ねこから獲物を奪う方法 | ありがたい日々

ありがたい日々

今日もツイてる!


今日は暇だわ眠いわで、16時に職場を去った。


たまにこういう日があると、気分も楽ちん。



明るいうちに職場を出たため、まだ鳥が空を飛んでらー。


通りに小鳥も歩いてらー。


赤坂の道には小鳥さんのご飯落ちてるかい?


赤坂の飲み屋街には、猫がいるから気をつけなね。


と心で話しかけた。




それで思いだしたが、わたしが小さかったころ、


よくうちの実家のばばあ(ばばあという名前の猫)は、スズメやらネズミを外で仕留めては、家に持ち帰ってきて、ほとほと困った。



そういうある日、外に出かけていったばばあが、窓の外で「うーうー」と鳴くので、(おっ、散歩から帰ってきたか)と思って窓をあけてやると、口に獲物をくわえたままばばあが入ってきた。



「うわー!!まただー!!」って家族みんなでひっくり返ってびっくりしたが、


よく見ると、獲物は真っ黄色のヒヨコである。ヒヨコなんて初めてみた。



どうやらばばあは近所の物流会社の倉庫に忍び込んだらしく、これからどこかのヒヨコ分別場へ運ばれていくであろうヒヨコをくわえて帰ってきたようだった。



かわいそう過ぎる光景だった。



ヒヨコはまだ生きていて、ばばあにくわえられながら、ピーピー鳴く。



ばばあは興奮して、ウーーーとうなり声。



目もすわっている。



わたしがばばあを追いかけ回したら、たんすの陰に入り込んでしまい、出てこなくなった。



ばばあはウーウー言ってるし、ひよこはピーピー鳴いてるし、



うわーどうしよどうしよ!とわたしは慌てたが、母が突如、



「ああイイコねイイコねードキドキよく取れたわねーかわいいヒヨコ取ってこれたのねー。すごいねすごいねーラブラブ


と、優しい声でばばあに話しかけた。


ばばあは、なおもウーウー言っていたが、


母が、「ねーとってもかわいいヒヨコちゃん、わたしにチョウダイ?ドキドキ


ってばばあに向かって、掌を差し出したら、



ばばあが突然静かになって、(ん?)って表情で何かを考え始め、



もう一度母が、


「ちょうだい?ラブラブ


って掌を出したら、



のそのそーっとたんすの陰から出てきた。



そして、母の掌のほうへひよこをくわえた口を差し出したまま立ち止まり、


ヒヨコを母にあげようかどうしようか考えているような目をしている。



猫も、人に褒めてもらったり、認めてもらうと嬉しいようだ。

獲物を母にあげてもイイような気分になってるように見えた。



ヒヨコはしばらく鳴かないでいたが、その時またピーピー鳴き始めた。



そうしたら、ばばあが再びヒヨコをグッとくわえ直して興奮し始めた。



母は、その瞬間に、ばばあを取り押さえ、ばばあの口に指を差し込みねじあけようとした。


しかし猫の顎の力はかなりのものだ。母は指をかまれて、ギャって言って指を引き抜いた。



だが、母はそこで負けるわけにはいかなかった。


なにくそ!と、とっさに、ばばあの鼻の両方の穴を人差し指でピタっとふさいだ。



1、2、3。




ばばあは、母に首根っこをつかまれながらも頑張ってヒヨコをくわえていたが、無念、、鼻の穴をふさがれた3秒後、鼻呼吸ができず、苦しくなったのだろう、グワって言って、ひよこをくわえている口をあけた。


かくの如くして、ヒヨコはようやくばばあから解放された。




ヒヨコはポタって、畳の上に落ちた。



ばばあが噛んでいたヒヨコの首から肩にかけては、羽が抜けて皮膚もむけて、スーパーのささみみたいなピンク色の肉がむき出しになっていた。


さっきまではピーピー鳴く元気があったのに、


いつの間にかクタっとしていて、そしてそのまま、母の掌の中で死んでいった。



わたしはヒヨコがかわいそうでならず、悲しくて泣いた。



ばばあは猫なので道理が分かる相手じゃない。


だからばばあを怒ったところで、しょうがないのは分かっていた。



ばばあは、「あっち行っとれ!ばかもの!」と母に怒られていた。



その夜、ばばあに対するお咎めが決まった。



『外出禁止の刑3週間』



謹慎処分中、ばばあは来る日も来る日も、出窓で外を眺めていた。


その間に、ばばあのボーイフレンドである野良猫のおっさんは、今までうちのばばあに夢中だったのに、ばばあが外出できなくなってからというもの他の若いメス猫を追いかけ始めた。


ばばあなんかより、ずっとかわいいメス猫だった。


ばばあは、自分ちの庭でボーイフレンドのおっさんが、若いメスを追いかけているところを、真剣に見つめていた。




「男はこんなもんやからな。よー見とき。」と、母はわたしに言った。




おっさんはうちのばばあにあれほど夢中だったのになあ、と子供ながらに、おっさんの心変わりに驚き、少しばばあを不憫に思った。




何が言いたかったかというと、




猫は、鼻を押さえれば口が開く。




ということだ。



母がばばあの鼻の穴をふさいだのは、とっさの行動だったらしい。




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