中学生の頃はラジオを聴きながらよく勉強していましたが、歌謡曲の歌詞などわざわざ覚えようとしなくとも数回ラジオから流れるのを聴くだけで自然と口ずさめるようになっていたものです。

 

ところが最近は歌詞カードを手に何度も繰り返し覚えようと努力しても全然歌詞が頭に入って来てくれない。それどころか数年前まで一緒に働いていた同僚や最近知り合った鳥友さんの名前が咄嗟に出てこないことがあり、我ながら驚いてしまいます。

 

そんな記憶力の減退を痛感している昨今でも勉強する意欲は失いたくないものです。勉強と言っても勉強のための勉強(資格をとるための勉強)ではなく、『知らなかったことを識る喜び』を日々意識しながら生活するくらいの軽い?勉強と言ってよいでしょうか。

 

そんな知的好奇心をくすぐる喜びを、先日訪れた植物公園で何気に出あったカジノキが与えてくれました。

 

 

 

樹液を巡るせめぎ合い

 

1頭のルリタテハがひらひら舞っているのに気がつき、よい被写体が現れたと追っかけているとこちらの木に停まりました。

 

キイロスズメバチが2頭が先客でギョッとしましたが、彼らは樹液を吸うのに夢中なので危険はないと判断してしばらく観察してみました。

樹液が出るのは黒く見えている穴からのようで、ルリタテハは盛んに翅を閉じたり開いたりして雀蜂を牽制します。そのたび蜂は驚いて素早く後ずさりするのでその隙に蝶が採餌しておりました。最後は業を煮やした蜂が本気を出して蝶に体当たりして追い払ってしまいました。

 

この蝶と蜂が停まっていた樹木がカジノキ(公園が名札を掛けてくれていました)でした。

 

これまでは目に入っても何でもないその他大勢の木に過ぎなかったのが、樹液を出して蝶や蜂が来る木とわかり、好奇心が湧いたのでちょっと調べてみました。

 

自宅にある「よくわかる樹木大図鑑」には樹液が出る木の記載はありませんでしたが、カジノキのカジは梶と書き、広島には安芸太田町に梶ノ木という集落があり、広島市近郊にも梶毛ダムがあって、梶という字にはなじみかあっても字の元になった樹木がどんな木かちいとも知りませんでした。

 

ネットで検索してみると、クワ科コウゾ属の落葉高木で枝の繊維が和紙の原料として利用されているそうで、かのシーボルトも標本を欧州へ持って帰ったものの同属のヒメコウゾと混同して誤った学名をつけたものが今もそのままになっているそうです。