ルカによる福音

 〔そのとき、〕4・31イエスはガリラヤの町カファルナウムに下って、安息日には人々を教えておられた。32人々はその教えに非常に驚いた。その言葉には権威があったからである。33ところが会堂に、汚れた悪霊に取りつかれた男がいて、大声で叫んだ。34「ああ、ナザレのイエス、かまわないでくれ。我々を滅ぼしに来たのか。正体は分かっている。神の聖者だ。」35イエスが、「黙れ。この人から出て行け」とお叱りになると、悪霊はその男を人々の中に投げ倒し、何の傷も負わせずに出て行った。36人々は皆驚いて、互いに言った。「この言葉はいったい何だろう。権威と力とをもって汚れた霊に命じると、出て行くとは。」37こうして、イエスのうわさは、辺り一帯に広まった。

 

 古代の呪術や宗教的世界観では、「相手の本当の名や正体を言い当てることで、その相手に対して優位に立つ、あるいは支配権を奪い返す」という考え方がありました。

 悪霊は、イエスに「神の聖者」と先にイエスの正体を叫ぶことで、イエスの力を封じ込めようとしたのかもしれません。

 悪霊のの叫びは、「イエスの圧倒的な神聖さと権威の前に、悪霊が恐怖とパニックに陥り、自分たちの破滅を予感して思わず本音を叫び出してしまった瞬間」を表しています。

 この直後、イエスが「黙れ。この人から出て行け」と悪霊を叱りつけると、悪霊はその人から出て行きます。

 イエスの宣教は地上を支配する悪霊との戦いでもあります。