本日8月25日は突然段ボールの兄、蔦木栄一の命日である。
2003年、肝硬変により逝去。享年49歳。
実は僕が初めて買ったヘンな音楽、すなわち前衛やアンダーグラウンドな音楽のCDというのが
FRED FRITH&突然段ボールのライブ盤だった。 今から19年前、22歳の時である。
それまで学生の頃はギターやベースの速弾きが好きで、所謂テクニック至上主義の楽器小僧だった。
イングヴェイ、インペリテリ、ディ・メオラ、ジェフ・バーリン、ジャコ、プリズム、櫻井哲夫…
バカテクのソロが目当てで主に様式美メタルやフュージョンを好んで聴いていた。
僕は高2で楽器(エレキベース)を始めたのだが、その時から急にロックを毛嫌いするようになった。
テクもないのにカッコ付けてるだけのロックン・ロールを激しく嫌うようになった。
今思えば単に偏屈だったのだ。 まぁ、今もロックン・ロールは苦手だが…
そしてテクばかりを追求するうちに楽器のプレイアビリティ、特に弦高の低さをシビアに追求し
自分で調整や改造する等、演奏以上に楽器自体に興味を覚え素人なりに研究するようになった。
いつしか改造オタクになりその結果、大学中退後リペアの学校に通うことになるのだが…
前置きが長くなってしまった。
僕がフレッド・フリスの名を知るきっかけとなったのがギター・マガジン1992年4月号。
リペアの学校を卒業してすぐの頃だ。 (因みに卒業後の就職口は無かった。)

当時毎月買っていたギター・マガジンだが、奇妙な改造ギターの写真に目が留まった。
白井良明のギター・コレクション紹介ページの1番最後に載っていたジャンクのようなギター…

フレッド・フリスを真似て改造したギターだと書いてある。
ところでフレッド・フリスって誰?
ヘッド側にもピックアップが付いていて、これで一体どのような演奏をするのか?
とにかく気になって気になって、音を聴きたくて仕方がなかった。
何も分からずに、とにかくフレッド・フリスのCDを買いに行こうとCD屋へ走った。
のちにバイト入社~社員になり18年間勤めることになるCD屋へ行って買ってきたのがこれ↓


「アヴァンギャルド/ジャンク/ノイズ」というコーナーにフリスのCDが5枚ほどあった。
当然どれを買えばよいのかも分からず、とりあえず1番怪しげなジャケットのを買った。
帰って早速聴いた。
物凄い衝撃を受けた。
栄一の足踏みオルガンによる持続する不協和音。 そしてとぼけたドラム。
その空気を切り裂くような俊二とフリスのアヴァンギャルドなギター。
ギターといえばコードやメロディーを弾くものと当たり前に思っていたことが見事に覆された。
一般のギター演奏でいえばミスの音、擦れたり不意に当たったりした時に出るノイズの音。
それらの音で構成されたような音楽であった。 とにかく奇妙な音ばかりが展開されていた。
当時の僕はインプロヴィゼーションという音楽があることを知らなかったのだ。
この時、いっぺんに自分から“テクニック至上主義”という言葉が音を立てて崩れ落ちた。
一瞬にしてテクニック至上主義の考えをかなぐり捨てた。
そしてこの怪しげで未知の世界に大いなる魅力と希望を見つけたのだった。
念のために断っておくがフリスはテクニックを持っているギタリストである。

内ジャケットの写真も実に怪しげでありイマジネーションを掻き立てられた。
しかし、問題の改造ギターは写っておらず、ここで使われているのかどうかは分からない。
その改造ギターの演奏を確認するのはさらに数年後、知人から借りたビデオを観てからなのだが…
因みにそのビデオとは、フリスのドキュメント映画の名作『STEP ACROSS THE BORDER』である。
04:50辺りから見て頂きたい。
長くなってしまったが、このCDこそが僕が前衛音楽に目覚めるきっかけとなった1枚だ。
音楽性が180度変わり、以後の人生を変えたとさえ言えるほどの影響を与えた作品だ。
この後、フリスから一気に視野が広がった。
ネイキッド・シティでジョン・ゾーンを知り、ヘンリー・カウからカンタベリーを聴き、といった具合だ。
しかし、突然段ボールにはまるのはもう少しあとのことだった。
突然段ボールとは蔦木栄一・俊二の兄弟を中心に1977年に結成されたバンド。
僕が突然段ボールにはまりだしたのは1995年の『スーパー』以降だったと思う。


それまでの蔦木兄弟2人にチコ・ヒゲ、モーリー・ロバートソンを加えたバンド編成による作品。
けど、それまでのデュオに比べ僕にはロックっぽくて普通に聞こえてあまり好きではなかったが…
この時に過去作品も入手可能なものは買い揃えた。

1st『成り立つかな?』と『抑止音力』が今でも特に好きな作品だ。




突然段ボールはフリクション等でおなじみのPASS RECORDSからデビューしたため、
東京ロッカーズ周辺のパンク・バンドと一緒に語られることも多いがその音楽性は少し違う。
少しどころかそのルックスからも察する通り随分と違う。
しかし上っ面だけの格好だけのパンク連中よりずっとパンクである!
まぁ、分かる人であれば音と歌詞を聴いて頂ければ瞭然である。
今やYouTubeで簡単に音や映像が見られるので僕の説明なんて無意味だろう。
繰り返される「くだらねえ××」というフレーズが実にパンクだ!
JOJO広重のブログの8月4日の「蔦木さんのこと」という記事もチェックしてみて欲しい。
アルバム『不備』がアルケミーからリリースされた経緯等も綴られている。


結成20周年記念盤『アイ・ラブ・ラブ』はベスト盤としても聴ける好盤。
それまでの未CD化音源、未発表曲、オムニバス参加曲等をまとめた3枚組。
蔦木兄弟自らによる曲解説を読みながら聴き進めていくととても楽しい。


イカ天に出演し演奏された「凍結」も収録。
因みに動画がYouTubeにアップされている。 ファンならご存知であろう。
素晴らしい!! 時代を超えて激シブだ!!
しかし伊藤銀次のコメントには時代を超えてイライラさせられる。
兄・栄一亡き現在もなお弟・俊二を中心に精力的に活動している突然段ボール。
しかし僕は栄一没後の初の作品であるミニ・アルバム『お尋ね者』以降はほとんど聴かなくなった。
栄一がいなくなったのと、バンド編成になりデュオの頃とは趣が大きく変わってしまったからだ。
最初期のトリオの頃とも全く違っている。 何だか普通にロックっぽく聴こえてしまうのだ。


けど今日、この記事を書いてたらまた突然段ボールを追いかけたくなった。
とりあえずまだ買っていない2枚の新作、『純粋で率直な思い出』と『D』を買おうと思う。
(以上、敬称略)
取り留めなくあまり内容のない文をダラダラと書いてしまいました。
ただCDを聴きながら拙文を綴り栄一氏を偲びたかっただけなんです。
突段ファンの方が偶然にでもここをご覧頂き共感して頂けたら嬉しいなと思い書きました。
お付き合い頂きまして恐縮です。
最後まで読んで下さって有難うございます。
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