青い空と「バトレンジェル」



第49章



「マリア・・・


お父さんのこと・・・よかったね。」


「うん・・・」


ようやく話す言葉を見つけた僕は、


マリアのお父さんのことを、切り出した。


「あ・・・」


僕が、次の言葉を、発しようとしたときだった。


「ピュイーン!ピュイーン!」


サイレンだ!


僕とマリアは、お互い顔を見合わせ、


そしてうなずいた。


6人は、水着のまま、司令室に駆け込んでいった。


翼 博士、司令官、ユリカさん達が、奥の部屋から出てきた。


どうやら、朝から会議をしていたらしい。


「那須の自衛隊基地から、送られてきた映像よ。」


ユリカさんが、モニターを指しながら言った。


そこに映っていたのは・・・


巨大な人型の物体だった。


映像が乱れているが、周りに赤黒い光をまとっているのがわかる。


「どうやら・・・昨日の最強能力者・・・


復活してしまったようね。」


マリアさんがそういうと、翼 博士が続けた。


「おそらく・・・


ヤツは開発中の、作られた能力者・・・


そして、増殖された「バトラー」と融合したと思われる・・・


政府の研究が、裏目に出てしまったようだ。


厄介だな・・・


この映像を見る限りでは、ヤツは10体以上の


能力者、バトラーと融合していると思われる。


その能力が、どれほどなのか・・・


私達の知る限りでは、計り知れない・・・」


作られた・・・能力者・・・


増殖した・・・バトラー・・・


・・・


「もう一度、出撃してもらうわ・・・


また、厳しい戦いになる・・・


いいわね!みんな!」


僕は、翼 博士に向かって聞いた。


「博士・・・」


「なんだい?早瀬くん。」


「あれは、能力者とバトラーの融合体・・・


でも、能力者は、作られたもので・・・


バトラーも、増殖された・・・本物ではない・・・


ということですね。」


「ま・・・そういうことになるね・・・」


僕は、はっきりと感じた。


「それなら、大丈夫です!


僕達は、本物の能力者!


そして、バトラーも本物!


簡単ですよ!僕達が力を合わせれば!


あんなヤツ!昨日みたいな好き勝手は、させません!」


横にいたマリアが、微笑んだように感じた。


「そうだな。早瀬くん。


君の言う通りだ。


ヤツは偽者・・・マガイ品だ。


まかせたよ。バトレンジェル諸君!」


「はい!」


僕達は、駆け出した。


バトレンジェルの、今まで戦いのすべてを共にしてきた、


バトレンジェルのもとへ!


「いくよ!みんな!」


「OK!」


バトレンジェル6体が、勢いよく海へ!


そして空へ!


僕とマリアは、単独で飛んでいる。


サラさんとレイカは、亮太と和人を乗せて。


6人は、敵のいる那須高原へと向かった。


巨大能力者融合体の待つ、第2作戦本部へと・・・






青い空と「バトレンジェル」



第48章



2012年 8月16日。


僕達は、ビーチにいた。


大人たちは、昨日の夜のドンチャン騒ぎで、


まだ、起きてきていないようだったから、


僕らは、海で遊ぶことにした。


僕らは、まだ中学生・・・


おっと、小学生もいたか!


海でテンションが、上がらないはずがない!


しかも、人類の滅亡を阻止するという、


大仕事の後!


亮太も和人も、はしゃいでいる。


サラさんもレイカも!


僕は、はしゃいでいるみんなを、砂浜に座って見ていた。


あれ?マリアは・・・?


「早瀬くん。」


後ろで声がした。


水着姿のマリア・・・


僕には、とてもまぶしかった。


マリアが、横に座った。


心臓が、バクバクいい出した。


こんなときは、何ていったらいいんだろう・・・


頭が、真っ白だ・・・


「終わったのかしら・・・」


「えっ!」


「戦い・・・ほんとに、終わったのかしら・・・」


マリアの目が、まっすぐ僕を見ている。


「ど・・・どうかな・・・」


僕は、目をそらしてしまった。


「早瀬くんも見たでしょ・・・」


「・・・うん・・・


飛んでいった、あの光・・・のこと・・・かな・・・」


「ええ・・・そう。


あれは、間違いなく、あの最強能力者の魂・・・


だと思うの。


それに・・・笑い声も聞こえたし・・・」


「やっぱり・・・


僕にも、聞こえた・・・」


「そう・・・早瀬くんも・・・」


マリアが、そういうと・・・


二人とも黙り込んでしまった・・・


なんてこった・・・


目の前には、光り輝く海。


隣には・・・


僕には、次に続く言葉を捜し・・・


脳のシナプスを、最大限に働かせていた・・・




那須高原にある、第2作戦本部・・・


内部には、怪しげな空気が立ち込めていた。


<グッグッ・・・


我ハ、信長・・・コノ世ヲ、統治スル者・・・


我ノ体ト、成リ得ルモノ・・・


気配ガ、スルゾ・・・


ココニハ・・・我ノ新タナ体ト成リ得ルモノガ・・・アル・・・>


「山下教官!


