わたしはわたしの好きな人とは仲良しになれない。

あの人が趣味の読書によって得た沢山のボキャブラリーの繋ぎ合わせで他人と笑い合うその空間にわたしは存在しえない。

あの人が大衆の前で自分の友達の話をする時のようにわたしの事を好きだとか会いたいだとかそんなふうに紹介することもきっとない。

けど、それでいい。


あなたはわたしの目を見て「可愛い」と言う。わたしに触れて「癒しだ」と言った。疲れちゃって会いたくなっちゃってさ、そんなふうにぽそりと言っていた。

あなたはよくわからない。

前は、「これからは普通に会おう。連絡して。俺が元気なときなら来て。」と言っていたのに、今では「いつでも来て」と言ったり、「疲れて会いたくなっちゃってさ」などと言ってのける。けれど、わたしといる時だれかがあなたの家に訪れてくるのを恐れている。


ほんとうにわたしをよく振り回してくれる。


けど、それでいい。

あなたを失うより怖いものなんてなくて、あなたの瞳にわたしが映らなくて、わたし以外のだれかが映るなんてことより嫌なことなんてないから。



大好きで堪らない。

あなたの顔や身体、声、読書家なところ、沢山考えてしまうくせに色んな人とすぐに仲良くなれてしまうところ、他人を大事にしようとするくせに自分が大事に出来なくなって逃げるところ、それで傷つくところ、よく物を落とすところ、時間や物を忘れるところ、身体をあちこちにぶつけるところ、睡眠時間が少ないと精神や身体に悪影響が出てしまうところ、意志が強くて頑固頭なのにそういう弱さがあるところ、周りと被りたくないからと持ち数は少ないのにいざ服を買う時は高めの服を買うところ、でもデザインは変なところ、かと思いきや古着チックでたまにオシャレなものを着ているところ、でも着られればなんでもいいからとやっぱりヘンテコリンな着合わせをしたりすること、わたしがあなたが他のだれかと出かけるだとか、部屋に遊びに来るだとかその話題を出すとなにを考えているのかわかるようにふんふんと言いながら笑うところ、やきもちをやいているんだなと言いながら頬を触ってくるところ、身体の向きを変えると可愛いと言いながら距離を詰めてくるところ、あなたで苦しくなってわたしが声を出すと、わたしの口を手で塞いでくるところ、あの時このままあなたに殺されてもいいと思った。わたしの最期の記憶があなたなら、冥土の土産にも困らなくて済む。けれどもしこれをあなたに言ったら、あなたは嫌な顔をするだろう。

あなたの心に持ち主である自分の命に勝る他人への感情が愛であるなんて馬鹿げた考えはなくて、

だって

あなたの心は すごく真っ直ぐで綺麗だから。



いつだって私の頭の中にはあなたがいる。

私はあなたが大好きだ。本当に大好きだ。

あなたにとっての私は治癒や治療にすぎなくて、それはもはや一種の崇拝かもしれない。

恋愛感情でなかったとしても、あなたが私を見つめてくれる時間がこれからも得られるなら私は喜んであなたのそばに居る。

そばに居られなくともあなたが私を好きで、私もあなたを好きでいていいなら私はあなたが望む姿にだってなるし、あなたが嫌がる私なら完璧に殺してみせる。


だってあなたのことが大好きだから