ルカによる福音
1・39そのころ、マリアは出かけて、急いで山里に向かい、ユダの町に行った。40そして、ザカリアの家に入ってエリサベトに挨拶した。41マリアの挨拶をエリサベトが聞いたとき、その胎内の子がおどった。エリサベトは聖霊に満たされて、42声高らかに言った。「あなたは女の中で祝福された方です。胎内のお子さまも祝福されています。43わたしの主のお母さまがわたしのところに来てくださるとは、どういうわけでしょう。44あなたの挨拶のお声をわたしが耳にしたとき、胎内の子は喜んでおどりました。45主がおっしゃったことは必ず実現すると信じた方は、なんと幸いでしょう。」46そこで、マリアは言った。「わたしの魂は主をあがめ、47わたしの霊は救い主である神を喜びたたえます。48身分の低い、この主のはしためにも目を留めてくださったからです。今から後、いつの世の人もわたしを幸いな者と言うでしょう、49力ある方が、わたしに偉大なことをなさいましたから。その御名は尊く、50その憐れみは代々に限りなく、主を畏れる者に及びます。51主はその腕で力を振るい、思い上がる者を打ち散らし、52権力ある者をその座から引き降ろし、身分の低い者を高く上げ、53飢えた人を良い物で満たし、富める者を空腹のまま追い返されます。54その僕イスラエルを受け入れて、憐れみをお忘れになりません、55わたしたちの先祖におっしゃったとおり、アブラハムとその子孫に対してとこしえに。」
56マリアは、三か月ほどエリサベトのところに滞在してから、自分の家に帰った。
ルカ福音書の聖母賛歌はラテン語でマニフィカト(Magnificat)と言われます。その理由はこの賛歌の最初の一句がMagnificatだからです。
ラテン語のMagnificatの日本語訳は「あがめ」です。しかしこれではラテン語のニュアンスが分かりません。Magnificatはmagnum(大きい、偉大)+facere(する、行う)を組み合わせた合成動詞です。
神が人間に大いなるわざをなすとき、それを体験する人間の感動がマニフィカトです。
天使ガブリエルの言葉にフィアット(なりますように)と応えたマリアは、聖霊によってイエスを宿します。イエスを宿し、出産した後も、聖霊の働きはマリアの中で大きくなり続け、地上でのつとめを終えたマリアは聖霊に満たされて天に挙げられました。
被昇天はそれを祝います。
マニフィカトは、静かでつつましい祈りの歌ではありません。
それは「神の愛と正義がこの世に及ぶとき、人間の作った不当な支配階級や格差は崩壊する」ことを宣言する、キリスト教史上最も古く、最も過激な「神の革命の歌」であると言えます。
本日は81回目の日本の終戦記念日です。
「戦争は忘れた頃にやって来る」と申します。物理学者の寺田寅彦は「天災は忘れた頃にやって来る」という警句を発した人です。地震のような天災は防ぐことができませんが、人災である戦争に対しても同様の戒めとして語り継がれてきた言葉です。
戦争の悲惨さや平和の尊さが、時間の経過や世代交代とともに薄れていくことに対する強い危機感を示しています。
日本国憲法第9条の、第1項には戦争と武力行使の放棄、第2項には戦力の不保持と交戦権の否認が述べられています。
アフガニスタンやパキスタンで長年にわたり医療支援や用水路建設などの人道支援に尽力し、現地で凶弾に倒れた医師・中村哲さんは、日本国憲法第9条について現場の経験に基づいた深い持論を持っていきました。
彼は、海外の紛争地帯で活動した実体験から、憲法9条を単なる理想論ではなく、日本人が思っている以上に現実的で強力な盾であると捉えていました。彼は、「憲法9条は日本に暮らす人々が思っている以上に、リアルで大きな力で僕たちを守ってくれている」と語っています。
中村さんは「軍服を着て武器を持つこと」ではなく、「戦争に加担せず、平和を貫いたことそのもの」が日本のもっとも大きな国際貢献であると主張しました。武力による介入や利権を背景にした外交がもたらす悲惨さを目の当たりにする中で、「戦争しなかったというそのことが、大きな貢献だった」と述べています。
中村さんは武器や軍事力ではなく、「シャベルで用水路を作る」ことで現地の生活再建に挑みました。「銃口を向けられても打ち返さない」「護衛にも武器を持たせない」という徹底した非暴力の姿勢を貫き、砂漠化した大地を緑に変える灌漑事業を成し遂げました。
彼は、真の平和や治安の安定は軍事力ではなく、「人々が飢えず、安心して暮らせる環境(命の水や食料)を整えること」から生まれるという信念を、その生涯をかけて体現し続けました。
日本を戦争のできる国にしようとする勢いが強まる中、わたしたちは武器や軍事力によらない平和を築こうとした中村さんの生き方に学び、キリストの平和が地上にもたらされますようにと祈りましょう。
聖母の被昇天については女子パウロ会ホームページをごらんください。
https://www.pauline.or.jp/calendariosanti/gen_saint50.php?id=081501