DTC-1500ESの不具合の中で最も厄介なチップ電解コンデンサーの液漏れ 
 
そもそも何故液漏れを起こすのか。。
1988年頃から約10年間生産され、導電率が良く高温での特性が安定しており4級塩は夢の電解液と迄言われていた。しかし、強アルカリ+有機溶液により強い溶解力となり内部のシール性能を著しく劣化させ市場導入数年で液漏れ事故が各メーカーで発生。部品単品でも液漏れしていた。液漏れにより基板のレジストや銅パターンの腐食、導電性があり基板の焼損やマイグレーションを起こします。
 
実際の液漏れした基板の補修
液漏れしたコンデンサーをただ交換しただけでは治りません。
液漏れした部分の洗浄が必要な事とパターン、スルーホール断線の回路修理が発生する場合があります。
 
コンデンサーの数が少なく軽微な液漏れであればコンデンサーを外し、液漏れ部分をフラックスリムーバー等で歯ブラシ等を使ってクリーニングします。
 
合計44個のチップ電解コンデンサーの交換+リードタイプ電解コンデンサー合計12個の確認(交換)が必要です。(MD基板 5個、AD基板 1個、DCモータ U-2A 6個)   
 
ただ、コンデンサーの数量が多く、上記表面のクリーニングだけでは基板と部品の間や多層基板のスルーホール迄に染み込んでいる電解液を完全除去することは困難です。前職の時に液漏れ基板の修理工場を見学したことがあります。
それを参考にして大掛かりな設備がいらず、一般個人で出来る作業内容で行いました。
金属のボールに基板と基板洗浄液を入れ漬け置きし、歯ブラシ等で洗浄を行います。洗浄液の影響がある部品は予め外しておきます。この方法でデジタル基板とドライバ基板、RF AMP(PB)基板、RF AMP(REC/PB)基板、DISPLAY基板、REMOCON基板、MD基板の作業を行います。
 
液漏れによりNGとなった基板(ドライバ基板) 
 
外した電解コンデンサーとドライバー基板のバックアップ電池
 
はんだが溶けにくく、パターンが剥げたり、無くなっている物があります。はんだこてを当てるとトイレ臭や目が痛くなったりします。原因は化合物に水酸化テトラメチルアンモニウムが入っている為です。ご注意:水酸化テトラメチルアンモニウムの毒性を良く確認された上で作業してください。
 
MD基板のリードタイプより液漏れ
 
MD基板 Ref C031、C022、C005 ⇒ 1000μF/6.3V 
            Ref C032、C006 ⇒ 470μF/10V
上記5点に液漏れを確認。*初期モデルは容量が小さく漏れていない。
 
AD基板 Ref C365 10μF/50V ELNA DUOREX (紫色)ARZが実装されている場合のみ液漏れの可能性大。 写真の日ケミ AVFは実装されているものは問題ありません。新たに交換される場合はニチコンのFineGold(FG)がAVFと同ランクなのでお勧め。
 
リールモーターASSY 10μF/16V (L=5.8mm)の6個がLotにより稀に漏れている場合があります。
 
1つ外してみると僅かに漏れている事が良く判る。
 
ドライバ基板を洗浄液に丸ごとつけているところ。
洗浄にはアサヒクリンAK-225(代替AS-300)又はパインアルファ ST-100Sアブゾール8000、テルペンクリーナーEC-7R等が良いでしょう。
液漏れコンデンサーを除去、洗浄液で悪影響のある部品は全て取除く。 
 
ご注意:廃液の処分ですが、そのまま下水道又は土壌に流さないでください。
固めて廃棄物として処分をお願いします。
 
デジタル基板を洗浄液に丸ごとつけているところ。
液漏れコンデンサーを除去、洗浄液で悪影響のある部品は全て取除く。   
 
RF AMP(PB)基板、RF AMP(REC/PB)基板を洗浄液に丸ごとつけているところ。 液漏れコンデンサーを除去。                
 
表示基板を洗浄液に丸ごとつけているところ。
液漏れコンデンサーを除去、洗浄液で悪影響のある部品、FL管、SW、XTAL、トリマー等を外す。
洗浄後は外した部品の取付けとタクトSWの接触不良が多いので43個全部新品に交換する。
ALPS ALPINE SKHHAKA010
 
洗浄後の基板補修過程
基板の炭化部分があったので削る。そのままにすると基板が燃えてしまいます。
C528マイナス側部分
 
洗浄後部品を取り付けたドライバ基板(A面)  
 
洗浄後部品を取り付けたドライバ基板(B面)   
 
洗浄後部品を取り付けたデジタル基板(A面) 
 
洗浄後部品を取り付けたデジタル基板(B面)  
 
洗浄後部品を取り付けたRF AMP(REC/PB)基板とRF AMP(PB)基板  
性能向上の為、電解コンからタンタルに変更。
22μ/10V(3528)2個
10μ/16V(3528)4個
                            
 
洗浄した基板はご覧の様に基板両面共表面が綺麗で触ってもベタ付きがありません。
部品実装後、基板をSETへ実装し、動作確認となります。
今回の基板修理ではスルーホール断線、パターン切れは無く正常動作しました。 
 
その他 内部レイアウト

DAC周り
 
ドラム周り
 
デジタル基板、ドライバ基板
 
背面側
 
メンテナンスが完了したDTC-1500ES