相変わらず身体の自由が利かないので、読書とテレビ三昧の日々です。

 

昨年に続いて今年も『戦』の字が今年の漢字に選ばれそうな今日この頃ですが、一昨日(7日)NHKBSで『特攻4,000人 生と死そして記憶』が放映されました。

 

番組では二人の研究者が出演し、日本軍の記録を元に航空特攻で散った搭乗員たちの本籍地を調べて遺族を訪ね歩き、江田島の術科学校が保管している彼らの遺書、遺品を手掛かりに彼らの心の内面を推し量ります。そして米軍の資料と照合し、艦船に体当たりする瞬間を捕らえた映像から、個々の搭乗員を推定し特定していくのです。

 


番組が作成した特攻で敵艦に体当たりして散った搭乗員の本籍地を示す図(部分)。

 

光点ひとつひとつが一人の搭乗員の本籍地を表しています。

 

航空特攻を敢行して亡くなった搭乗員の正確な数字は、軍の資料が杜撰なために不明ということでしたが、それぞれの光点は資料と戸籍を照合した結果が記されているわけで、研究者の方の労苦は並大抵ではなかったと推定でき頭が下がる思いです。

 

特攻は航空特攻だけでなく、回天、海龍(小型潜水艇による水中特攻)や震洋(小型船舶による水上特攻)なども考案され、本土決戦になった場合には爆弾を抱いた兵員による肉弾特攻の指示が出て、九州沿岸で死ぬ練習をさせられたと写真家・福島菊次郎さんは自伝に書いておられます。

 

サイパン陥落で敗色濃厚となった日本軍の上層部が打ち出したのが特殊兵器と一億総玉砕、東京の安全なところにいる軍上層部が、責任をとるどころか責任を国民に転嫁しているように思えます。

 

『特攻以外で勝つ見込みがないなら潔く降伏すべきだ。』
『開戦に責任のある上官は全部腹を切ってお詫びするべきだ。』
『お前たちみたいな馬鹿がいるから搭乗員もみんな志願するんだ。』
『そんなことをしていれば犠牲はますます増えるばかりだ。』

 

これは特攻を若い者ばかり行かせては申し訳ないと特攻に志願したベテラン搭乗員が予科練の同期の人から罵倒され浴びせられた言葉で、特攻の本質を捕らえた魂の叫びではないでしょうか。

 

番組では最後に、愛する人を戦後70数年を経てなお思い続け、初めて鮮明な恋人の写真を手にして涙する99歳の老婆が映し出されます。

 

彼女の涙の尊さ、美しい心に触れ救われる思いになりました。