「悪役」の反対語を辞書で引いてみると「主役」とか「善役」と載っています。

 

「主役」の反対語は「端役」でしょうと思ったりしますが、もう一つの「善役」は使われているのを見たり聞いたりしたことがなく、一般的ではないような気がしますが他によい語彙が思い浮かばないので以下使ってみることにします。

 

最近は自宅に籠っていることが多いため昔の時代劇をよく観ているのですが、以前主役で善役を演じていた俳優さんが違う番組では悪役だったり、またその逆であったりすることはよくあることです。配役の妙というか、おそらくは監督さんの感覚で決められてるのでしょうが、善悪ともに見事に演じ分けられる俳優さんに感心させられることが多くあるのです。

 

例を二三挙げてみると、awakinの子供時分、小学生のヒーローだったウルトラマンの科学特捜隊でキャップを演じた小林昭二さんは、後年鬼平犯科帳『尻毛の長右衛門』で、若い女に懸想する盗賊の老頭目を演じておられましたし、ウルトラセブンで『ダーン』のモロボシ・ダンを演じられた森次晃嗣さんは、数年後に必殺仕置人『大悪党のニセ涙』で悪人の中の悪人と思えるような極悪人を演じておられます。

 

今awakinがハマっている「木枯し紋次郎」でも、他のドラマではたいてい善役で出演されている俳優さんが、とんでもない悪党だったりして楽しませてもらっています。

 

きょうはそんな善人悪人の両両方を演じられた俳優さんをお一人、東大法学部を卒業後、東宝ニューフェイスで役者の道に入られた平田昭彦さんを取り上げてみたいと思います。

 

第23話「夜泣き石は霧に濡れた」で、紋次郎と同じ故郷を持ち、紋次郎と同じ理由で蒟蒻が食べられない貸元・湯原の勘八を演じる平田昭彦さん。(紋次郎の逆鱗に触れて殺られてしまいます)

 

他の作品に善役で出演されている平田さんの画像を探してみました。

 


映画「ゴジラ」(1954年)で芹沢博士を演じる平田昭彦さん

 

ウルトラマンでゼットンを斃した岩本博士を演じる平田昭彦さん

 

鬼平犯科帳’80 第18話『妖盗葵小僧』で若年寄・京備前守高久を演じる平田昭彦さん

 

鬼平犯科帳のテレビ版は1969年に始まり、主役の長谷川平蔵を八代目松本幸四郎さん、丹波哲郎さん、萬屋錦之介さん、二代目中村吉右衛門さんの4人の役者さんが演じておられます。

 

鬼平の上司にあたる若年寄が京備前守高久なのですが、丹波哲郎版(鬼平犯科帳’75)と萬屋錦之介範版(鬼平犯科帳’80)の2シリーズで、この役を演じているのが平田昭彦さんなのです。

 

主役の平蔵が替わっているのに上司の若年寄役が替わらずそのままなのは理由があり、鬼平犯科帳を書いた池波正太郎さんが、1984年に平田さんがお亡くなりになった後、次のように書き残しておられます。

『主役の平蔵が替っても、この人の備前守は私が変えさせなかった。それというのもこの人の身についた気品が、いかに当時の大名にふさわしかったからだ。この次の平蔵は誰が演るか未定だが、平田さんの京極備前守はうごかぬはずだったのである。』    

                          (池波正太郎の銀座日記)

 

因みにこの後の鬼平犯科帳は1989年から放映され、長谷川平蔵を二代目中村吉右衛門さん、京極備前守を仲谷昇さんが演じられました。