数年前、ESLにほとんど英語の話せない日本人女性が現れました。

 

年齢は私より一回り上といった感じでしたが外見からは70歳台くらいに見え、不潔ではないけれど決して清潔とは言えない身なり。一見して、ちょっとおかしいことがわかる感じ。

 

自己紹介で言ったのは、30年ほどアメリカで暮らしていて夫はアメリカ人であること、自分は英語がわからないが夫は日本語がわからない。夫が先立ったら自分一人になってしまうので、英語を勉強なければと思ったということ。

 

20人くらいのクラスメイト全員が、ポカーンとした。

 

そうはいっても最低限の英語力はあるだろうという空気が流れましたが、見事に全くダメ。

 

先生の指示を理解できないし発言もできないし、読み書きもほとんどダメ。日本人は発言はできなくても理解はできたり読み書きがちゃんとできるというのが定番ですが、この人は信じられないほどになにもできなかった。先生に「悪いけど、通訳してあげて。」と言われて、私はこの日の授業でひたすら通訳の仕事に終始。

 

授業後に彼女は担任から軽くヒアリングを受けることになり、これにも通訳として同席したのですが、そこで先生が「日常会話はどれくらいできますか?」と聞いたのに対して彼女の答えは「基本的にはYesかNo、もしくはThisとThatで会話が成り立つので、その程度です。」

 

成り立つか?

 

思わず「旦那さんとはどんな感じで会話をするんですか?」と聞いたら「日常で会話をすることはない」と即答され、それを担任に伝えたら無我の境地みたいな顔つきになった。

 

あれから数年経った今、私はついにその「日常会話」が「成り立つ」瞬間を目にしました。

 

結論から言うと、会話として全く成り立っていなかった。

 

ただただ一方的に旦那がまくし立て、妻はその内容をニコニコ笑って聞いていたけれど、誰がどう見ても妻は夫の会話を一切わかっていない。

 

自分が日本人であることを人前でバカにし続ける夫に対してただニコニコ笑い、しかもずっと無言。さらには妻のクラスメイトを本人たちの前でバカにし続けてるのに、それでもずっとニコニコ笑ってる。加えて、夫の発言に明らかに変なタイミングで何度も頷いてる。壊れた赤べこみたいな感じ。

 
あれで「会話が成り立っている」と言えるなら、夫婦のコミュニケーションに悩む私たちは一体なんなんだ。と言う話で、その後は大盛り上がりしました。