2023年9月20日から始まった秋接種、これを勧める厚労省は、消費者契約法や景品表示法に抵触するような手口まで使って、接種勧奨をしています。このことについて消費者問題の一つとして論考をまとめました。

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行政機関による優良誤認、不利益事実の不告知について

 はじめに

 景品表示法では、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示(優良誤認)を禁じている。また、消費者契約法では、消費者にとって不利益となる事実を告知しない(不利益事実の不告知)により、当該事実が存在しないと誤認して契約した場合、これを取り消すことができるとしている。いずれも、事業者がこれらを行えば法に抵触する。

 

 一方で行政が、優良誤認や不利益事実の不告知に抵触する行為を行った場合、三権分立による司法のメスが入るべきだが、取り締まる側の行政機関による行為は、まさか行政がそのような不正を働くはずがないとの、前提により、違法性が認識されにくい傾向がある。行政による優良誤認や不利益事実の不告知による消費者(国民)被害をなくすには如何にすべきか、事例を基に考察したい。

 

 

行政機関による優良誤認、不利益事実の不告知

 厚生労働省は、第50回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(令和5年9月8日)にて、令和5年8月31日医薬品審査管理課文書「1価(オミクロン株XBB.1.5系統)のコロナワクチンの審査結果について(コミナティRTU筋注等)」を公表した1)

 

 同文書には、マウスを用いた追加接種(4回目接種)で誘導された中和抗体価として以下(図1)のグラフが掲載されている。


 中央の赤枠が、XBB.1.5の1価、
 左がWT(武漢)とBA.4/5の2価、
 右がBA.4/5とXBB.1.5の2価のワクチンで、
それぞれ誘導される中和抗体が棒グラフで示されている。 同文書は、これで、BB.1.5 1価ワクチンでXBB系統の中和抗体の誘導が確認されたとして9月20日からの秋接種への使用を承認した。

 確かに、XBB.系統の抗体は、左右の2価ワクチンよりも多く誘導されている。しかし、最も多いのは武漢株(Wuhan)、次いでBA.4/5の抗体である。

 更に注目すべきは、このグラフの縦軸が対数であること。これを常数グラフにすると、以下の通り、桁違いに誘導されるのは武漢、次いでBA.4/5であり、XBB.系統は微々たるものであることが一目瞭然だ。

 

 対数グラフは、その性質上、とるに足りない極わずかの差を大きく見せ、値の大きな部分の大きな差を小さく見せることができる。よって、対数グラフに不慣れな一般消費者は実態よりも優良であると誤認する可能性が高い。

 

 厚生労働省は、ホームページの新型コロナワクチンQ&Aで、「オミクロン株対応1価ワクチンの接種にはどのような効果がありますか。」に対し、「オミクロン株対応1価ワクチンの接種により、現在の流行株であるオミクロンXBB系統に対して、これまでのオミクロン株対応2価ワクチンよりも高い中和抗体価を誘導することが報告されており、重症化予防効果はもとより発症予防効果の向上が期待されています。」と答えている(以下参照)。

 ホームページでは、武漢株抗体がXBB.系統より遥かに多量に誘導されている事実を伝えておらず、既にXBB.がEG.5(エリス)に置き換わっていることについても触れていない(不利益事実の不告知)。

 

 さらに、通常の薬事承認では、医薬品の安全性と有効性が臨床試験で〝確認〟されなければ承認されないが、新型コロナワクチンは〝期待〟レベルで承認されている。これは、あくまでも緊急時の特例措置で、既に5類に移行している感染症に対し、非臨床検査(マウスによる試験)のみで急ぎ承認する必要があるのかも甚だ疑問である。しかも一般消費者は、〝確認されている〟と〝期待されている〟の明確な意味の違いを認識できていない可能性が高い。

 

 厚生労働省はこのほかにも、被害救済制度により2023年9月22日の段階でコロナワクチンの接種後死亡を269件認定しているが、これをホームページの「審議会・研究会等」という非常にわかりにくいところに公開しており、積極的に国民に知らせようとしていない3)

 また、あろうことか都道府県にメールで申請・認定件数の公表を控えるように指示していたことも判った4)

 

 

行政機関による優良誤認、不利益事実の不告知等への対処

 消費者市民社会の構築に際し、消費者に最も必要な資質はクリティカルシンキングと言われている。これまで、ネットやうわさ話などを鵜呑みにしないよう、ネット情報は、「go.」がついているものが、信ぴょう性が高いと考えられていたが、これを改めなければならない。今後は、行政の情報についても、以下のような対処が必要と考えられた。

 

①恐怖や不安、高揚感に囚われているとき(大脳辺縁系優位)は、判断を誤りやすいので理性が戻るまで判断しない。

 

②権威を鵜呑みにせず、客観的なデータと事実に基づき自分の頭で考える。

 

③根拠のある情報として、日本の行政・マスコミだけでなく、世界各国の情報も参照する。

 

④1つの事実だけでなく、複数の事実から大局的に考える。

 

⑤絶対正しいと思い込まず、反対意見にも耳を傾ける。

 

⑥誰が正しいかではなく、何が正しいか考える。

 

 以上、行政による優良誤認や不利益事実の不告知が行われている現状を鑑み、今後の消費者行政、消費者教育の抜本的な見直し、改革が必要であると問題提起したい。

 

 

注1)001144218.pdf (mhlw.go.jp)第50回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会参考資料1

 

注2)オミクロン株対応1価ワクチンの接種にはどのような効果がありますか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

注3)疾病・障害認定審査会 (感染症・予防接種審査分科会、感染症・予防接種審査分科会新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査部会)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

注4)【健康被害救済制度】新型コロナワクチン 過去45年間全てのワクチン被害認定数累計を超える~厚労省は「申請・認定件数の公表を控えるように」都道府県にメール~ - サンテレビニュース (sun-tv.co.jp)