はい、箸休めの回です
「君に仕事がある」
と言われたら何を想像しますか?
アルバイト?
リクルート・ヘッドハンティングされてる?
わざわざ私を選ぶのだから、何か特別な仕事なのかな?なんて期待したり。
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知人のパキスタン人女性は専業主婦ですが、たまぁ〜にご主人の仕事の手伝いをします。でもここ一年程は手伝いをしていません(※ここ大事)。
ところが小学生と中学生のお子さんが「お母さんが仕事があるから早く帰ります」と早退を頻繁にしました。
お母さんが車で学校送迎するので、お母さんが「仕事で」出かけると下校時間に迎えに来れず帰れなくなるので早退します、という意味だと。
学校から「お母さんは今仕事をしていない(=お父さんを手伝っていない)と聞いているんですけど…」と、上記の早退の件を聞かされました。
「何故『お母さんが仕事だから』なんて言うんだろう?」と皆が思っていました。
残念な事に、関係者各位の脳裏をよぎるのは
「仕事していない筈なのに…え?早く帰るための虚言(それも親子で口裏合わせて)?」という疑惑の念。
しかし。
先日ふと気付きました(今日の本題です)。
ウルドゥーで「仕事」は kām(カーム: 男性名詞)と言います。
「これは私の仕事です」
yeh mērā kām hai
「私(男性)は毎日仕事に行きます」
maiN rōz kām pe jātā hūN
で・す・が。
kām には別の意味もあります…日本語的には。
「用事」です。
そう、「用事」。
どんな些細なことでも、です。
家で留守番する、親の留守中に兄弟の世話をする、孫の世話をする、家にお客さんが来る、たまった宿題を終わらせる、フリマに出すものをまとめる、買い物に行く、公共料金の支払いに行く、友達/恋人に会う、家族の付き添いで〇〇へ行く…
「買い物へ行く」はある意味仕事(家事)ですが、「仕事」という意味以外にこういう「ごめん、用事があるから帰るね」という理由になるようなものも kām と言います。
「僕はちょっとモスク(マスジド)に用事がある」
mujHē zarā masjid meN kām hai
(ムジェー・ザラー・マスジド・メん・カーム・ハィ)
「私はあなたに用事がある」
mujHē āp se kām hai
(ムジェー・アープ・セ・カーム・ハィ)
「私は今日大事な用事がある」
āj mujHē zarūrī kām hai
(アージ・ムジェー・ザルーリー・カーム・ハィ)
なので冒頭の「君に仕事がある」も「君に用事がある」「君に頼みたい事がある」という意味の可能性大、なのです。
そして前述の「お母さんの仕事があるから早く帰ります」もお母さんの仕事があったのではなく「お母さんの用事があるから早く帰ります」の意味だったと判明しました(※本人確認済み)。
ウルドゥー的には「仕事」も「用事」も kām なので「え?どっちの意味?」とは殆ど気にならないようです。
↑
「いやいや、気になるだろ?」と思われると思って、喩えをうんうん考えました。
たとえば英語のbrother/sister。ウルドゥーでも bHāī(バーイー)/behn(ベヘン)ですが…
日本語に訳す時凄く気になりません?
兄/姉なのか弟/妹なのか
でも英語では相当説明が必要な時以外本人は気になりませんよね
それと同じ感覚なのだと思います。
…ただし日本語的にはかなり意味合いが変わるので、不自然な「仕事」という単語の使い方をするウルドゥー/ヒンディー話者がいたら是非「日本語で things to do は『仕事』ではなく『用事』という」と教えてあげてください。
逆に日本人の学習者さんは「『仕事』も『用事』も kām 」と覚えてください
ウルドゥーとイラストのLINEスタンプ作りました