今日のお話
○ ピノッキオ
○ ピノキオ・人造人間キカイダー
○ ロボット3原則と良心(ジェミニ)
○ ピノキオ効果
○ 不完全な心を持つ意味
ピノッキオ
ピノキオ・人造人間キカイダー
石ノ森正太郎さん原作の「人造人間キカイダーは、特撮のタイアップとして1972年に少年サンデーにて発表された漫画作品です。実は本作品の主人公キカイダーはピノッキオをモチーフとしてキャラクターが設定されています。犯罪組織ダークに拉致された光明寺博士が、ダークを倒すために密かに作った人造人間で、自らの意思で善悪を判断する「良心回路」が組み込まれています。
この良心回路は、ピノキオの良心としてピノキオを良い子に導こうとした映画版デイズニーのコオロギの名前をとり「ジェミニ回路」と名付けられています。
ロボット3原則と良心(ジェミニー)
SF作家アインザック・アシモフが小説の中でとなえたロボット三原則は、現代のAI設計の基本にもなっています。家電に例えたら、安心・便利・長持ち機能と言えますが、致良知(陽明学)のプログラムを組む事は現代技術においても非常に困難なものです。そのプログラムこそが、良心なのかも知れません。
第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条
ロボットは、人間に与えられた命令に従わなければならない。だだし、与えられた命令が、第一条に反する場合はこの限りでない。
第三条
ロボットは、前項第一条および第二条に反するおそれのないかぎり自己を守らなければならない。
世界的ロボット工学の権威、光明寺博士は、プロフェッサーギルに騙されてダークの破壊ロボットをの制作に従事していましたが、ダークが悪の組織である事を知り、機械が「人の命令」を「自らの意思」で「善悪を判断」して、その時々で「最良の行動」を判断できる「良心回路」の作成に傾注していきます。
良心回路は「心」そのものではなく「ジェミニィ」と名を冠された悪に揺れ動く「心」を自制する良心(思考プログラム)が「良心回路」というわけです。
良心回路が完成する前にして光明寺博士は組織に拘束されてしまったため、不完全な状態で世に放たれたキカイダー(ジロー)は、プロフェッサーギルの悪魔の笛でコントロールされてしまうという脆弱性を持っています。
また、ロボット形態のビジュアルはジェミニの一般的な意味である「ふたご座」をイメージして作成され、作中二つの価値観という思想体系の中で悩み苦しんでいくことになります。
ピノキオ効果
嘘をつくことで生じる身体的変化をピノキオ効果と言います。ピノキオ効果は、人が嘘をついたときの生理的変化や行動などのサインを示していますが、お察しの通りこの物語に由来しています。
人は嘘をつくと一般的には心理的ストレスと緊張により、心拍数・血圧・体温の上昇・発汗などが見られ嘘発見器や詐欺を防止するためなどに応用されています。
嘘をつくと鼻を触るというのもよく聞く話ですね。
お話では、女神に嘘をつくことでピノキオの鼻が伸びていくのですが、カルロ・コッローディの原作では、妖精がピノキオにこう話すシーンがあるそうです。「嘘には、足の短い嘘と鼻の長い嘘ある。」ということ それは良い嘘のときは鼻が伸びず、悪い嘘のときは鼻が伸びるということです。 乳幼児期を脱する3歳から4歳にかけて子供は嘘をつくようになります。それは心に感じたことを言葉として表現することができるようになったという成長の証ですが、この時期は夢(童話や映画など)と現実の区別がつかない頃でもあります。
ピノキオで妖精が話したように心理学者のウイルソンらは嘘を5つに分類しています。
①自己保護
罰や批難、不承認を避けたり、罰の悪さを避けるもの
②自己拡大
注目や承認を得るために自分の能力の過大、ホラ話、自慢など
③忠誠
誰かを守るための嘘で、偽証や擁護など
④利己的
自分の利益のための嘘で、詐欺などもこれに含まれる
⑤反社会的、有害
フェイクニュースや誹謗中傷など、誰かを傷つけるため嘘
嘘と近い言葉に「欺き(あざむき)」と言うものがありますが、これは人間だけでなく動物にも認められる行動です。具体的には、意図的に誤った情報を流して他者の行動をミスリードすることによって利を得ようとするこを指します。
欺きには「知らないふりをする」など非言語的な行動も含まれています。人を欺くためには、他者の知識や心情などを利用するため発達心理学における心の理論が成立しなければ他者を欺くことができないと考えれています。
不完全な心を持つ意味
完全な心を持った人間など存在しない。人は皆、善と悪との狭間で揺れ動く不確かな心しか持ち得ず、良心という「心の声」は小さく聴こえにくい。だからこそこの不完全な良心回路は、限りなく人間に近い心をキカイダーに与えていると言えます。
童話ピノキオでは「ピノッキオは、人間になり、ゼペット爺さんと幸せに暮らしました。」とハッピーエンドとして締めくくられています。
一方でキカイダーは、最終回で悪の組織ダークに捉えられ「服従回路」を埋め込まれてしまいます。良心回路を見つけられず外すことができなくなったため、キカイダーは人間と同じように悪と良心の葛藤という人のみが有する感情を手に入れます。
それは、なかんずく善の心に従い「嘘をつき」「人を殺害できてしまう」というより不完全な心(人に近い心)を手に入れてしまったということに他なりません。
不完全な心こそが人が人として存在している所以であり、事に臨んで「本当にこれでよいか・完全に納得がいったか」という心の声「良知」にしたがい、嘘をつき弟に手をかけるのです。
漫画のラストでは
ピノキオは人間になりました。
めでたし、めだたし
「だがピノキオは、
人間になって
本当に
幸せになれたの
だろうか・・・・?
と綴られています。
世の中には「良い嘘」というのものもあるのかも知れません。でも私にはそれが良くわからないのです。誰かを守るための嘘だとしても、その嘘が自分自身を傷つけたり、他の人を騙したり、欺いたり、苦しめたりするのなら、その嘘がほんとに「良い嘘」なのか「悪い嘘」なのか答えを出せないのです。
だから
私ができることは、沈黙
最後まで読んでいただき
ありがとうございます。
皆さんの幸せを願っています。
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