『おじいさんと草原の小学校』映画鑑賞 | うさぎくんのお薦め映画ブログ

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『おじいさんと草原の小学校』映画鑑賞。実話に基づいた映画。1953年、イギリスに植民地支配されていたケニアでは独立を求めて、主にキクユ族からなるマウマウ団による反乱が起こった。この反乱で数千人もの人間が殺され、100万人以上のキクユ族はイギリスが管理する収容所に行くことになった。この争いは独立の契機とはなるものの、その後のケニアに様々な禍根を残すことになる。

主人公は84歳の男性。ラジオで全国民が無料で小学校で教育を受けることができると聞き杖を突きながら遠路はるばると何度も小学校を訪れるが、いつも門前払い。これはあくまでも子供のためのものだ、という理由で。しかし引き下がらない主人公は何度も小学校の門を叩く。断られても諦めきれず門の前に佇む主人公に、小学校の教員はこんな台詞を放つ。

「帰れ。長生きして疲れたろう 。ゆっくり休め(Rest in peace)。」と。「Rest in peace?俺はまだ死んじゃいないぜ!」そう応える主人公。

学校長は主人公にこう尋ねる、「ご高齢なのになぜ学校に?」と。「読み方を学びたい」と答える主人公。何度断られても執念にも似た情熱で訪れる主人公にほだされた学校長は遂に主人公の入学を認め、小学校の門戸を開くことになる。しかし、ストーリーは単純に順風満帆には進まない。授業中のさりげないエピソードが過去の(あるいは映画の時代背景である当時の)ケニアの暗鬱な歴史を映し出し、同時に主人公の懊悩が露わになることとなる。そしてそんなある日、主人公の何気ない言動が思わぬ事態を引き起こすことになってしまう。

独立、紛争、部族主義、教育、政治、自由など多くのテーマを包含しているこの映画は様々な問題を我々に提起する。

主人公はなぜ「読み方を学びたい」のか。これまでどんな苦難を経てきたのか。今なにを考えているのか。これらは全てラストのシークエンスで明らかになる。「最高齢の小学生」としてギネスに載っている男のこれまでを追うことによって、観終わった後「教育の力」について沈思黙考せざるを得なくなるに違いない。後味の良いラスト。いい映画を観たなと気持ちになる秀作。お薦め。