先細りする物日・仏花、シニアに頼らざるを得ない花産業 | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明が『ウダウダ言います』、『まだまだ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『もう少しだけ』発信します。

11月6日の大日本農会農業懇話会には、遠方からも、たくさんの花関係の方々がご参加いただきました。

厚くお礼申しあげます。

会場が狭く、ご迷惑をおかけしました。

また、バタバタしており、せっかくの機会でありながら、ゆっくりお話ができず申し訳ありませんでした。

 

今回のお題は、またまた耳にタコ、
「先細りするとわかっていても、物日、シニアに頼らなければならない花産業」です。

画像 「耳にタコ」ピアス

 

花のマーケットがどんどん小さくなり、令和になっても下げ止まりそうにありません。
マーケット規模の指標のひとつが、市場取扱高(図1)。
1998年(平成10年)をピークに、下り坂がつづいています。
1998年の5,675億円が、2018年には3,468億円。
20年で2,200億円が消え、マーケットは40%縮小。
もちろん、市場取扱高だから、市場外で流通する輸入が増えたことも一因。

図1 花市場取扱金額

    1998年から減る一方、下げ止まる様子はない


その小さくなったマーケット、

ますます物日とシニアへの依存が高まっています。


図2は、おなじみの月ごとの市場入荷量(なにわ花いちば、鶴見花きが入場する大阪鶴見花き地方卸売市場2015年)
月平均入荷量を0としたときの、各月の入荷量比率。


図2 月ごとの市場入荷量(大阪鶴見花き地方卸売市場2015年)。

    年間の月平均入荷量を0としたときの、各月の比率。

    青は平均より多い月、赤は少ない月。

 

平均より多い月は3月、8月、9月、12月の4回だけ。
春彼岸、お盆、秋彼岸、年末・迎春の物日。
しかも、年々物日のウエートが高まっています(図3)。
これは物日に、さらに花が売れるようになったのではない。
物日以外に花が売れなくなって、物日の比率が高まっただけ。
極論すれば、花は物日以外には売れていない。

図3 物日月(3月、8月、9月、12月)の入荷量比率の変遷

   年々物日の割合が増加

    (東京都中央卸売市場7社)
 

物日の中身を検証したのが図4。
図3は売る側から見た物日(市場入荷量)。
図4は買う側から見た物日(総務省家計調査による月ごとの切り花購入額)。
物日にしか切り花は買われていないことは同じだが、1977年、1990年、2018年を比べると、物日の変化がわかる。

図4 切り花の月別購入額の1977年、1990年、2018年の比較

    春秋の彼岸、お盆の比率が高まり、年末(正月)が減っている

    (総務省家計調査)


春彼岸、お盆、秋彼岸の割合は増えているのに、年末・迎春が減っている。
つまり、彼岸、お盆の仏事は増えているのに、お正月の慶事が減っている。
墓参りなどはめっきり減ったように感じますが、相対的な比率は増えています。
一方、お正月の行事は確実に減ったようです。
イベントとしてのお正月の地位が下がったことは疑いようがありません。
餅つき、凧あげ、羽子板、カルタ、お年玉・・
大晦日、除夜の鐘・・
こたつ、みかん、紅白歌合戦・・
エプロンを着た母がつくるおせち料理、お雑煮・・
床の間に飾る生け花、松、千両、菊・・

仏花は健闘、迎春は苦戦。
「風の中のスバル
 砂の中の銀河
 みんなどこへ行った 見送られることもなく~」


 

花産業を支えるもうひとつの柱がシニア。
図5もおなじみの総務省家計調査。
切り花と園芸植物・園芸用品(鉢もの、苗もの、プランター、土など)の年代別年間購入額。
切り花購入額、
29歳以下2,158円。
70歳以上11,196円。
70歳以上は29歳以下の5.5倍の切り花を買っている。
園芸植物・園芸用品では12倍。
シニアに支えられている花産業。


図5 年代別(二人以上世帯)の切り花、園芸植物・園芸用品購入額

    若い世代は低く、シニアは高い

   (総務省家計調査2018年)

 

 

花産業のとるべき道は明らか。
物日=仏花とシニア
・物日には安定供給。
・仏花には国産榊(サカキ・ヒサカキ)の復活。
・シニアには接客でリピータになってもらう。

しかし、これは当面の策。
物日・仏花もシニアも将来は先細りが確実。
伝統行事はいつかは廃れる。
家庭に神棚、仏壇がない。
墓参りが減った。
見舞いの花を禁止する病院が増えているように、お墓に生花を禁止する墓園もあらわれた。
仏花、迎春の花束にホオズキや笹の造花が入るようになった。

シニアは花を買ってくれているが、シニア予備軍(現在の40歳代、50歳代)は、いまほど買ってくれないだろう。


物日・仏花、シニアに頼り切ることは花産業の衰退につながる。
ゆでがえる状態の緩慢な終焉。
それがわかっていても、物日・仏花、シニアに頼らざるを得ない花産業。
今日を生きぬき、明日をむかえることに全力をそそぎましょう。

 

そのあとどうするか?
正攻法しかないでしょう。
物日に仏花が売れ、シニアが花を買ってくれているうちに、次の需要を創りあげる。
フラワーバレンタインも花育も10年。
成果、活動を検証して、次の行動につなげる。
検証を「それ見たことか」で終わっていたら、次につながらない。
「だれが鉛筆を持つか?」
花産業のあなたであり、わたしです。
まずは、11月22日、「いい夫婦の日」。
すくなくとも全国の花屋さん、のぼり、ポスター、ポップなどでお客さまにお知らせをしましょう。

 

感謝 ブログ「まだまだ言います」200回。

2016年1月3日に再開して4年、今回2019年11月10日で200回になりました。

(前ブログ、「ウダウダ言います」の262回を合わせますと462回)

毎週、日曜日夜にアップ、長文駄文であるにもかかわらず、たくさんのみなさまにおつきあいいただきましたことに、感謝申しあげます。

 

宇田明の『まだまだ言います』」(No.200. 2019.11.10)


2015年以前のブログは

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