青い空と「バトレンジェル」



第43章



僕らは、戦闘用スーツに着替え、


バトラー格納庫へとつながる通路へ、飛び出した。


6人が同時に。


みんなが、駆け出そうとしたときだった。


「気合入れていこうぜ!みんな!」


亮太が、右手を差し出した。


みんなもそれに応じて、次々右手を重ねていった。


「バトレンジェル隊!気合入れていこうぜ!」


「おう!」


みんなの気持ちが、重なり合った。


「いくぜ!」


みんな、駆け出す・・・


マリアが、一人たたずむ・・・


マリア・・・


僕も足を止めた。


みんなと重ねた右手を、ジッと見るマリア・・・


そして、その手を握り締める・・・


コクッとうなずく。


そして・・・前を向いた。


止まっている僕に、微笑む・・・


「いくわよ!早瀬くん!」


僕の肩をたたき、駆け出すマリア。


大丈夫だよ、マリア・・・


僕が・・・僕が、がんばるから!


やってみせるよ!やってみせるよ、マリア!


僕も、駆け出した・・・




海から飛び出す、6体のバトレンジェル。


向かう先は、大宮駅だ。


最強能力者か・・・


マリアが、複数能力者で・・・


その上を、いくということか・・・


どんな能力を・・・


誰もが不安を、拭い去れなかった・・・


でも、僕達は立ち向かわなければならない。


人類の未来を守るために・・・




なんだあれは!


黒骸骨達が、巨大化している!


巨大化しているというか・・・塊で動いている!


普通に・・・今まで通り戦えばいいのか?


とにかくやってみるしかない!


「秀!どうする?」


亮太が聞いてきた。


「やるしかないさ!今まで通り!」


「そうだな・・・とにかく、攻撃あるのみか・・・」


「いくぞ!」


「おう!」


僕と亮太が跳ぶ!


飛び降りながらの攻撃だ!


「スイフト・アーマー!」


「バト・ガトリング!」


「バシュッ!バシュッ!バシュッ!」


「ダダダダ・・・・!」


巨大な黒骸骨の塊の一体に、集中砲攻撃!


飛び散る、黒骸骨の破片。


「まだまだ!」


「バシュッ!バシュッ!」


巨大な手の部分が、飛び散る。


しかし・・・


何体で作られているのかわからないが、


別の黒骸骨が、中から出てきて、手の部分を再構築する。


再生だ。


「奴等にも限界があるはずだ!


撃ちまくるぞ!秀!」


「OK!亮太!」


「バシュッ!バシュッ!バシュッ!」


「ダダダダ・・・!」


そのころ、サラさんとレイカが、別の1体を相手にしていた。


「レイカ!集中砲火よ!胸!胸を狙うわよ!」


「了解!お姉ちゃん!」


「ダダダダ・・・!」


「ダダダダ・・・!」


「しぶといわね!こいつ!」


そのとき、巨大黒骸骨の手が伸びてきた!


「きゃあっ!」


「レイカ!」


レイカが捕まった!


ギリギリと締め付けられる、レイカ。


「くうっ!こ・・・この・・・」


そのときだった。


青白い光をまとった何かが・・・


レイカを掴むその腕に!


そして、巨大黒骸骨の手を切り裂く!


巨大な手とともに、落下していくレイカ。


力の弱まった手の中から、レイカが飛び出す。


「マリア!」


マリアだ。


その青白い光を、まとっていたのは、マリアだった。


「諭し」の能力を最大限に発揮し、身にまとっていた。


身にまとった能力が、青白く見えたのだった。


「私が、私がやる!」


マリアは、そのまま巨大黒骸骨に突っ込んでいく!


そして、マリアが・・・


青白い光が黒骸骨の胸を貫く!


「バラバラバラ・・・・」


崩れゆく、巨大黒骸骨!


「次よ・・・」


マリアが、次の巨大黒骸骨に突っ込んでいく!


青白い光が、次の巨大黒骸骨の胸を貫く!


「バラバラバラ・・・」


またも、崩れ落ちる巨大黒骸骨・・・


「次・・・」


次の巨大黒骸骨に、目標を定めるマリア。


青白い光が、3体目の黒骸骨に向かう。


そのときだった。


マリアに向かう、一筋の光。


赤黒い光が・・・


赤黒い光りが、青白い光がぶつかる!


「きゃああっ!」


落下する、青白い光・・・


「早瀬くん!マリアが!」


サラさんの声だ!


「亮太!いくぞ!」


「OK!」


僕は、最大速で向かった。


「ドーン!」


落下するマリア。


そして、その前に降りてくる赤黒く光る塊。


「くっ・・・最強・・・能力・・・者・・・?」


マリアは、立ち上がりながら、目の前にいる物体に目を向けた。


その物体は、赤黒い炎を身にまとっていた。


翼もあった。


おそらく、悪魔というものが実在すればこんな顔であろう・・・


そう・・・その風貌は、あきらかに悪魔と証するに、相応しいものだった。


「あ・・・悪魔・・・」


「マリア!マリア!大丈夫か?」


マリア・・・マリアの前に何かいる・・・


何だ・・・何だあれは!


