こどもの頃、捕虫網を手に虫を追って野原を走り回ったものです。

 

昭和40年代のはじめ頃のことで、今も住んでいる三篠の町中には空き地がいっぱいあり、あちらこちらにまだドブ川が流れていました。

 

空き地のほとんどは元田んぼか畑だった土地で、今ではそのすべてに民家やビルがすき間なく建っておりますが、当時は草ぼうぼうの野原、昆虫がいっぱいいたのです。

 

家のすぐ横の旧国道沿いはキャベツ畑で、春になるとモンシロチョウがいっぱい飛んでいました。畑のむこうは野原が広がっていて、当てずっぽうに捕虫網を一振りすると、バッタやらコオロギやらがわらわらと叢から飛び出し、四方八方に逃げて行ったのが思い出されます。

 

すばやく飛ぶスズメガやセセリ蝶の仲間は、血を吸われるとか言って怖れたものですが、フワフワと飛ぶ蝶の仲間、特に黒色の大きなアゲハチョウを捕まえるともうヒーローでみんなに見せびらかしたものです。

 

小学校低学年の夏休みに一度、昆虫標本を作って夏休みの宿題としたことがあります。当時運転免許を持っていなかった父親と一緒に、どうやって行ったか思い出せないどこかの田舎でチョウを追いかけた記憶は鮮明で、黒いアゲハ蝶がいたりすると親爺のほうが必死になって追いかけていたのが思い出されます。

 

あの夏の日から50年以上の年月が経った今でも、太田川筋の渓流や里山に鳥見に行くと、想い出がいっぱいの黒いアゲハ蝶が数多く舞っているのが見られます。

 

ヤマセミを待つ渓流沿いに咲く忍冬にはモンキアゲハ

 


すぐそばでクロツグミが鳴いている里山でアザミにクロアゲハ

 

サンコウチョウの鳴き声が聞こえる北方の山中でミヤマカラスアゲハ

 

黒いアゲハ蝶のキラキラ光る青い煌めきが目に入ると、鳥のことなど忘れてしまってついレンズを向けてしまいます。

 

これまで一度だけ見た十頭を超すミヤマカラスアゲハの給水風景、溢れる光の中でいっせいに飛び立ったときに見られる宝石のような煌めきを、ぜひとも写真に収めたいものだと思うところです。