第1章
あるところにそれはそれは小さな王国がありました。
王国の名前はカデンツァと言いましたが、又の名を人形の王国と呼ばれることもありました。それは住民の大半が、元は動物のぬいぐるみや人形などのオモチャだったからです。
かりそめの命を得た住民たちは自由に体を動かしたり、人間そっくりに化けることも出来ましたが、びっくりしたり、悲しい目にあったりすると、元の人形に戻ってしまいます。
王国は名前のとおり王政は布いてましたが、みんな仲良く、とても幸せに暮らしていました。
それというのも、王様という名前の王様がとても温厚で、みんなから慕われていたからです。
「オーホッホッホ、今日もいい天気じゃの~」
王様は高音域のソプラノで、晴れやかに笑いながら、お城の塔の一番高い部屋から王国の朝を見下ろしていました。
王様の顔はまん丸で、ずっと前に両耳が取れてしまったので、クマさんだったのか犬さんだったのかはわかりませんが、淡い金色の毛の丸っこいぬいぐるみが、オモチャの金色の王冠をちょこんと頭にのせているだけみたいです。瞳はよく晴れた朝のお空のように晴れやかなブルーです。
「ムムッ!?」
にぎやかに物売りや鳥の声が行き交う街の広場を見下ろした後、反対側のもうひとつの」窓に目を転じた時です。
その時、にわかに王様の表情が曇りました。
断崖に建つお城の先は、青い海。
水平線は王国を囲むように弧を描いて、きらめいています。
とてものどかな海と朝日はフォークダンスをしているみたいにくるくる光を反射させています。
けれど、ある一部分だけが、くっきりと黒い影を浮き上がらせていました。不気味な黒い船に、はためくのはお決まりの髑髏のマークをしるした旗です。
「ま、まちゃか!?」
ああ、何ということでしょう!? いきなりピンチです!!
王様の不安は数時間後に現実になるのです。
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そうです。
王国にとって仇敵ともいえる男が手下を引き連れて、遂にやってきたのです!
ああ、いきなり王国の存亡はいかに!?
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