あれが、最強能力者!最強能力者なのか?


マリア!マリアを守らなくっちゃ!


僕は・・・僕は、男だ!


男は・・・守るんだ!


男は、命を賭けて、愛する人を守らなくちゃいけないんだー!







青い空と「バトレンジェル」



第42章



2012年 8月15日。


その日は、朝から激しい雨が降っていた。


重苦しい空気の中・・・


朝から、ボーッとしている僕・・・


昨日の夜の出来事が、まだ・・・


「おい、秀。何ボーッとしてんだ?」


「い・・・いや、な・・・なんでもないよ。」


亮太が、不振そうに僕の顔を覗き込んだ。


「な・・・なんでもないったら。」


「なんか、顔が赤いぞ、大丈夫か?


なんなら、医務室へいってこいよ。」


「う・・・うん、大丈夫・・・」


「そっか。ならいいけど・・・」


絶対ばれないんだろうけど・・・


なんだか・・・顔に書いてありそうで・・・




<ユ・・・ユリカ・・・ユリカさ・・・ん・・・


あ・・・頭が・・・頭が痛い・・・


な・・・何か・・・何かが、頭の中に・・・頭の中に・・・>


ユウキが、ユリカに助けを求めてきた。


「ユウキくん!どうしたの!


何!何があったの!」


<わ・・・わかりません・・・で・・・でも・・・>


「すぐいく!すぐにいくわ!」


廊下に飛び出すユリカ。


走る。


情報処理室に飛び込む。


「ユウキくん!」


そこには、容器の中で、苦しむユウキがいた。


「バトラー体液、排出!


回路を!回路を、すぐにユウキくんから外して!」


体液が、排出され、回路から外されるユウキ。


「大丈夫!ユウキくん!」


「あ・・・ユリカさん・・・


く・・・苦しくて・・・頭が・・・頭が痛くて・・・


何か・・・何かが・・・僕の頭の中に・・・


頭の中に・・・入ってきそうだった・・・」


「頭の中に・・・ユウキくんの・・・」


「おそらく・・・能力者です・・・それも、とても強力な・・・


僕なんか・・・とても、歯が立たない・・・」


「最強能力者・・・」


「そう・・・そう思われます・・・」


「最強能力者が、完全復活したのね・・・」


「お・・・おそらく・・・」


「・・・」


「ユ・・・ユリカさん・・・


き・・・危険すぎる・・・みんなが・・・みんなが・・・


この、能力者と戦うのは・・・


・・・みんなが・・・みんなが・・・」


「ええ・・・ユウキくん・・・


それは・・・それは・・・予期していたことなの・・・


でも・・・でもね・・・


私達は・・・私達は、彼らを信じるしかないの!


確立は・・・とても低くても・・・


それしか、人類を救う道はないのよ!」


「で・・・でも・・・」


ユウキは、泣いていた・・・


今回の戦いが、とても辛いことになること・・・


それを、一番感じ取っていた・・・人間だから・・・




埼玉県の大宮駅周辺。


埼玉県では、まだ人々は普通に生活をしていた。


避難勧告は、東京23区にしか出ていなかったからである。


そんな街が・・・


突然、駅前の道路が陥没する。


直径100m程に広がっていく・・・


周りの建物が、崩落していく・・・


落ちていく車・・・人・・・


深い穴だ・・・


すると中から・・・


ぞろぞろと這い上がってくる、黒骸骨達!


その数、数百。


あっという間に、周辺を覆いつくす、黒骸骨。


逃げ惑う人々。


黒骸骨達が、1つの固まりに・・・


その上を、上ってゆく他の黒骸骨・・・


塊は、どんどん大きく・・・


そして・・・巨大な黒骸骨が!


4m程の黒骸骨が集まり、50mの巨大黒骸骨が出現した。


その数、5体!


巨大化した黒骸骨は、次々に建物を破壊していく!


自衛隊の配備は、東京23区内にしかなされていなかった。


連絡は、都内自衛隊作戦本部に伝わり、


そして、緊急出撃。


その情報は、P.S.Oへと・・・




「ピィーン!ピュイーン!」


サイレンが鳴る。


僕達は走る。出撃だ!


全員が、司令室に集まる。


僕は、マリアをチラッと見る。


マリア・・・


マリアの顔が・・・いつになく真剣だ・・・


「いい!みんな!


敵は、埼玉県の大宮駅周辺に現れた・・・


しかも、地中からよ!


今回の能力者は、今までと比べ物にならない・・・


おそらく・・・最強能力者・・・」


最・・・強・・・能力者・・・


「いい!


みんなで協力し合って!


力を合わせて戦うの!そうすれば勝てる!


