もはや殺人者の音楽ではない… バーズム『ベリウス』 | 愛しのジャンポール

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CDBURZUM“BELUS”



みなさまはブラックメタルという音楽をご存知だろうか?

ブラックメタルは“海賊の国”ノルウェーを発祥の地としスカンジナビアで1990年頃にシーンが確立。
反キリスト、悪魔崇拝、人種差別主義等の思想に基づくバンドが多く、教会放火、暴行は当たり前(?)、果ては殺人まで犯す者もいる。
多くのバンドが白塗りメイクを施いており、しかしふざけた要素は一切無い。

そのブラックメタルの中でも最も悪名高くカリスマ的存在なのが
今日紹介するバーズム(ブルズム)だ。



バーズムはCount Grishnackh(カウント・グリシュナック)ことVarg Vikernes(ヴァーグ・ヴィカネス、1973年生まれ)のワンマン・プロジェクト。
ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボード全てを手掛ける。

どのように悪名高いのかというと、ノルウェーの教科書にその名が載っているほどだ。
そう、教会放火と殺人を犯した極悪人として…



1990年代初頭、ノルウェー出身のバンドが台頭しブラックメタル・シーンが形成され、
それらのメンバーを中心に“インナーサークル”という悪魔崇拝・反キリスト教の集団が結成される。
彼らはその思想に基づき、教会放火、窃盗、殺人、自殺等、罪の大きさを競い合うかのように事件を起こした。

そして1992年6月6日、バーズムのVargはノルウェーの有名な礼拝堂を放火、全焼させるという事件を起こした。
逮捕されたものの証拠不十分で釈放される訳だか…

しかしこの事件を皮切りにインナーサークルの活動は激化。
他バンドのツアーバスを転倒させる、メンバーの家を放火する等、次々と事件を起こす。
事件が大きいほど組織内での発言力が強まるという風潮が出来上がっていたのだ。



そしてついに決定的な事件が起こる。

1993年8月10日、インナーサークルの中心人物
“Euronymous(ユーロニモス)”が殺害される。

犯人はバーズムのVarg Vikernes。
殺人、教会放火等の罪でノルウェーでの最高刑である懲役21年の実刑判決を受ける。

この事件によりインナーサークルは次第に収束、
彼らの事件が次々と発覚し逮捕者が続出、組織は解体となる。











ウィキペディアで“インナーサークル”を見てみると
Euronymous殺害犯行時の様子についてのVargの言葉が載っている。

以下、ウィキペディアからのコピペ↓


以前からEuronymousが自分を殺す計画を立てていた。仲間内でそう話してまわっていた。以前なら、そういった嘘をよくつくやつだったので、気にしてなかった。だが、今回は自分にはばれないように、綿密に計画を立てていることを知った。今回はマジだと思った。だからやられる前にやりにいった。Euronymousの家につき、俺はチャイムを鳴らした。すると奴は誰?といった。そして、俺だ。バンドの新しいリフを考えたんだ。入れてくれ。奴は深夜だったためか、もう遅いから明日にしてくれって。それでも俺はいいから入れろ!。そこでようやく奴は玄関のドアを開けた。俺に見せた姿は下着1着だった。 さすがに奴も焦った様子で、家の中に逃げてったんだ。俺は思った。銃をとりに行ったんだと。だから、すかさずナイフを持って奴を刺したんだ。そしたら、奴はどうしたと思う?キャーって女みたいな声出して外に逃げ出したんだ。失望したね。あいつはほらふきで、自分をいかにも邪悪の化身のように普段から言ってたんだ。うすうすインナーサークルのメンバーはわかっていたことだが、ここまで度胸のないくずだとは思わなかった。もちろん俺は追いかけて数回刺した。奴は悲鳴をあげながら近所のインターホンを次々押して逃げる。近所の連中は酔っ払いが暴れてると思ってたんだろうよ。誰も出てこない。奴は途中でこけてガラスに突っ込んだんだ。だから、24ヶ所も刺したって検察がいいやがったんだ。俺は重いミリタリーブーツを履いてたし、追いかけながら刺したんだから、20何ヵ所も刺せるわけがない。






YouTubeでVargの動画をいくつか見ることが出来る。



字幕がないので内容がよく分からないが汗




身の毛もよだつ殺人犯の笑みである。






Vargは投獄中も音楽活動を続け
『Daudi Baldrs』(1997)、『Hidskjalf』(1999)の2枚のアルバムをリリースしている。

刑務所内には小型のキーボードしか持ち込みが許されず
この2作品はシンセによるダーク・アンビエントなインスト作品に仕上がっている。

ギターやドラムを排したアンビエント作品であることについて、人種差別主義者であるVargは
黒人音楽をルーツとしているロック/ヘヴィメタルはもうやらない、との旨の発言もしていた。
それがアンビエントに傾倒した理由ではなさそうだが…






しかし2000年、Vargはオフィシャルサイトを通じてバーズムの活動停止を宣言。
2003年には仮出所した際に逃亡を図り再逮捕。

全てが終わったかに思えたが…




2009年、Varg Vikernesが出所。
模範囚だったのだろうか、5年早い出所となった。
(完全出所は2015年以降。)

そして2010年、11年振りにアルバムをリリース!!
娑婆復活第一弾となるのが7thアルバムの本作『Belus』である。






投獄中のアンビエント作品とは一転、
ブラックメタル・サウンドに回帰している。

と、言いたいところだが…

随分と聴きやすくなっておりブラックメタル・ファンにはあまり評判良くないようだ。
ゴシックメタルや普通のメタルのファンにも聴けるようなサウンドだ。


これはもう殺人犯の音楽ではなく
音楽家としての作品なのだ。






■昔のVarg Vikernes

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■出所後の現在のVarg Vikernes

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どうだろう、まるで別人のようだ。
現在Vargはノルウェーのテレマルク地方で農業をして暮らしている。



元々バーズムは投獄前の3rd、4thアルバムで既に一部アンビエントな作風を打ち出しており
たとえ逮捕されてなくてもこのようなサウンドになっていたであろうと察する。






私は本作を期待せずに買ってみたが…

サウンド的にはもはやブラストビート炸裂のブラックメタルではないが
紛れもなくVargにしか成し得ない特有の陰鬱とした世界が凝縮されている。
こんなに気の滅入る音楽が他にあるだろか?

私は次から次へとCDを買ってしまい1枚のCDをじっくり聴き込むことがあまりないが、
本作は珍しくここ1か月ほど愛聴している。寝る時にいつも聴いている。






今年春には復活2作目『Fallen』がリリースされた。

しかしもう投獄前の断末魔の叫びのようなヴォーカルは
ほとんど聴くことは出来ないようだが…






(※画像はCDジャケット以外は全てネットからの無断借用です。)