クチナシ(山梔子・さんしし) | 森中あゆみの「山と薬膳で、ココロとカラダをまるごと養生♩」

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クチナシ(生薬名:山梔子さんしし) アカネ科クチナシ属


寒・苦・肝・心・肺・胃・三焦

*瀉火除煩(臓器の火熱症状を鎮め、イライラを改善)

*清熱利湿(熱を取り除き、利尿により湿を排除)

*涼血解毒

*涼血止血


**心病み、不安、汗、渇き、黄疸、血尿、尿痛、血熱による吐血、目赤腫痛
**禁忌:脾虚の軟便や下痢には用いない(寒・苦で胃を痛める)


***完熟した果実を、11月頃霜が降りた後に採取、数珠つなぎにして風通しの良い

    場所で乾燥させて利用する。


乾燥させたクチナシの実は市販されていて、半分に切ったりして、さつまいもを一緒に

煮て、栗きんとんを作ったり、たくあんの色染めに今も普通に利用されている。


道路の脇や公園によく植えられていて、花期には、(上品という人もいるけれど、むしろ)

妖艶な系統の甘い香りを漂わせる。野山にも思った以上に生えていて、気づくのは案外

においのない実がなる晩秋。低山にはえるので、夏の暑い花の時期でなく、晩秋のさわ

やかな時期に近くの山に登って、強烈なオレンジ色の実に気付くというパターンが多い。


実が熟しても割れないので「口無し」から命名されたとか。普通なら、熟して口が割れ、

鳥や虫たちに種を運んでもらう、という植物は多いが、クチナシは開かない。

その形態に、象形薬理の考えが生まれる。


中で熟して行き場を失ったエネルギーが鬱している感じ、実の色まで熱っぽくなって、

いかにも鬱熱を想像させる。また山梔子の梔の木へんをとった文字は、取っ手のついた

盃(酒器)を意味するそうで、ならば中身はお酒。お酒を飲んだら温かくなることから

やはり熱を想像させる。



羽突きの羽のような形の実。先端にガク片の名残が伸びているのが特徴。

なんと、将棋の碁盤の足は、この実を形どっているのだそう!横で見ている人へ、口無し

=口出し無用!という意味があるそう笑!!


お正月の栗きんとんや、たくあんなど、黄色の色づけに用いられる。


輪島の朝市でのお楽しみの一つ、えがらまんじゅうは、クチナシの実で染めたもち米の

おまんじゅう。栗のイガに似ていることから、訛ってえがらまんじゅうになったそう。

えがらまんじゅうはもともと、加賀の前田藩ゆかりの五色生菓子のひとつ。今も婚礼など

祝いの場でふるまわれるのだそう。五色のお菓子が、日月海山里を表し、森羅万象、

五穀豊穣、そして五色と聞けば想像通り、肝心脾肺腎を象徴しているという。


写真がないけれど、この山梔子の染め物は、皇室にも関係があると知った。


今上天皇のご即位で、「黄櫨染」という特別な色の存在を知った人は多いと思う。禁色

といって、この人しか着ちゃダメというお色。櫨(はぜ)と蘇芳で染め上げた特別なもの。

一方、天皇ご即位前の皇太子時代にお召しになっておられたのが、この山梔子で染め

られた「黄丹」(おうに)。

パワーをみなぎらせ、いよいよ成熟なさった皇太子が、黄丹から黄櫨染の衣に・・・。

クチナシの話を勝手に当てはめて、一人納得している私です。



《漢方の考えに沿った病気の見立ては素人レベルでは難しいです。生薬としての利用は

お控えください。》