<現地発>中米政治・経済・社会についての考察&見聞録 -7ページ目

<現地発>中米政治・経済・社会についての考察&見聞録

長年中米に在住する某国政府経済情報局部長である経済学博士が繰り広げる、最新の中米の政治・経済・社会に関するクリティカル・ディスカッション。日本との関係や違いを考慮し、小国ではあるがバライエティーに富んだ中米各国、また中米域全体の魅力についてのご紹介。

今回はコーヒーの味の複雑さ、また深さについて触れたい。皆さんもご存知の通り、コーヒーには独特の味と香りがある。この味と香りだが、良い豆の多くには複雑で深い味や香りのものがある。

これはどう言う事か。先ずはコーヒーの味はどの様にして認知するものかだが、この基本はボディー(こく)、酸味、甘みをもって評価される。通常、ボディーはあればある程良いものだが、それ以外の酸味や甘みは個々人で評価が違ってくる。また、これら3項目のバランスも評価する。

これらの評価項目に、更に芳香、均一性、雑味、後味、ディフェクト(精製や保管による欠陥)を加えると、特級品であるスペシャルティーコーヒーの評価基準となるが、一級品コーヒーの複雑さ・深さはこれだけでは計れない。これが小職が感じる所では、コーヒーの味や香りの面白さなのだが、これらのコーヒーには何と、様々なフルーツや花他、多くの食べ物等を感じる事が出来る。これらの食べ物の例として、レモンやオレンジなどの柑橘類やりんご、ブルーベリーを始め、チョコレート、様々なナッツ、キュウリが含まれる。花に関しても多種多様の花の匂いがするコーヒーがある。

しかも、これらの味や香りは、一つしか含まれているのではなく、無限のコンビネーションで一級のコーヒーに存在する。例えばレモンとアーモンドの味が混在し、ハイビスカスの花の匂いがするコーヒーも有り得る。またコーヒー豆が飲み物になるまでの栽培、精製、保存、焙煎、淹れ方等の違いにもどの味や香りが際立つかに影響するので、隣同士の木のコーヒー豆でも違った味の飲み物が出来る事がある。

この物差しで中米の一級コーヒーを計ると、グアテマラのコーヒーが世界レベルでも豊富な味や香りをしている。その中でも特に人気があるのは、アンティグアのコーヒーだが、これはピカイチの酸味、甘み、ボディーのバランスを誇り、優雅な花の香りがする。これに対極的なのはエルサルバドルのスペシャルティー・コーヒーだが、グアテマラに比べて落ち着いた味や香りだが、これは必ずしもネガティブな事ではなく、確かにきらびやかに着飾った味ではないが、すっきりとした、何倍飲んでも飽きない大人の味の良くバランスがとれたコーヒーとなっている。この様に、中米の小国のたった2カ国のコーヒーを大まかに説明しただけでもくっきりと違いがある事が分かる様に、コーヒーの味と香りの世界は果てしなく広いかが理解出来ると思う。

まとめれば、一杯のコーヒーの味と香りは無限のコンビネーションの可能性を持っている、と言える。よって、一度飲んだコーヒーの味と香りは再び飲む事は無いとも言える程だ。こんなにバリエーションが多い物が単なる豆から出来るのは、コーヒーをおいて他には無いのではないだろうか。これが飲み物としてのコーヒーの魅力だ。

次回はコーヒー農園を中心とした、コーヒーを取り巻く環境の魅力を語る。

初回の投稿で中米の魅力を紹介すると記述しておきながら、暗い記事ばかりとなってしまったので、ここで一つ本当に中米の魅力の大黒柱とも言うべき、コーヒーについて書きたい。小職は中米等のコーヒーを扱っていた商社に勤めた経験がある為に、この地域のコーヒーを一般の方々に比べると深く知る事が出来たのだが、これが小職の中米の見方を大きく変えた、と言うか、中米に居たらそのコーヒーの世界を訪れないと、中米の魅力となる中心的要素を知らない事にあたる、と思う程に中米のコーヒーの世界に憧れてしまった。その中米のコーヒーについて書く。




コーヒーが特に好きでもないと言う読者の方々が居られてもおかしくない所、コーヒーの魅力について紙面で説明するのはとても難しいものだが、先ずは何故中米のコーヒーの世界がそれ程に魅力的なものかを説明したい。所詮、コーヒーは何故魅力的な物品なのか。先ずはコーヒーと言う飲み物に的を絞って-と言うのは、コーヒーの魅力は飲み物だけではなく、産地の文化や歴史、また自然、気候、風景を含む環境を含むから-小職に簡単に言わせれば、単なる豆があれ程に複雑であり深く、バラエティーに富んだ味や香りを持った飲み物に変身する事のすばらしさにあると思う。




