ゆうれいみたり(前編2)

(前篇1より)

「なんだぁ? みんな、ワシが恐いことに出会うことがそんなに変かのお?」
 1人カカンバーだけがのんびりとそう言う。その言葉にみなごくりとつばを飲み込むとカカンバーの方を向いた。
「いや、ちょっと驚いただけで、別に変じゃないよ」
 ウェインの言葉にみなウンウンと頷いた。恐いが聞いてみたいという好奇心に勝てなかったのである。
「そうかぁ? じゃあ、話してええかのう?」
「も、もちろん」
 少し震えたキキの言葉が合図となった。
「この間この第三教導中隊であった話なんだけどなぁ」
 カカンバーはそこまで言ってからちょっと妙な表情をした。
「ワシが公爵に変な気に入られ方をしとるのはみんな知っているかのぉ?」
 その言葉に誰もが首を傾げたあと、こっくりと頷く。
 ガチムチホモが好きなシュテファン公爵はこの第三教導中隊に突然現れては、カカンバーと料理長の親方を追いかけ回している。もちろん二人とも公爵の趣味には興味がないのでいつも丁重にお断りしている。が、すでにあしらい方を知っている親方と違って、素直で純朴で呑気なところがあるカカンバーは、知らずに巻き込まれてしまうことも多々あった。
「そんならええんやけど、この間ワシ、この三教の見回りの番やったんやのう。珍しく公爵さんが邪魔しに来なかったからその晩は1人で見回るいうてエルシトリンさんとは別れて見回ったんや」
「カカンバーが見回り当番というと一週間ぐらい前か?」
 隊員のスケジュールが頭に入っているのか、アルノーが余計なことを思い出す。
「ゲ、かなり最近の話じゃないか?」
 案の定ウェインの顔が青ざめる。
「こりゃぁ、トリにふさわしい盛り上がり方やで?」
 ブレンダが冗談めかして言ってみたものの、
「やだ! これ以上聞くの恐い!」
 シェーンはギュッと一也にしがみついた。しがみつかれた一也の方も青い顔をしてシンシアの方を見る。
「この世界の幽霊は魔法とかで何とかなるんだよね?」
 聞かれたシンシアは困ったように肩をすくめる。
「それが、私もあったことがないから分からないんだよねぇ」
「竜術でなんとか……ってわけにいかないかな?」
 キキの質問にも
「さぁ、なんとも?」
 首を傾げるばかりのシンシアにみな背筋を寒くしながら顔を見合わせた。
「ど、どうする?」
「このまま続ける?」
 そう疑問形で聞いてみるが、どの顔にも続きを聞きたいという気持ちが色濃くでていた。
「カカンバーの話が本当なら調べてみる必要もあると思う」
 この中で一番の常識派であるアルノーですらこう言い出す始末だ。
 アルノーの言葉に勇気づけられたようにみなカカンバーの方を向いた。
「それで?」
「ん、それでなぁ」
 カカンバーは話の深刻さと反比例にあくまでのんびりと話を続ける。
「見回りの間、どうも誰かに見られている気がするんじゃ。誰だろうと思って振り返ってみたんだけど、誰もそこにはおらん。おかしいからエルシトリンさんに聞いてみたんだけど、彼女は何も感じなかったと言うんだのう」
「そ、それで?」
 すでにみな、カカンバーののんびりとした口調が気にならなくなっている。しんと静まりかえり、カカンバーの話に一心に耳を傾けていた。
「それでなぁ、ワシの気のせいじゃないかということになって、その晩のワシの見回りは終わったんだのう」
 カカンバーのその言葉にシェーンはほうっと安堵のため息をつく。だが、
「で、ワシがベッドに入ってうとうとしかけた時じゃ」
 カカンバーの話には続きがあった。
「気が付くと体が動かんのじゃ」
「金縛りだ!」
「カナシバリ?」
 一也の言葉にシェーンが首を傾げる。だがしーっと静かにするようにキキにたしなめられ、二人は慌てて口をつぐんだ。
「腕を動かそうとしても、体をひねろうとしても強い力で体が締め付けられてちぃ~とも動かん。しかも首筋に生暖かい息がかかってきたんじゃ。ワシはこわ~て、こわ~て。もう、身が縮むかと思った。だけどのぉ、勇気を振り絞って力の限り暴れてみたんじゃ」
 誰知らずゴクリとつばを飲み込む音がする。
「そこには……」
「そこには?」
 カカンバーはみなの顔を見回した。みな真剣な顔つきでカカンバーの話に耳を澄ませている。カカンバーはわずかに首を傾げて最後の言葉を紡いだ。
「公爵さんがいたんじゃ」
「はぁ?」×7
 キョトンと鳩が豆を食ったような顔をする面々。その顔を見渡しながらカカンバーはみんな何を期待したんだろうといぶかしんだ。
「公爵って、あの公爵?」
「ガチムチホモが好きな、才能の無駄遣い、ついでに権力とお金の無駄遣い公爵?」
「ブレンダ、それは言いすぎだと思うけど」
「ホンマのことやん」
 ブレンダは軽く唇を尖らせる。公爵のことはあまり好きではないらしい。
「まぁ、それはともかく」
 ごほんと咳払いしながらアルノーは所在なさげにみなを見回しているカカンバーを見た。
「カカンバー、本当にシュテファン公爵様だったのか?」
「んだ。間違いない」
 こっくりと頷くカカンバーだが、怪談を期待した面々はあまりの期待はずれのオチにガックリとした表情をしている。
「そもそも、なんでシュテファン公爵がカカンバーのベッドにいるんだよ?」
 不満げにそう聞くキキにカカンバーはちょっと首を傾げて答えた。
「我慢が出来なかったそうだけどのう?」
「え?」
 ぴしりと固まる面々。
「うわ! 寒! 今ぞくぞくっと来た!」
「うえ~ん、鳥肌立っちゃったよぉ!」
「恐い! それは恐い!」
「よく無事だったわねぇ」
「まさかの一番の怪談だね」
「一也君、ホンマやわ。カイダンすると涼めるもんやね」
「いや、カカンバーさんの話は怪談とはちょっと違うような……」
 ブツブツという一也の言葉をさえぎってウェインがさらに爆弾を投下する。
「公爵は空間転移の高位術者だもんなぁ。三教に遊びに来るなんてお手の物かぁ」
 みなぞくりとした顔でウェインを見た。
「うっわぁ、忘れてたぁ」
 頭を抱え込むブレンダ。
「カカンバーさん、ファイト!」
 カカンバーの手をギュッと握り励ますシェーン。
「頑張ってどうにか出来るものじゃないけど、まぁ、気をつけて」
 アルノーも困ったようにアドバイスを送るが、
「んだ。気をつけてみる」
 当の本人だけは呑気な笑顔を浮かべていた。

(前篇完→後篇に続く)

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カカンバーさんの口調が上手く書けない。
シラ様、このプラリアを読んでいらっしゃったら、ご指摘をお願いします。
あ、その前に。
カカンバーさんを勝手に出して申し訳ありません。m(_ _ )m