◉「この風に吹かれて」が出来るきっかけ

「母は僕の目の前で一度死んだ」

母は認知症を患っている。家族で旅行を楽しんでいた宿泊先のホテルで徘徊してしまい、その時の実体験からこの曲が生まれた。そのエピソードはロスアンジェルスの日系人コミュニティのネット誌、かわら版の6号2020年10月1日発行15ページ目に詳しく書いてある。友人が僕のFBを見て、ぜひ掲載させて欲しいとのことで、了承をした。

そんな僕にとってつらいエピソードがあって、いつからかすべてを忘れた母のために曲をつくろうと決心することになる。じつはこの曲、2019年6月にリリースされた「響 ~THE SOUNDS OF JAPAN~」のアルバムに入れるつもりで作っていた曲だ。曲のアレンジも歌詞も完成していたのだが、メンバーの曲を優先していったら、この曲だけがアルバムに入れることが出来なかった。しかしこの話には続きがあったのだ。そのきっかけが2019年12月、浅草花劇場でAUNJのコンサートに遊びに来てくれていた鈴木瑛美子さんだった。AUN J の響アルバムで山田路子作詞作曲の「桜小道」でご一緒したことがあった。彼女はライブ後すぐに声をかけてくれて、照れ臭そうにあの歌いたいと言ってくれた。どんなに嬉しかったことか。それから年をまたいで間もなく、青天の霹靂!コロナ渦を迎えることになる。未曾有の事態であったが、そんな中でもこの曲や「日本応援団2020」を含む5曲のレコーディングをし、「この風に吹かれて」インスト版は東京都がアーティストを支援する「アートにエール」に掲載されることになる。そしてあのライブから一年後、2020年12月にとうとう瑛美子さんの歌入れレコーディングが実現。それから10ヶ月後の今日、やっとみなさんに届けることが出来た。僕にとってずっと気にかけていた曲が、配信リリースされることが、元気でいる母への恩返しでもあるし、自分自身への癒やしにもなっているのかもしれない。そんな想いがこもった曲だということをここ記しておきます。最後まで読んでくれてありがとう。ぜひ聞いてくださいね。
次は歌詞の情景をお伝えする予定です。
井上良平

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#AUNJ  #この風に吹かれて #鈴木瑛美子