原稿書き ~ブータン~ | 森中あゆみの「山と薬膳で、ココロとカラダをまるごと養生♩」

森中あゆみの「山と薬膳で、ココロとカラダをまるごと養生♩」

「世界の国の人と自然」を愛するヨメが
「岩と雪と氷」を愛したダンナと
日々のつれづれを発信します。

2005年11月29日 

 

 

高嶺会の原稿仕上げ・・・。 

 

 

~・~・~・~・~・~

 

一昨日ツェリン来日。彼との出会いは昨年3月、ブータンのトレッキングとお祭り16

間のツアーだった。


開国以前に入域した中尾佐助先生は「秘境」と、1960年代に農業開発に功労された

西岡京治氏は「神秘の王国」と冠したブータン。世に知られていなかったブータンは

日本にとって、まさに辺境の地であったことだろう。


ブータンへは9年ぶりの再訪。他のアジア諸国の悪例から、急ぎすぎず緩やかな

成長を唱える国だが、はたして、9年の歳月はやはり長いよう。一握りの集落だった町は

谷底いっぱいに広がりを見せ、シャレた店が立ち並んでいた。交通量も多くなり、現在

ブータン初の二車線高速道路を建設中。インターネットの発達で情報はあふれ、

現代っ子がたむろしていた。


私たちのガイド、ツェリン君も品よく民族衣装を着た際の純粋な表情と、ジーンズに

履き替えた後の顔が違って見える。素朴なブータンにはないと信じ込んでいた「本音」と

「建前」を感じ、軽いショックを受けた。


しかしツアーを通して垣間見る彼の人柄に、私は疑念を改めることが出来た。温厚で 

優しい人柄は外国人に門を閉ざすタクサン僧院の僧侶の心をも動かし、幸運にも 

特別に拝観許可を得、至福のときを過ごした。


僧院で、昨春ご子息を病気で失ったお客さまが声を押し殺し涙しながら祈っておられた。

ご子息にツェリンがそっくりだという。その方の姿を見て、現代っ子のツェリンが目に涙を

ためて、バターランプに灯をともした。 


ツェリンは幼い頃に母を亡くしていた。互いの目は自分の母を見、子を見ていた。転生

輪廻を信じるこの国で、失った我が子に似た人物に出会えたこの事実がはたして偶然

なのか・・・。「奇跡」という言葉がふと浮かんだ。


帰国後も私はツェリンとメール交換を繰り返し、彼の心温まる人柄にブータンそのものを重ねて

いる。


9年という歳月は町を大きくし、いろんな俗世間を取り込み、緩やかながらも確実に成長していた。

・・・が、人の本質、国が持つ荘厳な雰囲気などは変わることなく、脈々と世代を超えて継がれて

いくことだろう。現代人の心の秘境、不思議な魅力に満ち溢れた、まさに神秘の王国ブータン。

   

昨日一児の父となったツェリンとの再会が待ち遠しい。


ブータンの聖地、タクツァン僧院の拝観を許された。火事で焼失し、再建の最中で、中の

仏像はまだ彩色されおらず、白木のままだった。


パロのツェチュ
副都市パロで行われるブータン最大のお祭り。5日間開催され、ハイライトの最終日

には1万人を動員するという・・・。


私達も最終日に合わせて組まれたツアーだった。夜中の2時に会場スタンバイ、国宝の

大トンドル(仏画)開帳に臨んだ。


拝むだけでもご利益があるというこのトンドルに結縁する人が、もめることなく列を作る

姿に、この国の品の良さを感じた。


やがて空が白みだす頃、トンドルは巻き上げられ、再び、1年の眠りについた。



ブータン最高峰のチョモラリ(チョモラリBCのジャンゴタンより撮影)

鋭鋒ジチュダケ

国獣ターキン


お祭りのために着飾った女性たち。皆さんが着ておられるキラという民族衣装は、絹

織物が殆どで、とても高価なもの。おうちにながもちがあり、そこにしまっておられる。


ブータンは周囲に海がなく、ヒマラヤに隔てられ、交通網が限られている。決して裕福な

国とは言えない。それでも着るものにお金をかける、という民族意識が素晴らしいと

思った。


いやいや、そんな上から目線では失礼だ・・・。

GNP(国民総生産)よりGHP(国民総幸福量)を重んじるブータンの方がはるかに豊かに

暮らしている。敗北感すら覚える・・・。


現代人の心の秘境。かくも気高いヒマラヤの小王国ブータン。

何度でも訪ねたい国だ。