村井裕弥のHI-END SHOW2009 レポート | 西野和馬のオーディオ西方浄土パート2

村井裕弥のHI-END SHOW2009 レポート

 

 史上最強のデジタルアンプかもしれない

 ―― Nmode(リリック)――


 サウンドデザインという名を、あなたはご存じか。ソニーで高速1bitアンプを作っていた石田正臣さんが興したブランドで、SD-05が主力製品(525,000円・部品の入手困難により、現在は生産を中止しているらしい)。


一方Nmodeはといえば、シャープで高速1bitアンプを作っていた布村常夫さんが興したブランドで、主力製品はCDプレーヤーX-CD1とデジタルプリメインX-PM1(いずれも139,000円)。



 
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サウンドデザインは、横浜の「A&Vフェスタ」に何度も出展していたから、その音を覚えていらっしゃる方も多かろう。手っ取り早く要約するなら、「機械の音とは思えぬほど、自然な音」。「押しつけがましさのない音」である。しかし、Nmodeの音はまるで違う。


 「ええ。皆さん、こんにちは。Nmode(エヌ・モード)の布村です。もうオーディオ各誌ですっかり過去がバレておりますので言っちゃいますけど、わたくし以前シャープに勤めておりまして、この会場でもSM-SXシリーズのデモを何回かやらせていただきました。


「初代機SM-SX100がちょうど10年前、1999年夏に出まして、同年秋にはSM-SX1、01年暮れにはSM-SX200、04年夏にはSM-SX300、05年夏にはSM-SX10と出してきましたが、わたくしは2006年に定年退職。シャープはピュアオーディオ事業から撤退したこともあり、『ああ。もうオーディオに関わることはないのだなぁ』と九州の志布志でのんびりしてたんですよ。そうしたら、かつて高速1bitアンプを支持してくださった方々が『お前、私たちを置き去りにするのか』とひどく突っつかれまして、こうやって引っ張り出された(笑)わけです。NmodeのNは、布村のN。非常にわかりやすいでしょ」。


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「幸い、1号機X-PM1は好評で、CDプレーヤーX-CD1も高いご評価をいただくことができました。しかし、今のご時世、139,000円のアンプを買える人ばかりではない。『もっと手の届きやすい製品を』ということで開発したのが今秋の新製品X-PM2(89,800円)なのです。4Ω負荷で15W15Wという定格出力は小さく感じられるかもしれませんが、特に能率の低いスピーカー、特に鳴らしにくいお部屋でなければ、充分余裕があります」



 


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といって、布村社長が指し示したスピーカーは、ディウディオのFocus220(ペア430,500円)。17センチ・ウーファー2発を擁する2ウェイ3スピーカー・システムだ。公称インピーダンス4Ω、能率は87dB。「特に低能率」というわけではないが、「けっこう低能率」と呼んでよい製品ではないか!? これはなかなか手強いぞ。ハチキュッパのアンプでこれを鳴らすの? ホントに?



 最初にかかったのはSugarSoul(日本人R&Bユニット)のライヴ録音。わわわわっ!! 何だこの立ち上がりは。ドッカンと迫ってくる直前が静かであるだけに、ドッカンが何倍も強烈に迫ってくる? 正直言って、苦手な音楽ジャンルだが、ぐいぐい引き込まれてしまうのは、それだけスピーカーが手玉に取られているということか。



 次はアーロン・ネヴィル。ああ。なんてきれいなファルセットだろう。しかしこの美しさも、S/Nの高さがなせるワザ。これは「大きな音を出すと、近所の人におこられるけど、ショボイ音を聴くのは嫌」という人に格好の製品かもしれない。



 「皆さん、よろしいですか。このアンプ、消費電力が何と最大で7.2W。1か月電源入れっぱなしでも、電気代は120円」


 会場が大きくどよめく。


 次は、藤井寛(Vib)が率いるジャズ・クインテット。ベースの「ずーん」と沈み込む低音など鼻歌。ヴァイブの「ゴツン」もたくましい。拳の硬さがカ・イ・カ・ン・みたいな。



 「では、ここでアンプを初代機X-PM1に替えます。こちらは4Ω負荷で90W出せます。PM2の6倍ですからね。行きますよ」


 かかったのはヘルゲ・リエン・トリオ『SPIRAL CIRCLE』から7曲目「テイク・ファイヴ」。基本、北欧ジャズだが、途中からはけっこう激しい!!


 「皆さん、次は外側に置いてあるディナウディオを、X-PM1で鳴らします」


 外側のディナ? Focus360(ペア798,000円)か。20センチ・ウーファー2発を擁する3ウェイ4スピーカー・トールボーイ。公称インピーダンス、4Ω。能率は88dB。これまたフツーは13万円のプリメインで鳴らせるような代物ではない。


 そのままヘルゲ・リエン・トリオ「テイク・ファイヴ」をかける。スピーカーが負担で、アンプがあえいでいるような気配は微塵もなし。いや、むしろスピーカーがふた回りでかくなった分、ゆとりさえ感じられる。



 ラストにかかったのは、オーケストラ編曲版《展覧会の絵》。これまた規格外のスケール感に圧倒される。それでいて、鬱陶しい(質の低い)低音がまつわりつくようなこともない。大型スピーカーが、そのメリットだけをそのままに、小型スピーカーのようにきびきび鳴っている。特に、ティンパニと金管の掛け合いが、印象に残る。


      HI-END SHOW 2009レポート その7 おわり