あなた達ならできる!大丈夫よ!今までもできたんだから!


決して気を抜かず、集中して戦いに望むのよ!


わかった!?」


「はい!」


ユリカさんの顔が、こわばっている・・・


マリアも・・・


「バトレンジェル出撃よ!」





青い空と「バトレンジェル」



第41章



夜になって、雨が一段と強くなってきた。


窓から見る海は、荒れている。


こんな夜に、海へ出て行くのは怖いだろうな・・・


と、思ったところで、僕が船で沖へ行くことはないか・・・


あ・・・そういえば、あのゲーム、途中だったんだ。


あと、1面でクリアなんだ。


さっさと、やっちゃって寝るか。


あれ?どこだ?


携帯ゲーム機がない・・・


あれ、おかしいな・・・


あ!ひょっとして・・・夕飯食べてから・・・


ラウンジで、亮太たちと、通信で対決してて・・・


忘れてきたんだ。ラウンジに!


取りに行かなくっちゃ。


クリアしとかないと、気になって寝れないや!



ちゃんとあるかな・・・


僕は、ラウンジに入ろうとした。


あ!誰かいる・・・


誰だ?こんな時間に・・・


マリア・・・?


マリアが・・・


泣いてる・・・!


まずい!知らないふりして、出よう!


「早瀬くん?」


「や・・・やあ・・・」


顔を上げた、マリア・・・目が、赤い・・・


「ち・・・ちょっと・・・ゲーム機、忘れちゃって・・・


あ!あった!これこれ!」


ちらっと、マリアの顔を見た。


涙・・・涙が・・・頬を・・・


「ど・・・どうしたの?マリア・・・」


うわっ!どうした!なんで聞く!


僕になんか、きっと何もできないのに!


なんで、聞いちゃった!


「い・・・いえ、何でも・・・」


よし・・・何でもないって!


ここで、じゃあ!また明日!って去るんだ!


お前には、何もできないって!


「早瀬くん・・・私・・・私・・・」


あ・・・話し始めちゃった・・・


ど・・・どうしよう・・・


僕は、恐る恐るマリアのほうを見た。


「私・・・みんなを、みんなを・・・


みんなを、戦いに巻き込んじゃって・・・」


また、一粒・・・大粒の涙が・・・


「早瀬くんは、知ってた・・・?


私が・・・」


「い・・・いや!マリア!


そんなことは、どうだっていいんだ!


ぼ・・・僕は、ここへ来たことは、何にも後悔してないし、


そ・・・それに、友達もできたし・・・


マリアにも・・・」


わ~っ!お前何言っちゃってるんだ!


どうした!秀!


「・・・」


「ほ・・・ほんとだよ!マリア!」


「ありがと・・・早瀬くん・・・


私・・・ここで、楽しかったことを思い出してたの・・・


家族での思い出・・・


パパ・・・優しかった、パパのこと・・・


みんな・・・いい思い出よ・・・


そして・・・ここで過ごした・・・みんなとの生活・・・


そしたら・・・そしたら・・・


みんなに・・・みんなに、申し訳なくなっちゃって・・・


みんなだって、夏休みだもん・・・


家族と・・・パパやママと・・・


そしたら・・・」


「マリア・・・大丈夫・・・大丈夫だよ!


誰も後悔してるヤツはいないって!


こんな、豪華なホテルみたいなところで、毎日過ごして!


そして・・・人類を!人類を救うために戦ってるんだ!


こんなすごい経験は、今後・・・


絶対にできない経験を、させてもらってるんだ!


だから・・・マリア・・・


自分を・・・責めないで・・・マリア・・・」


「ありがと。


やっぱり、早瀬くんは優しいのね。」


やった・・・ようやく、マリアの泣き顔が・・・


いつもの顔に・・・


「早瀬くんに、話を聞いてもらったら・・・


少し・・・すっきりしたわ。


あ!もうこんな時間!


寝なきゃ。


明日もきっと出撃だから・・・」


マリアが、椅子から立ち上がった。


「そうだね。」


僕は、椅子の上にあったゲームを、取ろうとした。


マリアが、近づいてるようだった。


僕が、顔を上げたとき・・・


それは・・・突然だった・・・


マリアの唇が・・・マリアの、その柔らかい唇が・・・


僕の頬にふれた・・・


「ありがと・・・早瀬くん・・・」


え!な・・・何?・・・何!


硬直する僕・・・


その僕を尻目に、


「お休み・・・早瀬くん・・・また、明日ね。」


「・・・」


マリアは、出て行った・・・


「・・・」


えっ?ほ・・・ほっぺに・・・


マ・・・マリアの、唇・・・?


あまりの出来事に・・・僕は・・・


僕は・・・どうしていいのか・・・


しばらくの間、僕は、ラウンジにたたずんでいた・・・


ゲームを・・・


ゲームをクリアすることなんて、どうでもよくなっていた・・・