芸北に聳える美峰刈尾山の麓に、千町原と呼ばれる広々とした草原が広がっています。
かつては湿原だったところが、長年広島県によって開発され、大規模な草地になっており、現在は薄野となっているのです。
草原の片隅には一部湿原が残されていて、木道のそばには植物学者の牧野博士の句碑が建立されています。
博士が八幡湿原に足を運んだのは、昭和の初め頃のことですが、牧野博士が若い頃に植物採集でよく訪れたという、 高知は仁淀川流域の横倉山山中には、光るキノコであるシイノトモシビタケが生えているそうです。
awakinは刈尾山にまだ登ったことはないのですが、登山口のある千町原から眺める山は秀麗で、野生動物と遭遇する恐れがある夜間、山麓に広がっているブナ林の中では、もしかすると四国と同じような、光に満ちた世界が広がっているかもしれません。
ガスに包まれた掛頭山を背景にして、原野のような風景が広がっています。
右手に白く熊注意の看板が見えているあたりが句碑の建っているところで、茂みの手前に小規模ながら湿原が残されているのです。
どちらも、かつては広島市の近郊でも珍しくない光景でありました。
武田山とか火山などに登ると生えているのは松ばかりで、縦走路などは枯れた松葉の上を歩いて進むようでしたし、祇園町の山本から己斐の峠へ抜ける(当時)未舗装の林道沿いにはススキがずっと生えていて、お月見のときには車で取りに行ったものです。
でも、21世紀の現在、松の木はマツクイムシの害を受け、大きく成長した健康な木は近郊の山では一本残らずなくなってしまった感がありますし、放水路の河川敷などでも見かけていたススキの穂も、今では見ようと思っても簡単には見られなくなってしまいました。
ここ千町原がかつて湿原であった証拠ともいうべき植生でしょうか。
コンクリートで護岸されている川の周囲の湿った場所では、サラシナショウマの群生が見られます。
護岸や川底というか、流水が見えないほど種々の草が繁茂しています。
目立っているのは、黄色いオタカラコウでしょうか。
他にも、ミゾソバが群れていて。紅っぽいのはツリフネソウ、少しむこうの紫色は水口谷湿原のハンノキ林の中では薄暗い場所に群れているタンナトリカブトであります。
ここでは湿原を追い出された植物たちが、湿り気のある場所に集約されたような光景が広がっているのです。

