65歳で「年金月16万円」だったが…75歳での「受取額」に歓喜も「まさか、年金ゼロ⁉」に悲鳴

平均的なサラリーマン夫婦が手にする年金額

総務省「家計調査家計収支編」(2022年)によると、65歳以上・無職の夫婦の1ヵ月当たりの生活費(消費支出)は23万6,696円。年金額面の10~15%程度が天引きされると考えると、夫婦で27万円ほどの年金収入があれば「年金だけで生活する」という見通しがたちそうです。 では平均的なサラリーマンが手にする年金額を考えてみましょう。まず厚生年金の計算は、厚生年金であれば加入期間が2003年3月までは(1)「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」、加入期間2003年4月以降は(2)「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で算出できます。今回はシンプルに(2)だけで考えてみます。 厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、サラリーマン(正社員/平均年齢43.5歳)の平均給与は月収(所定内給与額)35.36万円、年収で579万円。各年代の平均給与は以下のとおり。 【年齢別「サラリーマンの給与」】 20~24歳:221,900円/3,461,700円 25~29歳:262,200円/4,373,100円 30~34歳:301,600円/5,080,800円 35~39歳:341,800円/5,734,100円 40~44歳:370,700円/6,162,800円 45~49歳:395,900円/6,520,900円 50~54歳:421,400円/6,931,200円 55~59歳:431,000円/7,016,600円 60~64歳:350,500円/5,372,700円 出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』より ※数値左より月収(所定内給与額)/算出した年収 仮に20~60歳まで、平均的なサラリーマンの給与を手にしてきたと仮定すると、平均標準報酬額は47万円。厚生年金は月10.3万円となる計算です。国民年金も合わせると月16.7万円、片働きの場合は夫婦で月23万円ほどの年金を手にすることになります。 平均的な生活をするには、月4万円ほど足りない計算。その分は、貯蓄を取り崩して生活する、ということになります。

 

ただ、最近は60歳の定年をもって仕事を止めてしまう人は少数派。多くが再雇用制度などを利用して、そのまま働き続けるのが一般的です。また現行、原則65歳から年金を手にできますが、「働いている間は年金の受け取りは先にしよう」と選択する人も。 年金の受け取りを先延ばしにすると、将来的に受け取る年金額を増やすことができます。これが「年金の繰下げ受給」。66歳以降75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることができ、その増額率は一生変わりません。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げることも可能です。その増額率は増額率1ヵ月あたり0.7%。75歳まで繰り下げると84.0%、受取額はアップします。 前出のサラリーマンの場合、75歳まで年金の受け取りを繰り下げたとしたら、手にする年金は30.7万円。パートナーも同様に考えると、夫婦で月42万円ほどの年金を手にすることになり、これが生涯続く計算です。 「これだけ年金があれば、悠々自適な生活が送れる!」 そうせっせと働き、75歳まで年金の受け取りを繰り下げたとしましょう。ただ年金の繰下げに際し、いくつか注意点があります。そのなかでも大きなものが「認知症」です。65歳以上の認知症患者数は2025年には約675万人(有病率18.5%)と、高齢者の5.4人に1人程度と予測され、年齢を重ねるごとに発症リスクが高まることは知られています。仮に年金繰下げ中に認知症になってしまったらどうなるのでしょうか。 年金の受給を開始するには、年金請求書に必要事項を記入し、必要書類とともに年金事務所等に提出します。これには代筆が認められ、委任状持参で代理人が手続きすることも可能です。ただし、いずれも本人の意思表示が前提です。 また年金受取口座は、年金受給者の本人名義の口座を指定します。認知症の場合、金融機関の判断により口座凍結にいたることもありえるでしょう。 つまり「年金が受け取れない!」「まさか年金ゼロ円⁉」という事態に陥るわけです もちろん、このようなケースでは泣き寝入りするしかない、ということではありません。成年後見人を選任したうえで年金の受け取りを請求したり、口座凍結の解除を申請したりすれば、予定通り、84%アップした年金を受け取ることができます。 年金を増額できる「年金の繰下げ受給」の制度。起こりうるリスクと対処法も合わせて知っておきたいものです。