その日彼は、あたしを部屋に入れようとしなかった。

いつもより暖かく、日差しもあったけど、

玲音の表情から、あたしはただならぬものを感じて寒くなった。

ちょっと、外で話したい。

そう言った彼のあとを、少し離れて歩く

「なんか、いつもと違う。」

司と話したよ。

だからかな。

「えっ!?…なにを?」

まなさ、やっぱもう、俺んちに来ないでくんないかな






言われたことの意味がわからなくて、
黙ったまま彼の肩のあたりを見つめた。

司に言ったよ、俺らのこと

「なんで?」そんなに寒くないのに、
体が震えた。

ていうか、その前に気づいてた、司は。

俺がしてることは、ほんと最悪でサイテーだろ。

友達の彼女とやっちゃうとかさ、
人としてありえないよ

はじめは、このままこっそりまなと会い続けるのもありなのかなって思ったよ。

まなが真ん中で、相手が司なら
それでもいいのかもって

俺、まなのことはほんとに好きで大切で
そばにいられたらどんなにいいかって
ずっと思ってきたけど。

あたしたちの横を、知らない人達が次々に通りすぎていく。ふたりの周りだけが切り取られた空間のように思えた

だけど今は俺、まなのことを好きな自分がすげー嫌いだ。

ズキン、と胸が痛くなる。

司は、素直じゃないからなんも言わないよ

けど、すごく傷ついてる。

あんな感じだからさ、勝手なイメージで特別視されて、
大丈夫だろうとか思われちゃうこと多いけど

フツーに傷付くし落ち込むし、

何より、まなのこと大事に思ってる。

それわかってて俺は、まなとあんな…

後悔してんだ、心の底から。
玲音の声は震えていて、今にも泣き出しそう。

何度も何度もあたしを好きだと言ったくちびるが
心の底から後悔していると言う。


あたしはショックのあまり、
足元がふらついて倒れそうになった。

あたしには、後悔なんてなかったから。

「戻れないって、玲音が言った」

…言ったね。

「司と会うなって言った」


あたたかい涙が冷たい頬を、すべりおりていく

あのときは、夢中だったから

ああいうことばも出るよ。

「それをぜんぶ、後悔してるってこと?」

全部だよ、あの夜まなを家に呼んだことも。

まなを、好きになったことも。


待ってよ

「あたし、司に別れるって言ったよ」

は?

うそだろ。