輝かしき中米コーヒーの風土と文化(1) | <現地発>中米政治・経済・社会についての考察&見聞録

<現地発>中米政治・経済・社会についての考察&見聞録

長年中米に在住する某国政府経済情報局部長である経済学博士が繰り広げる、最新の中米の政治・経済・社会に関するクリティカル・ディスカッション。日本との関係や違いを考慮し、小国ではあるがバライエティーに富んだ中米各国、また中米域全体の魅力についてのご紹介。

久しくなってしまったが、「コーヒーなくして中米語れず」シリーズの続き、中米コーヒーの風土と文化について紹介する。これらの要素も前回紹介した環境同様、農園を取り巻く形でコーヒーに係わり合い、コーヒーという飲み物をより奥の深いものにしている。

中米のコーヒー農園の風土と文化が味わい深いものである原因の一つは、日本などの長い歴史を誇る国々から見たら確かに国の独立から余り時間が経っていない中米ではあるが、その短い歴史を構成する風土や文化だけではなく経済や政治を一番良く凝縮しているのが、まさにコーヒー農園だからではないだろうか。

中米コーヒーの歴史の詳細については後日綴る事にするが、コーヒー農園を訪問した際に見たり触れたり出来る、中米の歴史を最も感じずには居られなくするものに、例えば農園主の家屋を主とした建物が連なる、農園の心臓部とも言える区画がある。これらの建物にはコーヒーの大規模栽培が始まった19世紀中ごろから大きな変化も無しに使用され続けられているものもある。こう言った建物は高地にある場合でも時期によっては正午前後は外気の気温がある程度高くなるので、室内温度を低くするべく壁を厚くしていたり、天井を高くしている工夫が施されているのを見ると、独立直後の中米人の生活の知恵を想像させられる。

「農園主の家屋を主とした建物」と書いたが、家屋の他にコーヒーの精製施設は勿論の事、教会までもが建っている農園もある。教会が施設内にある事で歴然となると思うが、20世紀の始め頃までの大きなコーヒー農園はそれぞれが小さな村落の様な一種の自治共同体となっており、そこで生活に必要な活動が行えるようになっていた。経済活動も例外ではなく、大規模農園はそれぞれ農園毎で個別に発行した通貨を用いて農夫に労働賃金を支払い、農夫はその通貨で農園内にある食料などの必需品を雑貨店で買い物した。よって、現存の中米の大規模コーヒー農園へ行けば、その昔実際に使用されていた「コーヒー農園通貨」を見せてもらえる所もある。

農園のコーヒー精製敷地内の建物や機械も見ものだが、これは中米では150年前から基本的に精製の方法を変えていない部分も多く、今でも代々使われてきた機械を使っている精製所が多くあるからだ。木造の柱を使っている精製施設があるのは農園主の家屋と変わらない面だが、例えば小川の水を利用した水車から得た動力で稼動する精製機械を現在に至っても見学出来るのは、貴重な事だ。

中米コーヒーの風土と文化は次回の投稿でコーヒー農園の最も重要な資源である、農園で働く人々に焦点を当てる形で続ける。