ガルシア家の事情1

ガルシア家の事情2



3.
 受勲式の日、ガルシア伯爵は痛む胃を抱えながら式に参列した。
 本来なら我が娘の晴れがましい席であった受勲式だが、今やそれは忌々しい呪いの儀式に見える。
 このような式に参加している間にも、愛しい娘が駐屯地でどこの馬の骨とも分からぬ男と仲良くしているのかと思うと、居ても立ってもいられなかった。
 (そもそも女王の近衛騎士に反対の者がいらぬ事をしたばっかりに・・・・・・)
 そもそも独り立ちしたいと言ったブレンダに近衛騎士になることを条件にしたのはガルシア伯爵なのだが、その責任を他の貴族になすりつけ、血走った目で参列する貴族たちを睨み付ける。
 (そもそも女王が近衛騎士を公募にするから・・・・・・)
 自分が女王派の貴族であることも忘れて、壇上にいる麗しい女王に恨みがましい視線を送る。
 今のガルシア伯爵は、誰彼構わず当たり散らしたい気分だった。
 (そもそも一体誰なんだ! 可愛い娘をたぶらかした男は!)
 ガルシア伯爵の目に女王から勲章授けられる第三教導中隊の面々が映った。
 (あいつか?)
 ブラムス・マハトマジークをじろりと睨んで、伯爵は考える。
 (まだ第1段階とはいえ人契竜と契約した者だ。それなりに実力者だろう。・・・・・・いいや、ダメだ! あのような軽薄そうな男にブレンダはやれん)
 すでにガルシア伯爵の頭の中では、第三教導中隊の男=ブレンダが将来誓い合った男という図式ができあがっているようである。
 (それともあの子か? ブレンダとは年が近そうだが)
 次に目が行ったのはラナシュ・アヴァロン。
 (年の割には大人びた目をしている。それにどうやら賢そうだ。・・・・・・いいや、ダメだ! 報告書によるとあの者は身分が低いらしい。そのような男にブレンダはやれん)
 ガルシア伯爵の目はウェイン・ロスマリヌスへと移る。
 (あの者は確かロスマリヌス家の子息。あの者か? ロスマリヌス家なら経済的に不自由はしないはずだが)
 ジッとウェインの海の男らしく日焼けした顔を見つめる。だがすぐにブンブンと首を振った。
 (いいや、ダメだ! 海の男は女にだらしがないときく。港港に女を作るとも。そんな男にブレンダはやれん)
 最後にガルシア伯爵はアルノー・アインハルトに目を止めた。
 (あの者は確かアインハルト家の次男坊。竜と契約し騎士団に所属していたが、先の大戦で何の勲功も上げず出世の見込のない者だったが)
 ガルシア伯爵は物を測るような鋭い瞳でアルノーを見つめた。
 (・・・・・・勲章を受けるということはそれなりに才能はあったのだろう。女にだらしがないようにも見えんし、アインハルト家の長男は政界に顔が利く。経済的には決して裕福とは言えんだろうが、同じ貴族だ)
 ガルシア伯爵は深くため息をついた。
 (あの者だろうか? そもそもブレンダの手紙を預かったのはあの者に違いない。ブレンダの名前でガルシア家の名が思い浮かぶなど、貴族出身者しかいないからな。それに、あの者ならちょっとは許せそうな気がする・・・・・・)
 ガルシア伯爵の心は揺れに揺れ、ふと優しい目でアルノーを見つめそうになるが・・・・・・。
 (いいや、ダメだ!)
 慌てて頭を振る。
 (あんなモブに紛れたら見つけられなさそうな地味な顔などブレンダに最もふさわしくない男だ!)
 もはやいちゃもんとしか思えない理由を付けてアルノーも却下する。
 (よし、あの男は女王にせっついて辺境勤務にしよう。遠恋となれば、ブレンダもやがて諦めるだろう。それに他の男も、なんだかんだと理由を付けて物騒なところへ追いやろう。いいかお前ら、ブレンダに一歩でも近寄ったら、その命無いと思え)
 何とも物騒なことを考えながら、ガルシア伯爵は人が殺せるほどの殺気を視線に含ませ、4人を睨んだ。


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その頃のブレンダ。
「圭さ~ん! まったくどこ行ったんやろ、あのおっさんは。枯野の原に一緒に行こう思ったのに」


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ところで、受勲式の4人は。
「なんか妙な殺気を背後に感じるのだが」
「アルノーもか? 実は俺もなんだ」
「ブラムスも!? 誰だろう?」
「きっと反女王派ですよ。我々の受勲が気に入らないとか」
「そうかな? なんかこの場から生きて帰さんというぐらいの殺気を感じるのだが?」
「そうそう。例えて言うなら娘を取られた父親の殺気という感じかな?」
「心当たり無いぞ」
「私もないですよ」
「僕にあるわけ無いだろ」
「一体何なんでしょうねぇ」


(ガルシア伯爵はあたしに何か言いたいことがあるわけ~?(努))


                                    (おわり)