基地内に、何やら、巨大な能力値を持つものが!」


「なに?モニター監視!」


「いえ!何もいません!


基地内、何の不審者も発見できません!」


「何?能力感知システムの故障か?」


「近づいています!


確実に、このトレーニングルームに!」


「なんだと!」


「入ります!トレーニングルーム室内に!」


山下は、能力者の・・・


作られた能力者の、トレーニングを行う部屋を、


大きなガラス面越しに、見渡した。


「な・・・なんだ?あの光は!」


山下は、トレーニングルームの、高い天井の隅に輝く


赤黒い光を見た。


「あれが・・・まさか・・・」


<グッグッ・・・


イルゾ・・・コヤツラ・・・能力者ガ、イル・・・>


赤黒い光が、訓練中の能力者に覆いかぶさっていく・・・


「ひ・・・避難させろ!


すぐに!能力者を、避難させるんだ!」


「総員訓練終了!生命カプセルに戻れ!」


しかし、その光は能力者を巻き込み・・・


人の形に・・・


能力者12人が作り上げる、巨大な人の形に・・・


<マダ・・・足リヌナ・・・>


巨大な人型が、隣の部屋に続く扉に目をやる・・・


「あ・・・あれは・・・


あれは、何だ!


まさか・・・まさか、敵の能力者?


い・・・いかん!あの扉の向こうは!」


巨大な人型は、扉を破り進んでいく。


そこには・・・


12体のバトラーが・・・


増殖された、12体のバトラーが並んでいた。


<グッグッ・・・


コレダ・・・コレガ、必要ダ・・・>


12体のバトラーが、引き付けられて行く・・・


1体、1体が・・・


巨大な人型の、肉付けをしていく。


<グッグッ・・・


チカラガ・・・チカラガ、沸イテクルゾ・・・


グッグッ・・・>


「ば・・・ばかな!能力者が・・・バトラーが・・・


乗っ取られた・・・あの光に・・・」


<試シテミルカ・・・我ノ、新シイ体ヨ・・・>


12人の能力者と、12体のバトラーと融合した最強能力者。


その、左手を山下達のいる、監視室に向けた。


「何事だ!山下君!」


騒ぎを聞きつけた、不破防衛大臣が入ってきた。


「だ・・・大臣!


危険です!危険・・・」


山下がしゃべり終わる前に、その光は監視室を貫いた。


巨大なビーム砲だった。


その光は、基地内をつきぬけ・・・


地面もつきぬけ・・・


山肌から突き出ていった!


「ドーン!」


その音は、山間に響き渡った。


ここに、巨大能力者融合体が完成してしまった・・・



























青い空と「バトレンジェル」



第47章



「ザザザ・・・」


僕は、部屋に戻り窓を開けた。


夜の風が気持ちいい・・・


大人たちは、まだ大騒ぎをしているのかな?


いいよな・・・大人達は・・・


お酒を飲んで、騒いで・・・


お酒を飲むって、どんな感じになるんだろう?


後・・・8年か・・・


でも・・・ユリカさん・・・


戦いから開放された気分からか・・・


えらく酔っ払ってたな・・・


僕達にまで絡んでくるんだから・・・


それに比べ、翼 博士は・・・


紳士的で・・・


ああいう大人を、目指さなくちゃな・・・


・・・


さ!寝よ!


今日は、色々な出来事があったな・・・


それにしても・・・


僕は、複数能力者だったんだ。


でも・・・


ユリカさんが言ってたのは・・・


僕のは、究極能力で・・・


特殊な要因がなければ、使うことができないって・・・


いや・・・いいよ!使えなくっていい!


もうあんな出来事は、こりごりだから!


能力が使えなくたって、僕は複数能力者になったんだ。


その証拠に、僕のバトラー、翼が生えたままだもんな!


あ・・・もう、余計なこと考えなくていいのか・・・


そうか?ほんとにそうなのか?


僕は、また、ヤツから離れた、赤黒い光と、


笑い声を思い出していた・・・