パリのピアノ工房で、どうしてプレイエルやガヴォーを弾かせてもらったとき
素敵な音だと感じたか、なぜそう感じたか知りたくて・・・
2ヶ月ほど京都のピアノ工房に通い
80近いマイスターおとうさんに
ピアノについてたくさんたくさんお勉強させていただきました。
ヨーロッパとは違う日本のピアノの発展に携わりながら
おとうさんはゼロからのピアノづくりを覚えたものの、
ものづくりをする人間が当たり前と思うこととは違う方向に
日本のメーカーが流れていったジレンマ。
40年前から、ヨーロッパピアノの修復のほうに魅力を感じ工房をたちあげ
精魂こめて、修復をするも「中古のピアノ」とさげすまれた苦痛など
あったようです。
100年たったピアノから、このピアノの最初の一番いい状態を
推測していく必要があります。機種ごとのマニュアルなんてありません。
基本構造や、てこの原理、木材、素材から、そのピアノのもつ
いちばんいいパフォーマンスをみつけていきます。すごいですね。
何がいいピアノ、いいものづくり、音づくりなのかの基準がぶれなければ、それは見えてきますし
逆に昨今のマニュアルのほうがへんなことを言ってる場合もあります。
時代の常識があてはまらず、途中で間違えた修復がされることもしばしば。
そして、100年前の職人さんの仕事のすばらしさ、木材の選び方、
今はない木材そのものの素晴らしさに感動するといいます。
(ここで、戦争が全部燃やしてしまった!という話に流れます)
戦前のヨーロッパのピアノの発展には、いい音をつくりだすための
ものすごい個性、変化、競争があります。
作り手の目指すところが、戦後日本の
すでに評価されたものの真似をして大量生産してビジネスを広げる
ことではないのです。
大きなホールで大きな音をだす、頑丈なもの=ピアノ
ではなく、とてもデリケートな楽器なのです。
2台のスタンウェイピアノの修復を通しでみることができました。
1台は30年前の、もう1台は100年前のもの。
戦前と戦後のピアノの違いを強く感じることができました。
マニアックになると説教くさくなっちゃいますね。
実際いっぱいいっぱい説教されたんですが(^^;
それでちょっと傷ついたりもしたんですが・・・(ぐちっ)
で・・・私は私のように、日本のピアノでも親が与えてくれて
ピアノ好き~~~~♪という人たちに
よりピアノの愉しみを感じてもらえるように
お話していけたら・・・と思っています。
実際、この工房に行って、おとうさんにいろいろ教えてもらい
私の日本製のアップライトピアノは、この工房バージョンにかわりました(のつもり)。
そりゃ・・・ヨーロッパのピアノにはなってくれませんが・・・
私自身のピアノの弾き方もかわりました。
自分のピアノの音を聴きながらゆっくり弾くようになりました。
(何を今更?と思われる方、多いかもしれませんが、
メロディーにさえなってればOKなピアノの先生とても多いんですよ)
他の方の演奏の聴き方がかわりました。
今回のタイトル「いい音のピアノって?」ですが・・・・
ピアニシモを表現できるピアノ・・・・です。
だって・・・・ピアノの名前は「ピアノ」だから。
簡単にフォルテシモがでてしまうピアノは、一瞬すごくいい音に感じることがありますが、
ステレオのボリュームと一緒で、最初大きい音が耳にはいるといい音に感じます。
でも、スピーカーのいいバランス以上にボリュームをあげると、音われちゃいますよね。
ピアノだってそう。
ピアノ(弱く)をフォルテ(強く)のボリュームで表現してたら、フォルテなんて音割れちゃいます。
ピアニシモが美しく奏でられるか、うるさくないか・・・ヒステリックじゃないか?
日本人はどうもこの簡単に届く音が大好きみたいで、パリの工房でも出来上がったガヴォーの
中音部を日本人3人は「いい音ね~よく歌うよね~」って言ってるのを、
フランス人修復師だけが「ヒステリックだ」とヴォイシング(整音)しなおしさせたことがあるのですが、
おとうさんの考え方をきいて「そういうことだったのか」と思いました。
簡単に音がでてしまうピアノというのはメリハリがだせず逆にコントロールが難しくなるのです。
弾き手の技術だけじゃなくてね、
ピアノのヴォイシング(整音)や調整、調律で
とても美しく歌うピアニシモって表現しやすくなるものなのです。
ピアノやピアニシモが簡単に表現できると、そんなにたたいたりしなくても、
フォルテやフォルテシモは十分際立つのです。美しい音で。
でも、残念なことに、日本の古いピアノはハンマーが硬くなって
キンキンしたもの多いんです(あくまでも私の主観です)。
それがいい音と思っていると・・・こういう柔らかいピアニシモが表現できるピアノのことを
「こもった音しかでない」としか言わない人・・・とても多いようです。
実は、パリで出逢ったピアノのなかには私もそう感じるものがいくつもありました。
この京都の工房においてあるブルットゥナーでも最初そう思ってしまいました。
私の好みじゃない~~くらいにしか私は思わなかったのですが、
これが長年ピアノの先生をやってる人や、ピアノに関わってる人になると
「なんだ、音ならないじゃない。このピアノダメね」と判断してしまう。
そこでマエストロおとうさんとは決定的に価値観が違うので話になりません。
職人ですからその価値観をゆずる気持ちもありません。
ところが・・・そういうピアノこそ弾く人によって本当に音色がかわるのです。
弾く人がかわると、本当にピアノの音ってかわるんです。本領を発揮するのです。
実は・・・・
youtube見てても、音のわれきったフォルテシモ、
めりはりのないフォルテだけの演奏、
うるさいピアニシモけっこう多いです。
録音する部屋の音響や、マイクの位置などもあるのでしょうが、
ピアノは弾き手が思っている以上にちゃんと音をだしてくれるので
もっと優しく弾いていいですよ~~~~優しくひいてください。
という気持ちです。