だった、伊織くん、言い方にはひねくれたところがあるけど、10年前に、自分の元から逃げた斉藤さんのこと、今でも尊敬してるんだなぁ。

 

 

結局、会社を説得させるための手段として、パートのおばさんたちではなくて、伊織くんがデザインとリメイクを考えたことにしました。会社としても、ファッションショーに穴をあけるわけにもいかないという事情もあり、採用されたようです。まぁ、抑圧と解放というコンセプトは、ファッション業界ではずっと昔から使われていたものらしいですが。

 

斉藤所長が糖尿病だってことは、おしゃべりなおばさん(歌子さん)から会社中に広がり、それが斉藤さんの娘さんの耳に入り娘さんが泣かれた斉藤さんは、即、入院。

 

あっ、この娘さんは、中学生で、普段は斉藤さんとは、口をきいてくれない。たまに口きいたら、金の無心だよ。もうね、僕、ATM。

 

春ちゃん「それでも、可愛いんですか?」

「可愛いよぉ」

 

 

夫だった人の子を可愛いと思えず、でも、産むしかないと覚悟を決めた、春ちゃんのお腹は相当大きくなりました。

 

斉藤所長から、3人に、臨時手当が入った封筒が手渡されました。

 

すると、春ちゃんに対しては、冷たく接していた鈴枝さんが、リボンのついたピンク色の袋を春ちゃんに「ハイ!これあげる」って、ちょこちゃこって走り、パッと渡しました。で、すぐに春ちゃんから離れる、鈴ちゃん。

 

いまだに、春ちゃんに冷たくしていたのが恥ずかしいのか、照れですか?

 

開けてみると・・

 

真っ白なベビー服が。

 

 

「すごーい、可愛い。既製品みたい♪」

 

「そりゃ、そうだよ、プロが創ったんだから」

 

「その襟の細かいとこ、歌子さんが創ったの」

 

「けっこういい生地使ってるんだよ」

 

春ちゃん、そのベビー服をお腹に着せるように、両手で持って、フリフリ

 

可愛い?

 

 

それを見ていた、斉藤所長「かわいいよぉ!」

 

 

夫だった人の子、かわいいって思えるようになった春ちゃん

 

そんな春ちゃんを見て、自分のことのように喜ぶ斉藤所長

 

 

芽生えた、友情

 

 

観終わって、心が温かくて、軽くなった

 

とっても素敵な時間をありがとう

 

 

当日パンフレットには、名前が書いてあるという、

こうした心遣いも、嬉しかったです。

 

 

 

チタキヨ、ほーんと、観て欲しい。

本作観た人と、語り合いたい

 

 

最後に

 

 

名倉右喬さん、「闇金ウシジマくんseason3」最終話で殺されちゃたんだけど

同じ部屋で、その直後に殺された、チンピラの柏木役・劇団男魂(メンソウル)の大塩ゴウさんと、死体のツーショット

ここにも、奇跡的な繋がりが。

去年、舞台「ハローウィン」で右喬さんと共演した、元アイドリング!!!の古橋舞悠ちゃんが「わたしはミシン」観に来られてたのですが、

 

舞悠ちゃん、今年「みちこのみたせかい」で、花奈澪ちゃんと 共演。

 

花奈澪ちゃんは、「イノチボンバイエ」で大塩ゴウさんと共演。

 

そして、大塩ゴウさんと名倉右喬さんが「闇金ウシジマくんseason3」で共演、という。