これはどう言う事か。実は小職もこの事が分かった-それ以前は良いコーヒーを殆ど飲んだ事が無かった事実にも影響されるのだろう-のは、商社勤めで味や香りを含めたコーヒーと言う飲み物を勉強してからだが、コーヒーは産地、栽培条件(気候や土壌)、精製条件、高度、また豆の種類(バライエティー)によって味が大きく変わる。基本的にはこれはどの農産物にも当てはまる事なのかも知れないが、コーヒー程には当てはまらないのではないだろうか。




これらの要素は少し違うだけでも飲み物の味と香りに大きな変化をもたらす。例えば同じ農園でも100メートルの距離しか離れていない木の豆でも、全く違う味の飲み物になる事もあると、専門化が言う程だ。更に当然の事ながら、豆のバライエティーが違うと大きく味・香りとも異なり、精製条件や高度が違っても大いに異なる。これらの違いはコーヒーの素人が飲んでも分かる程なのが、当然ながら面白い所だ。




こんな飲み物の豆が世界の何十カ国で栽培されているのだから、コーヒーと言う飲み物が如何にバライエティーに富んだものかが想像できるだろう。紙面で読んでも分かり難いと思うので、日本に何万点あろうスペシャルティー・コーヒーショップで、例えばグアテマラ産とスマトラ産を比べてみれば良い。中米産コーヒーの魅力が理解できると共に、産地や精製方法によってどれだけコーヒーが違うものかが分かると思う。




今回はコーヒーの味と香りの豊富さに専念してしまった為に触れる事が出来なかったので、次回は前述したコーヒーの味の複雑さ、また深さについて紹介する。

前回の投稿で今般の経済危機後の中米が抱える最大のマクロ経済レベルの難題として、財政赤字について述べたが、今後の中米経済成長予測はあまり高いものではない事についても触れた。今回は、残念ながら世界の新興国の比にならない、中米の2010年の経済成長の見通し、またコスタリカの長期発展戦略について記述する。

中米の経済成長率の予測値は、世界各国の値を発表する世銀や国際金融機関(IMF)を初めとして、中南米では域内各国は勿論の事ながら、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)や中米経済統合銀行(BCIE)が定期的に同数値の計算を行っており、それぞれの計算方法や前提が異なる為に、機関によって違った数値が発表される(下記の表を参照)。

2010年の中米各国経済成長率(予測値%)
国        CEPAL  世銀  IMF  BCIE
グアテマラ    2.0   1.6   2.5  1.3 – 2.3
エルサルバドル 2.0   0.8   1.0  1.3 – 2.3
ホンジュラス   1.5   1.8   2.0  2.3 – 3.3
ニカラグア    2.0   1.7   1.8  1.0 – 2.0
コスタリカ    3.5   2.1   3.5  3.7 – 4.7

上記の表の数値はそれぞれの機関の最新の発表値だが、中米全体の平均は凡そ2.0強と言った所だが、明らかに国によって開きがある。予測値が一番高いのは一貫してコスタリカだが、一人当たり国民総生産が最も高い国でもあり、経済発展においては中米の優等生である。他の中米各国が内戦など政情不安に陥った 1980年代もコスタリカは政治的な安定性を強みに難なく発展を続け、また軍を持たずに逆に社会・教育分野に熱心に投資を続けてきた努力が報われているのが、現在のコスタリカである。コスタリカの人的資本への投資は最近始まったものではなく、19世紀の中米の独立当初、コスタリカが他の中米各国以上に僻地だった頃からのものである。

一方、コスタリカの知識階級は教育レベルが高い事もプラスして、中米の他の国に無い程に発展の戦略思考を兼備えており、例えば1990年代後半には、当時の大統領までもが尽力した、米国籍半導体メーカーインテル社の製造工場誘致に成功したが、これは外国直接投資における世界トップレベルの競合国であるブラジル、メキシコ、インドネシア、タイ等を打ち負かしての結果である。世界を代表するハイテク分野企業であるインテルがコスタリカで半導体の製造・輸出を始めた結果、小国コスタリカの外国直接投資、輸出が共に大幅に増えた事は言うまでも無い。

コスタリカの輸出主導による発展戦略は止まるところを知らないが、先日中国と自由貿易協定を結び、この「インテル効果」に輪をかける事になった。と言うのもコスタリカにとって中国は既に第二輸出相手国である重要性を兼ねているが、輸出額の大半がインテルの輸出品目に占められている。中国と国交を保っている国は中米ではコスタリカのみだが、そんな事は一切気にせずに自国の発展の為に長期的な戦略に基づいた政策を実行するコスタリカの姿勢を他の中米各国にも見習ってもらいたいものだ。