六月
茨木のり子
どこかに美しい村はないか
一日の仕事の終わりには一杯の黒ビール
鍬を立てかけ 籠をおき
男も女も大きなジョッキをかたむける
どこかに美しい街はないか
食べられる実をつけた街路樹が
どこまでも続き すみれいろした夕暮れは
若者のやさしいさざめきで満ち満ちる
どこかに美しい人と人の力はないか
同じ時代をともに生きる
したしさとおかしさとそうして怒りが
鋭い力となって たちあらわれる
茨木 のり子(いばらぎ のりこ)
1926年(大正15年)6月12日 - 2006年(平成18年)2月17日
日本の詩人、エッセイスト、童話作家、脚本家。
戦後詩を牽引した日本の代表的女性詩人で
1953年(27歳)に詩人仲間と同人誌『櫂』(かい)を創刊。
戦中・戦後の社会を感情的側面から清新的に描いた叙情詩を多数創作。主な詩集に『鎮魂歌』、『自分の感受性くらい』、『見えない配達夫』などがある。
今回の紹介詩の「六月」は高校の教科書などでも取り上げられた時期もあり、学生時代にこの詩に触れた事もあるという方もおられる事でしょう。
当時思い描いていた戦後の理想郷とは
この詩にあるようなものだったのでしょうか・・
曇天の、だけど暗くない夕方に労働後にジョッキを傾け大勢が集い合う。
それはある意味平和である事の象徴であり、
現代でも理想的な光景なのかもしれませんね・・
言葉として非常に美しいこの詩に
現代合唱界のヒットメーカー、
高嶋みどり氏が抒情的なメロディーを付け、
女声合唱の名曲を作り上げました。
女声合唱とピアノのための「女の肖像」より
六月
作詩:茨城のり子
作曲:高嶋みどり
1989年度の全日本合唱コンクール課題曲として、
そして、1992年のNコンの自由曲として、
安積女子高等学校が素晴らしい名演を残しています。
上記の演奏は92年のNコンのものです。
前回「五月」にまつわる不朽の名曲をご紹介しましたが、
今回は「六月」にまつわる、これまた不朽の名曲をご紹介いたしました。

